令和5年・観音崎カレンダー・2023
クルーズ客船

 2013年2月フランスの旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で観音崎は観光地として一つ星(興味深い)の評価を得ました。評価の理由として「観音崎は東京湾を大型船が出入りする風景を望め,こうした点が評価されたのでは」と語られています。

 観音崎の眼前に広がる浦賀水道はさながら動く船の博物館。観音埼灯台は勿論,海岸部全体が展望台。航行する様々な船をウオッチングするには最適な場所です。行き交う船の数と種類の多さには驚かされることでしょう。船の種類には,貨物船・旅客船・特殊船(調査・研究船/練習・実習船/作業船他)・艦船・漁船等いろいろありますが,その全てを望めると言っても過言ではありません。

 それらの船の中でも一番人気はクルーズ客船。一般的には豪華客船と呼ばれ,船内に宿泊施設やレストラン・バー・フィットネスクラブ・プールなどの設備を備え,サービス要員や医師・看護婦なども乗船しており,長期間の船旅を楽しめるようになっている旅客船。クイーン・エリザベス号のような豪華客船の入出航時には,大勢のフアンがカメラ片手に観音崎を訪れます。
 

 横浜港や東京港には,年に数回クルーズ客船が寄港。その優美な姿を観音崎沖通過時,時には横浜港まで遠征して写真に撮るのが,私の楽しみの一つ。ところが新型コロナウィルスの感染拡大の影響で2020年3月以降,海外のクルーズ船寄港はここ三年間ゼロ。国内船の「飛鳥Ⅱ・にっぽん丸・ぱしふぃっく びいなす」の三隻だけが細々と運航してきたのが実状。

 そして現在,全世界で猛威を振るい,人々を苦しめた新型コロナウィルスも,変異を重ねてようやく毒性が弱まってきたのか,感染者数もピーク時に比べて減少傾向にあり,政府は感染拡大防止のための各種規制を撤廃しました。これにより海外からのクルーズ船寄港が可能となり,この結果ダイアモンド・プリンセスが3月横浜港へ寄港するのを皮切りに,クイーン・エリザベスが4月に寄港等々,数隻の海外クルーズ客船が寄港する予定と聞きます。

 そこで2023年のカレンダーのテーマは「クルーズ客船」として,これまでに撮りためた写真の中からお気に入りのもの12枚を選びカレンダーとしました。A4サイズで印刷ご愛用の上,時には観音崎へシップウォッチングにお越しいただければ幸いです。尚,目次の記事欄にある「スペースレシオ」「サービスレシオ」は,クルーズ客船の豪華さの尺度として重視される数値で,余談としてまとめてみましたので,興味のある方はご高覧下さい。

カレンダーはA4サイズで印刷できるよう設定してあります

2023 観音崎 カレンダー 目次
Month サムネイル 記       事
1月 January アムステルダム   船籍:オランダ
総トン数:62,735トン 全長:237.7m
乗客定員:1,380人 乗組員数:600人

スペースレシオ=62,735/1,380=45.46トン
サービスレシオ=1,380/600=2.30人 
2月 February  クリスタル セレニテイ  船籍:バハマ
総トン数:68,870トン 全長:250m
乗客定員:1,080人 乗組員数:655人

スペースレシオ=68,870/1,080=63.77トン
サービスレシオ=1,080/655=1.65人 
3月 March  ダイアモンド・プリンセス  船籍:バミューダ
総トン数:115,875トン 全長:290m
乗客定員:2,706人 乗組員数:1,238人
スペースレシオ=115,875/2,706=42.82トン
サービスレシオ=2,706/1,238=2.19人 

2023年3月横浜港発クルーズ再開
4月 April クイーン・エリザベス  船籍:バミューダ
総トン数:90,900トン 全長:294m
乗客定員:2,081人 乗組員数:1,005人
スペースレシオ=90,900/2,081=43.68トン
サービスレシオ=2,081/1,005=2.07人

2023年4・5月横浜港寄港予定
5月 May にっぽん丸  船籍:日本
総トン数:22,472トン 全長:166.6m
乗客定員:532人
 乗組員数:230人
スペースレシオ=22,472/532=42.24トン
サービスレシオ=532/230=2.31人  
6月 June パシフィック サン  船籍:イギリス 
総トン数:47,262トン 全長:223m
乗客定員:1,486人 乗組員数:670人
スペースレシオ=47,262/1,486=31.80トン
サービスレシオ=1,486/670=2.22人  
7月 July ノルウエージャン ジュエル  船籍:バハマ
総トン数:93,502トン 全長:294m 
乗客定員:2,376人 乗組員数:1,069人
スペースレシオ=93,502/2,376=39.35トン
サービスレシオ=2,376/1,069=2.22人 
8月 August 飛鳥Ⅱ  船籍:日本
総トン数:50,444トン 全長:241m
乗客定員:872人 乗組員数:490人
スペースレシオ=50,444/872=57.85トン
サービスレシオ=872/490=1.78人 
9月 September ボイジャー・オブ・ザ・シーズ  船籍:バハマ
総トン数:138,194トン 全長:311m
乗客定員:3,114人 乗組員数:1,200人
スペースレシオ=138,194/3,114=44.38トン
サービスレシオ=3,114/1,200=2.60人 
10月 October ザ・ワールド  船籍:バハマ
総トン数:43,188トン 全長:196.4m
乗客定員:200人 乗組員数:280人
スペースレシオ=43,188/200=215.94トン
サービスレシオ=200/280=0.71人 
世界最初にして唯一のマンション形客船
11月 November ぱしふぃっく びいなす  船籍:日本
総トン数:26,594トン 全長:183.4m
乗客定員:620人 乗組員数:220人
スペースレシオ=26,594/620=42.89トン
サービスレシオ=620/220=2.82人 
12月 December クイーン・メリー 2  船籍:イギリス
総トン数:149,215トン 全長:345m
乗客定員:2,691人 乗組員数1,253人
スペースレシオ=149,215/2,691=55.45トン
サービスレシオ=2,691/1,253=2.15人 

(注)全世界のクルーズ船業界は,新型コロナウィルスが直撃した影響で大きく変動・転換期を迎えています。業績不振による売船,コロナ対策のための改造工事等々。その結果,船主・運航会社・船籍・総トン数・乗客定員・乗組員数等が,過去の入港時から変動しているケースが多々見受けられます。本来ならば,本サイトに掲載されたクルーズ船の全てについて調査の上,訂正したいところですが,煩雑さを避けるため取り敢えず省略,それぞれの船が次回入港時に訂正することにさせていただきます。尚,目次・記事欄の「スペースレシオ」「サービスレシオ」を算出する数値は,最新と思われるものを採用しています。 従って,本サイト内クルーズ客船のデータと異なるケースもあるかと思いますがご容赦下さい。





<余談-1> クルーズ客船の豪華さの比較
 
 クルーズ客船は豪華客船とも呼ばれるが,その豪華さにはピンからキリまであるようで,その内部すら見たことのない者にとっては,カタログやテレビ・ネットの広告を眺めるのが関の山。目が眩むような豪華な船内施設や食事・飲み物・イベント・サービス等々。どれもこれも魅力的だが,先立つものがない者には目の毒。それでも懲りずにネットをあれこれ眺めていると興味深い指標が目についた。「スペースレシオ」と「サービスレシオ」,クルーズ客船の豪華さの尺度として重視される数値だと言う。

「スペースレシオ」とは,総トン数を乗客定員で割った,乗船客1人当たりのの総トン数。船内空間のゆったり度を表す指標で,この値が大きいほどサービスレベルが高い。※総トン数とは船舶の容積を表す指標。
「サービスレシオ」とは,乗客定員を乗組員数で割った,乗組員1人当たりの乗船客数。乗組員1人が何人の乗客を担当するのかという指標で,この値が低く1.0に近いほどサービスレベルが高い。
  
2023年カレンダー採用12隻のスペースレシオ&サービスレシオ
 月  船名 就航年 総トン数 スペースレシオ サービスレシオ
GT ランク 乗船客 指標 ランク 乗組員 指標 ランク
1 アムステルダム 2000 62,735 7 1,380 45.46 5 600 2.30 9
2 クリスタル・セレニテイ 2003 68,870 6 1,080 63.77 2 655 1.65 2
3 ダイアモンド・プリンセス 2004 115,875 3 2,706 42.82 9  1,238 2.19 6
4 クイーン・エリザベス 2010 90,900 5 2,081 43.68 7 1,005 2.07 4
5 にっぽん丸 1990 22,472 12 532 42.24 10 230 2.31 10
6 パシフィック・サン 2004 47,262 9 1,486 31.80 12 670 2.22 7
7 ノルウエージャン・ジュエル 2005 93,502 4 2,376 39.35 11 1,069 2.22 7
8 飛鳥Ⅱ 2006 50,444 8 872 57.85 3 490 1.78 3
9 ボイジャー・オブ・ザ・シーズ 2003 138,194 2 3,114 44.38 6 1,200 2.60 11
10 ザ・ワールド 2002 43,188 10 200 215.94 1 280 0.71 1
11 ぱしふぃっくびいなす 1998 26,594 11 620 42.89 8 220 2.82 12
12 クイーン・メリー 2 2004 149,215 1 2,691 55.45 4 1,253 2.15 5
   
 できあがったこの表を眺めて先ず驚いたのが,ザ・ワールドのサービスレベルの高さ。世界最初にして唯一のマンション形客船ということで,高いであろうと予想はしていたが,あまりの傑出した高さに驚き呆れ,羨ましさを通り越して腹立たしさを覚えたのは,貧乏人のひがみであろうか?

 日本のクルーズ客船3隻は,飛鳥Ⅱのサービスレベルがベスト3にランクインしたのが唯一の救い。就航年が古かったり船型が小さいのが気になる。日本に寄港した最大のクルーズ客船は総トン数149,215トンのクイーン・メリー2。Wikipediaの「List of lagest cruise ships」によれば,世界には2022年6月現在,135,000GTを超えるクルーズ客船が57隻就航中で,クイーン・メリー2はかろうじて35位にランクインしているが,57隻の中には日本の会社が建造したり,運航している船はゼロ,何とも寂しい状態にあるのが現状。

 大きければ良いというものでもないが,現在,世界で建造中・予定の135,000GTを超えるクルーズ客船は28隻あり,就航中と合わせると85隻。残念ながらこの中に日本の名は無い。かつての「造船日本」「海運日本」はどこへ行ってしまったのだろう?日本の旗艦として世界トップクラスの25万トンクルーズ客船でも建造してもらえないものだろうか?





<余談-2> 華麗な装いの裏側
国際運輸労連-ITF
   
 余談-1では,クルーズ客船の豪華さを比較する尺度をご紹介したが,それらを調べている過程でその豪華さを支えている裏側が存在することを知った。私はこれまで華麗な表側ばかりに目を奪われて,その裏側に思いを馳せることは無かったが,たまたま国際運輸労連(ITF)2003のレポートを目にして大きな衝撃を受けた。華麗な装いの裏側には,まるで植民地時代のような労働環境が存在するという。このレポートは約20年前のものだが,現在もそれほど大きく変化していると思われないので,抜粋してご紹介したい。 
 
 クルーズ船に勤務する乗組員の7割は,ホテルおよび飲食部門の従業員で,これらの裏方の地味な職種は,発展途上国の人々に与えられる。先進諸国出身の乗組員はクルーズ船の仕事は,世界を見る機会が持てる一種の幕間と考えている。アジア・中南米・カリブ海地方および東部ヨーロッパなどの,より貧しい諸国からきた乗組員は,自国の惨めな経済状況のためにやむなく海外に職場を求めた人々である。

 まるで植民地時代の客船のように,クルーズ船の労働者は,能力や教育水準ではなく,肌の色・国籍・性別に基ずく差別を受けている。高い職位の乗組員は,ウエイトレスのサービスのある専用食堂で食事をとり,一般的に喫水線より上の2人用船室を与えられている。低い職位の乗組員は,狭苦しい船室で眠り,船客の前に出ることを禁じられている。甲板室の区画で,監督や運航部門の船員を除いて,先進国出身のスタッフを見かけることは滅多にない。

 船客用甲板より下の区画の労働者にとって,船内は立入禁止区域である。入港中には,高い賃金を得ている乗組員は,会社の提供するバスを利用して市街地の船員用インターネットカフェに向かう。低賃金の船員たちは,地域の教会が運営する船員ミッションを訪問し,ボランティアの用意した無料の食事と無料のインターネット・コンピュータを利用するのである。

 多くの場合乗組員は,自由時間中でも自国語での会話を禁じられている。これは彼等が個人的意見を交換し,徒党を組むことを防止するためである。高い職位の船員は船客の前では英語を使うという規則があるにもかかわらず,自国語で自由に話し合っている。

 女性船員は,乗客に「やさしく」接する役割を与えられている。彼女らの大部分は35歳またはそれ以下である。これに対して男性は,50歳代まで働く人が多い。女性の船長や甲板部・機関部の女性船員も極めて少ない。管理者側の権威を振りかざした攻撃的な行為やえこひいきが横行していると多数の報告が寄せられている。一部の企業は,乗組員を管理する道具として,その場での罰金徴収・過重労働・即時解雇などを活用している。

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