クルーズ客船
クイーン・メリー 2
(Queen Mary 2)

総トン数 151,400トン
全  長 345.03m
全  幅 41.00m
乗客定員 2,620名
就  航 2004年1月
船  籍 イギリス
運航会社 キュナード・ライン
特  徴 横浜初入港。
横浜市港湾局HPから転載
2009年初入港
2010年再入港
   
2009年初入港
  
 2009年3月6日,世界最大級のクルーズ客船「クイーン・メリー 2」が,約3ヶ月の世界一周クルーズの途中,横浜開港150周年記念イベントに合わせて横浜港に寄港した。クイーン・メリー 2は今回が日本初寄港。日本に寄港した客船の中では過去最大。クイーン・エリザベス 2に似た黒と白の優美な姿は「洋上の宮殿」とも呼ばれている。

 海面からの高さが62mもあり,高さ56mの横浜ベイブリッジの下をくぐれないため,大さん橋国際客船ターミナルには接岸できず,貨物船専用の大黒ふ頭(T-1・T-2岸壁)に午前7時接岸した。

 私がクイーン・メリー 2の横浜寄港を知ったのは新年早々。この日を心待ちにしていたが,天気予報では6日は雨。前日5日は雨の予報が大外れ,快晴だったので,6日も外れることを期待したが,皮肉なことに予報は的中。早朝から土砂降りに近い雨となった。

 クイーン・メリー 2が次回寄港するのは何時のことやらわからないので,午前4時起床。雨合羽を着込みバイクで浦賀駅まで行き,5時の始発電車に飛び乗った。横浜駅で乗換,無料シャトルバスの出る桜木町駅へ5時40分頃到着。

 この雨の中,私のような物好きはあまりいないのでは?と思っていたが,シャトルバスの乗り場付近に着いてビックリ。先客が延々長蛇の列,その数ざっと300〜400人。顔ぶれは私と同年配のカメラを携えた元青年が多いが,若いサラリーマン?学生や女性の姿もチラホラ,中には幼い子ども連れの若夫婦も見うけられる。
 
 シャトルバスは50人乗りの大型バス。5時30分始発,11台のバスが約10〜20分間隔で運行していると聞いたが,待つこと小一時間,6時40分頃ようやく7台目のバスに乗ることができた。7時の入港・着岸時の写真が撮れるギリギリの時間だ。山下公園方面から大黒ふ頭に向かったが,ベイブリッジを通過する途中,無情にも着岸時間の7時を回ってしまった。

 幸い,進行方向右側・窓際の席に座れたので,クイーン・メリー 2が見えるかもしれない?くもるガラスを手で拭いて,大黒ふ頭方面に船影を探し求めていると,それらしき船が見えた。白と黒の船体に赤い煙突,紛れもないクイーン・メリー 2だ。走るシャトルバスの中から,次から次へと視界を遮る橋桁の隙間から,闇雲に10枚ほどの写真を撮ったが,船が写っていたのはたった一枚だけだった。
 
 7時15分過ぎ,ようやくT-1・T-2岸壁入口に到着。既に着岸作業は終了していた。バスから岸壁に降りて船を見上げると,東京タワーの333mよりも大きい,全長345.03mのクイーン・メリー 2の巨体は,見る者を圧倒する存在感が漂っている。白と黒に塗り分けられた船体と赤い煙突のコントラストは気品があって美しい。
   
 岸壁では1,000人を越えると思われる先客が,カサを差しながら,カメラ片手に動き回っていた。私も許可された見学区域内で,場所や角度を変えながら,十数枚の写真を撮ってみたが,どれも似たような構図になってしまう。対岸や船尾方向からの写真も欲しかったが,立入禁止区域となっているためそれは叶わない。雨空でなく,前日のような青空だったら?欲を言えばきりがない。
 
 しばらくすると,観光バスが次から次へとやって来た。船から少し離れた場所には,数十台のバスが待機している。横浜市内観光?東京方面?あるいは三浦半島?目的地は定かでないが,乗客が続々とバスに乗り込んでは消えていく。50人乗りのバスとして,2,620名の乗客全員を満たすには,50台を超えるバスが必要ということになる。
 
 全体写真を撮るのに飽き,制限された見学区域の中で,船首・中央・船尾等に分割した拡大写真を撮ってみたところ,改めてその大きさに驚かされた。海面からの高さが62mもあるその船体は,20階建てくらいのビルに匹敵するボリューム感がある。船体中央部付近では,フジテレビの腕章をした取材班が,何やら打ち合わせをしていた。
 
  
 
 

フジテレビの取材班
 
 撮影も一段落,到着後40分ほど過ぎた頃,長い行列ができているのに気づいた。どうやら,帰りのシャトルバスに乗るための行列らしい。既に数百人が並んでいる。私も慌てて行列の最後尾に加わった。

  行列に並んでは見たものの,バスはなかなかやってこない。イライラしても仕方ないので,退屈しのぎに辺りをキョロキョロ眺めていると,NHKテレビの取材班が,私達の目の前にカメラを据えて撮影を始めた。女性アナウンサーがクイーン・メリー 2をバックに,本船の横浜寄港を伝えている。夕方のニュースで放映されるのだろう。 
   
 
 
 待つこと50分近く,ようやくシャトルバスに乗車。9時10分過ぎ,桜木町駅前の乗車したと同じ場所に降り立った。そこには,朝にも増して多くの見物客が列を作り,延々と桜木町駅の入口付近まで続いていた。

 帰宅後,なにげなく横浜市港湾局のホームページを開いたところ,「クイーン・メリー 2 緊急情報」[3月6日 12時45分]が載っていた。

 「桜木町駅前発のクイーン・メリー2見学者用シャトルバスは、ただいま大変混みあっており、3時間以上お待ちいただく状況となりましたので、12時45分で乗車の受付を終了しました。ご了解ください。」

 翌朝の新聞報道によれば「大黒ふ頭には悪天候にもかかわらず,横浜市港湾局の予想を上回る1万人以上が見学に訪れ,無料シャトルバスを11台から20台に増車したが,それでも乗り切れない人が出た。」とあった。氷雨降る中,長時間待たされ,少々腹立たしい思いもしたが,見学できただけでも幸せだったようだ。
 
 
 夕方,写真を整理していると,隣の部屋から「クイーン・メリー2がテレビに映っているわよ!」と大きな声で家内が呼んでいる。カメラ片手に駆けつけると,安藤優子さんがメインキャスターを務めるフジテレビの「FNNスーパーニュース」がLIVE中継をしているところだった。朝方出会った取材班が撮影しているのだろう。

 一般見物客が入ることを許されなかった豪華な船内が次々と映し出される。船内には830席の劇場の他,プラネタリウム,蔵書約8,000冊の図書館,カジノ,プールやジム等々の大型施設がずらり揃っているという。因みに,世界一周のお値段は最安プランで1人240万円,最上級では1人2,600万円とか。世界同時不況や大恐慌の再来?とは無縁の世界があるようだ。
 
   
   
 クイーン・メリー 2の横浜港出港は17時。滞在時間は僅か10時間。前港はシドニー,次港は香港と聞く。これで日本を観光したことになるのだろうか?一泊二日か二泊三日の国内ツアーで,あちこち忙しなく動き回る我が身に比べ,勿体ないような,贅沢なような,なんとも優雅な船旅だ。

 東京湾海上交通センターの大型船入航予定情報によれば,クイーン・メリー2は18時30分浦賀水道を通過予定とあった。夏ならいざ知らず,早春のこの時期,18時を過ぎると完全に暗くなる。その上天候も悪く,小雨も降っているので,船の姿は見られないかもしれない?

 行っても無駄か?と思ったが,後悔はしたくないので,駄目元で出かけることにした。直前のテレビニュースでクイーン・メリー 2を見た家内が,珍しく同行すると言う。本船で船旅をしたいと言い出すよりはましかと,一緒に行くことにして18時頃家を出た。

 車で観音崎大橋にさしかかると,橋の上に沢山の車が駐車しているのが目に入った。普段は見られない光景だ。ヒョッとしてクイーン・メリー 2がお目当て?その数の多さに,一瞬わが目を疑いながらも観音崎バス停方面へ向かった。

 私の船の撮影スポットは観音崎園地。ところが,バス停のロータリーへ行くと,警察官が交通整,駐車や停車さえも許されない状態になっていた。どうやら,クイーン・メリー 2目当ての車で大渋滞,京急バスの運行に支障が出たためパトカーの出動となったようだ。ロータリーから警察官に追い払われるようにして,次善のスポット展望園地へ向かった。
 
 
 展望園地の前の道路は薄暗く,車が1台駐車しているだけだった。にわか客船マニアの方々はこの場所をご存知ないようだ。船は観音崎沖を通過すると,徐々に遠ざかっていく。観音崎大橋の上に比べ,展望園地では遥かに船が大きく見える。

 家内に得意気に講釈しながら待つことしばし。ところが,予定時刻の18時30分を過ぎてもクイーン・メリー2は姿を現さない。10分,20分が経過。暗さになれて辺りを見回すと,7〜8人の見物人が暗闇の中で待ちかまえているようだ。

 19時を少し回った時,「クイーン・メリー2 が来たぞ!」突然誰かが大声をあげた。海上自衛隊観音崎警備所のある小さな岬の先端から,煌々と光り輝く巨船が姿を現した。予想以上,期待以上の大きさ,美しさだ。まさに不夜城の感がある。いつもは辛口の家内が言葉を忘れ,感激して静かに見入っていた。
 
 





2010年再入港
  
 2010年2月19日,クイーン・メリー 2が横浜に再来港。浦賀水道・南口入航は午前5時45分の予定。浦賀水道通過時の写真を撮りたい!早朝5時起きしてバイクで,観音崎の船の撮影スポットの一つ観音崎園地へ出かけた。

 途中,鴨居港から沖合を見ると,対岸の房総半島・鋸山付近の闇の中に,小さな光りのかたまりが見えた。クイーン・メリー 2のようだ。停船しているらしい。鴨居港入口灯台の緑色の灯りが美しい。まだ辺りは薄暗いが,天気は晴れ。視界も比較的良好のようだ。

5:40
 
 途中,展望園地に立ち寄ると先客が7〜8人,カメラを構えたり双眼鏡をのぞいたりしていた。本船はほぼ予定時刻の5時45分頃に浦賀水道・南口をスタート。船影が徐々に大きくなってくる。数枚の写真撮影後,目的地の観音崎園地へ移動した。

5:48
 
 観音崎園地のバス停付近には,見物客のものと思われる車が10数台駐車。園地先端の岩場では先客が20数人,クイーン・メリー 2を今や遅しと待ちわびていた。岬の先端から現れた船影は徐々に大きくなり,ゆっくりと観音崎沖を通過。「カシャッ,カシャッ」とカメラのシャッターを切る音があちこちから響いてくる。やがて本船は第一海堡,第二海堡の横を通過。船首を横浜方面へ向け,徐々に遠ざかっていった。

5:56
 
 
 
 

6:09
 クイーン・メリー 2は昨年同様,横浜港の大黒ふ頭に入港したが,今年はJR桜木町駅から大黒ふ頭までの無料シャトルバスは運行されず,ふ頭内の立入も禁止されてしまった。このため今年の撮影行は半ばあきらめていた。

 ところが,望外のチャンスが飛び込んできた。横浜のタイクーンクルーズという会社から,昨年入港時,私が撮影した写真を「クイーン・メリー2出航お見送りクルーズ」のPRに利用したいとの申し入れがあり,それが縁でクルーズ船に乗せて頂けることになったのだ。

 本船の横浜在港時間は僅か10時間。18時には大黒ふ頭を離岸予定。家内と二人16時50分頃,クルーズ船の発着する新山下のタイクーン桟橋に到着。17時10分頃出港した。船客の顔ぶれは老若男女様々。船の定員90名に対して,募集人員は半分の45名とか。船上のスペースは比較的余裕がある。これならば,撮影条件の良い場所を奪い合う必要もない。

 タイクーン桟橋から大黒ふ頭までは,最短距離を行けば15分程度と思われたが,観覧船同士の混乱を避けるため航路規制があるらしい?迂回して大黒ふ頭へ向かった。お陰で横浜ベイブリッジや鶴見つばさ橋等これまでにないアングルの写真を撮ることができた。
 
  
 
 
 17時40分頃,ようやくクイーン・メリー 2が見える海域に到着したが,あいにく女王様は船尾を向けた状態で,ご尊顔を拝することができない。警備の関係上,警戒線がしかれて船首が見える海域へは立入できないらしい。

 海上保安庁の巡視船や神奈川県警の警備艇が監視の目を光らせている。巨大なキリンのように見える岸壁クレーンが数基,まるでクイーン・メリー 2を見守っているかのように並ぶ光景がユーモラスだ。
  
 
 クルーズ船の周りには,10数隻の観覧船が集まり,少しでも良い場所を確保しようと右往左往している。屋形船や奇抜なイルミネーションを施した観覧船も混じり,花火見物でもしているような気分になった。
   
 
 クイーン・メリー 2の出港時刻18時が近づく頃には日も沈み,辺りは黒い闇に包まれたが,本船の灯りは煌々と輝き,まるで不夜城のように浮かび上がってきた。煙突からは白い煙が立ちのぼっている。定刻を過ぎ,すぐにも動き出すものと思ったが,一向に動く気配がない。
 
 
 
 10分,20分が空しく経過。予定から30分を過ぎた18時30分頃,ようやく本船が動き始めた。接岸時の体勢のまま後進。鶴見つばさ橋付近で一旦停止。その後,徐々に回頭を始めた。

 この時になって初めて本船を船首から眺めることになったが,昨年,昼間見た女王様とは雰囲気がだいぶ異なっていた。辺りが黒い闇に包まれていることもあってか,優雅さの中に重厚感が漂っている。

 回頭が終わると針路を東京湾口へ向け,船足を速めた。クルーズ船もこれに負けじとスピードを上げ併走。遠ざかるクイーン・メリー 2に向かって誰かが手を振り始め,数人がそれに続き,私もデジカメから手を離して手を振った。
 
  
 
 
 
Bon Voyage Queen Mary 2!
 クイーン・メリー 2と別れて帰宅の途についたが,途端に寒さが身に凍みるようになった。それまでは写真を撮るのに夢中で感じなかったが,流石に冬の夜風は冷たい。あわてて客室に入り,熱燗を注文しようと思ったが,メニューはソフトドリンクだけ。やむを得ずホット・ウーロン茶を頂戴したが,冷え切った身体に染みわたるその味は,熱燗に勝るとも劣らず,格別に美味しく感じた。

 ウーロン茶を飲み終わる頃,横浜ベイブリッジが見えてきた。下から見上げるライトアップされたベイブリッジ,みなとみらい地区やマリンタワー周辺の夜景も美しい。タイクーン桟橋へ上陸後,徒歩でお化粧直しの終わったマリンタワー前を経由して横浜中華街方面へ移動したが,なんとなくメルヘンチックな雰囲気で,同行した家内もいつになくご機嫌だった。
 
 
 
 
 

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