観音崎
和田川の生き物たち

ただいま工事中!

00 今は昔
10 死の川
20 川が蘇った!
30 生き物たち
40 ナニコレ珍百景!
50 ウナギは何処へ?
60 和田川の現状
70 和田川ウォーキング
80 ホタルの里再生!(案)
(伝説)和田地蔵



今は昔
 横須賀市鴨居地区にある観音崎には,公園内は勿論のこと周辺地域にも豊かな自然が残されています。和田川もその一つで,2本の支川(現在は雨水幹線)が合流する「かもい斎場」脇から鴨居小学校前を流れ下り鴨居港へと流入する長さ約470mの小川には,ニホンウナギ(以下ウナギと略)やアユが遡り,モクズガニなども棲みついています。また,稚魚や小蟹などを狙ってカワセミやアオサギなどの野鳥類が飛来することもあります。何故,この小さな川に生き物たちが訪れるのでしょう?

 その理由は下の古地図をご覧になると納得されることでしょう。本図は(鴨居)中台在住の故飯田音松氏が1994年(H.6)に作成された原図をkamosuzuがトリミングの上,川(青)・道路(茶)・水田(緑)の部分を着色,川の長さや現在の団地・施設名を加筆したものですが,川の周辺は大部分が水田で,民家は鴨居港周辺に集中,道路沿いに僅かに点在するだけで,現在団地がある辺りは畠か山林だったことが窺い知れます。和田川は田園地帯を流れる小川だったのです。今は亡き古老の話では,川にはウナギ・アユ・モクズガニの他,ドジョウ・ヨシノボリ・タニシ・テナガエビ・サワガニなどが棲みつき,6月にはホタルが飛び交い,畠では野ウサギ,山林ではタヌキ・フクロウなども出没したという。

 また,冬には鴨居港内にホシハジロ・オナガガモ・ヒドリガモなどの渡り鳥たちが飛来。「鴨居」という地名の由来には諸説あるが,その一つにカモ(鴨)が群集したからと言う説もあります。鴨居の中心部は,観音崎の要塞地帯とは対照的にのどかな田園地帯であり漁村だったのです。その名残で和田川には下にご紹介する生き物たちが今も棲みついたり野鳥たちが飛来してくるのでしょう。 
   

昭和初期5年~10年頃の鴨居地図
(1930~1935)



死の川
 のどかな田園地帯を流れる和田川も,一時「死の川」と化したことがあります。日本の高度成長期と言われる1954年(S.29)に始まった「神武景気」に続く「岩戸景気」「オリンピック景気」「いざなぎ景気」といった好景気を経て,1973年(S.48)の第一次オイルショックによって終焉を迎えるまでの約20年間,横須賀市の産業も大いに活況を呈しました。

 地元の浦賀船渠(現住重)の他,日産自動車,東芝,関東自動車(トヨタ系)などの大企業や関連の中小企業には,地方から多数の中・高卒者が集団就職。鴨居地区もそれらの人々のベッドタウンとして,大規模な宅地開発が行われました。水田は埋め立てられ,畠や山林はブルドーザーによって整地され,残された緑地は宅地には不向きな崖地だけ。 その結果,和田川には屎尿を除く家庭から出た生活雑排水が流れ込み,川は汚染され死の川と化してしまったのです。更に上の図面の第3幹線部分は暗渠となり,盛り土・整地・舗装されて道路となった。第2幹線部分は川幅が狭かったこともあって,暗渠・道路化されなかったものの,第3幹線同様に生活雑排水が流れ込むため下水道となってしまったという。このため和田川部分も汚染され白濁,川とは名ばかりの魚介類が棲めない死の川と化したのです。

 下の画像は今年撮影された鴨居中央部の航空写真ですが,高度成長期が終焉を迎えた1973年(S.48)頃と細部に違いはあるものの大きな違いはない。戦前の地図と比べて見ると一目瞭然。その変貌の凄さには驚かされます。
2025年(R.7)鴨居中央部・航空写真




川が蘇った!
 私がこの地に越してきたのは,皮肉なことに高度成長期が終焉を迎えた1973年(S.48)7月。その頃の和田川は,前述のように死の川と化し,川からは異臭すら漂ってくることもあったのです。川が流入する鴨居港も薄汚れた感じで港内では泳ぐ気にもならない。港外は流石に海水である程度希釈されてはいたものの,東京湾内は周辺の都市や工業地帯から排出される様々な物質が流れ込み汚染が深刻化,観音崎周辺でも赤潮や青潮が頻繁に発生,死の海に近づいていました。

 死の川「和田川」の水質が改善されたのは,1990年(H.2)鴨居ポンプ場が稼働を開始してから。それまで和田川に流れ込んでいた家庭から出る台所・風呂・洗濯機などの生活雑排水が,下水管を通って鴨居ポンプ場に集められ,浦賀~馬堀経由下町浄化センター送られ処理されるようになり,和田川へは雨水のみが流入するようになったのです。それ以降,川の水質は年を追うごとに改善され,本サイトを開設した2002年(H.12)頃になると,ここにご紹介する「生き物たち」が徐々に戻ってきました。しかしながら,ホタルは水田が100%消滅したこともあり,戻ってくることはありませんでした。

 ウナギとアユの存在が確認されたのは2005年(H.17)6月下旬。噂を聞いて付近を通る時には,必ず川を覗き込むことにしていたが,アユはいるものの,ウナギにやっとお目にかかれたのは7月末,鴨居八幡神社の夏祭りに家内と出かける途中だった。体長1m位の太ったウナギと,40~50cmくらいの細いウナギが泳いでいた。夢ではないかと驚いたことを今でも覚えている。それにしても不思議なのは,ウナギやアユは海から遡上してきたのはわかるが,モクズガニやヒルムシロは死の川でどうして生き延びることができたのだろう?
  

鴨居ポンプ場
 
使った水はどこへ
-下水道の仕組みー


横須賀市上下水道局発行「よこすかの水道・下水道」からkamosuzu加筆・流用





生き物たち
 私が本ページを作成する切っ掛けは,M.O.さんから送られてきた1枚のカワセミの画像。2025年1月3日に和田川で撮影されたと言う画像のカワセミはメスで,明らかに水中の獲物を狙っている。和田川にはまだ稚魚や小蟹などがいてカワセミも飛来しているようだ!この写真に力づけられて,近年の和田川の「生き物たち」をM.O.さんの協力も得て調べてみることにした。

 ここに掲載された画像の撮影日は2期に分けられる。1期は2013~2019年,2期は2023年以降。ウナギが姿を見せなくなった2019年からコロナ禍初期の間は画像が欠落している。尚,画像のバックが白のものは,2023年以降撮影したものです。
   

2025.1.3  ©M.O.

魚介類
野 鳥
昆 虫
植 物


魚介類
アユ(鮎・香魚)
 
キュウリウオ目  キュウリウオ科
全長:10~30cm
食性:石に付着した藍藻類・珪藻類など
香魚:独特の香気をもつことに由来
  

2007.8.20
 

2018.7.1
   


2025.9.17
 
クサフグ(草河豚)
フグ目  フグ科
全長:10~25cm
食性:甲殻類,貝類,ゴカイ類、魚類など
猛毒(テトロドトキシン)があり
内臓と皮膚,特に肝臓,腸,卵巣は毒性が強い
5~8月の新月や満月の日に大群で押し寄せ岸で産卵する
  

2008.5.16
 

2008.5.16
 
ニホンウナギ(日本鰻)
ウナギ目  ウナギ科
全長:1~1.3m
食性:甲殻類・水生昆虫・小魚・ミミズ・タニシなど
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
  

2007.8.20
 

2014.6.21
 
ボラ(鰡)
ボラ目  ボラ科
全長:数cm~100cm
食性:雑食性で付着藻類・デトリタス
デトリタスとは生物遺体や生物由来の物質の破片や微生物の死骸
基本的には海水魚であるが
幼魚のうちはしばしば大群を成して淡水域に遡上する
 

幼魚  2008.3.30
 
モクズガニ(藻屑蟹)
エビ目  イワガニ科
甲長×甲幅:5cm×5cm
食性:糸状緑藻類・ミミズ・水生昆虫・小魚など
別名:モクゾウガニ・ツガニ他
 

2007.9.8
 

2007.9.19
 



野 鳥
アオサギ(青鷺・蒼鷺)
ペリカン目  サギ科
留鳥
全長:88~98cm
食性:魚類・両生類・爬虫類・昆虫・甲殻類など
  

2019.2.22
 

2019.2.22
  


テナガエビを捕まえた!  2023.9.1  ©M.O.


宮原橋の下で   2025.9.23
カルガモ(軽鴨)
カモ目  カモ科
留鳥
全長:51.5~64.5cm
食性:主に植物の葉や種子・水生昆虫・タニシなどの貝類など
 

上:♂ 下:♀  2003.3.18
 

2003.3.18
   


2025.10.28  ©M.O  
カワセミ(翡翠)
ブッポウソウ目  カワセミ科
留鳥
全長:51.5~64.5cm
食性:肉食性で主に魚・ザリガニ・オタマジャクシなど
 

2011.8.19
 

2011.9.20

2011.9.20
 


2025.1.3  ©M.O 
キセキレイ(黄鶺鴒)
スズメ目  セキレイ科
留鳥
全長:約20cm
食性:動物食で昆虫類やクモ類など
 

2012.10.24
 

2012.10.24
  


2024.11.13   ©M.O 
ゴイサギ(五位鷺)
ペリカン目  サギ科
留鳥
全長:58~65cm
食性:動物食で,魚類・両生類・昆虫・クモ・甲殻類など
.

2011.1.3
 

2011.1.3




昆 虫
ハグロトンボ(羽黒蜻蛉)
トンボ目目  カワトンボ科
留鳥
体長:60mm前後
見られる時期:6~10月
 

♂  2003.9.19
  

♀  2003.9.19
      


右♂ 左♀  2025.9.16


♂  2025.9.16


♀  2025.9.16


植 物
ヒルムシロ(蛭莚)
オモダカ目 ヒルムシロ科
浮葉性の水草
名前の由来:浮葉を蛭が休息するための莚(ムシロ)に例えて名付けられた
 

2018.7.27
 

2018.7.1

ナニコレ珍百景
 和田川にウナギが出没するようになって8年が経過。行政機関と地元町内会の和田川再生事業の成果もあって,今ではその数を増し20~30匹くらいいるのではと言う説もある。私は密漁を恐れてこれまで本サイト上で大きく取り上げてこなかったが,和田川のご近所に住むご夫婦がこのことをテレビ朝日の「ナニコレ珍百景」に投稿,2013年(H.25)10月27日に現地ロケが行われた。

 11月27日放送では,連合町内会の会長・副会長,地元町内会長と投稿者のご夫婦が住民代表として経緯を再現・熱演,見事「珍百景に登録」された。これまでは,地元民だけが知る秘かな楽しみだったが,放送されたことで全国津々浦々とはいかないまでも近郷近在から見物客が押し寄せるに違いない。「蒲焼きにして食べてやろう!」そんな不心得者が現れないことを願うばかりである。
2013.12.4 
  
  

ウナギは何処へ?
 「ナニコレ珍百景」が放送されてから12年が経過。現在,和田川にウナギは棲んでいないと思われる。私の写真フォルダーに残されているウナギの画像は2018年(H.30)が最後。近年,コロナ禍と自身の高齢化もあって,外歩きをする機会も激減したが,たまに近くを通りすがりに川を覗き込んでも,アユは確認できるが,ウナギは一匹も確認することができないのが現状。私は当初,不心得者による密漁と塗料・洗車用洗剤などの流入による川の汚染を疑ったが,ネットであれこれ検索したところ原因はもっと根深いところにあることがわかった。

 「ニホンウナギ減少の原因」をキーワードにウエブ検索したところ,水産庁のレポート「ウナギをめぐる状況と対策について」とWWF(世界自然保護基金)の「ニホンウナギの現状と資源管理について」がヒットした。中味は少々お堅いが画像やグラフを多用しているので,素人の私でもなんとか理解できる。そこで本レポートをベースにAIアシスタントの回答を参考として,私なりに和田川のウナギ消滅?の原因を模索してみたのでご笑覧頂ければ幸いです。

 ウナギ減少の要因として,下記の三つが挙げられる。
  1.気候変動・海洋環境の変化
  2.稚魚(シラスウナギ)の乱獲
  3.生息環境の変化
  
 
1.気候変動・海洋環境の変化 
 ウナギは太平洋のマリアナ諸島付近で生まれ,海流に乗って日本の川にたどり着きます。しかし、近年ではエルニーニョ現象などの気象変動により海流が変化し,日本にたどり着かずに死んでしまうシラスウナギが増えていると考えられています。産卵場所が通常よりも南にずれることで,適切な海流に乗れずに死滅してしまうのです。下の2枚の画像をご覧頂くと一目瞭然,回遊ルートが大きく南にずれていることがわかります。
 

旧回遊ルート 「ナニコレ珍百景」放送時(2013)
   

新回遊ルート 水産庁(2025)「ウナギをめぐる状況と対策について」
2.稚魚(シラスウナギ)の乱獲
 ウナギの減少の一因として,乱獲が挙げられます。特に,親になる前の稚魚(シラスウナギ)が大量に捕獲されることが多いのです。産卵前のウナギを獲りすぎると,全体の個体数が減ってしまいます。日本・中国・韓国・台湾では,養殖用のシラスウナギの池入れ量に上限を設ける合意がされていますが,密漁や無報告の漁獲のために実態把握が難しいという課題もあります。下のグラフを見ると絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)に指定されたのも納得です。

※池入れ量とは:養殖を目的として養殖池に入れられるシラスウナギの量を池入れ量と言いますが,その量を管理するシステムが「池入れ数量管理」です。 ニホンウナギの養殖を行なっている主要な国と地域である日本・中国・韓国・台湾がシラスウナギの池入れ量 を制限する合意を結び,2015 年より「池入れ数量管理」は実施されました。
  
  
3.生息環境の変化…全国的な現状
 
水質汚染
 現在でも生活排水と産業排水が水質汚染の大きな原因となっています。特に下水道や合併処理浄化槽がない地域では,未処理のまま河川に放流されることがあり,水系の富栄養化に大きく影響します。現在の水質汚染の原因の約7割近くが生活排水(屎尿を含む)によるものとされており,そのうち生活雑排水(屎尿を除く)が環境負荷の約70%を占めています。

 1990年の水質汚濁防止法改正により,各都道府県で生活排水対策重点地域が指定され,自治体には生活排水の対策計画を立てることが盛り込まれました。しかし,生活雑排水の処理は依然として不徹底な部分があります。ウナギ自体は比較的汚染された水でも生きられますが,エサとなるエビや小魚などが減少することで,結果的にウナギも減ってしまいます。
 
環境破壊:
 ウナギは産卵のために海へ降下しますが,生活の拠点は川です。川の流れが遅く,石や岩の隙間を好むのですが,近年では洪水対策などのために河川が直線的に改修されたり,三面コンクリート張りの河川開発が進んだりして,ウナギにとって住み心地のいい生息環境が減っています。ダムの増加も,ウナギの減少と密接な関係があると指摘されています。

和田川の現状
 
水質汚染
    
 1990年(H.2)鴨居ポンプ場が稼働を開始してから,それまで和田川に流れ込んでいた家庭から出る台所・風呂・洗濯機などの生活雑排水が,下水管を通って鴨居ポンプ場に集められ,浦賀~馬堀経由下町浄化センター送られ処理されるようになり,和田川へは雨水のみが流入するようにななりました。それ以降,和田川の水質は劇的に改善され,それは現在も続いている。下の2枚の画像はつい最近撮影したものですが,水は澄みアユの姿が散見されます。しかしながら,目を皿のようにして探してもウナギの姿を見つけることはできませんでした。 
  

2025.9.17
  

2025.9.17
   
 しかしながら,時には下の画像のように川が白濁したり,黒ずんだり,黄変したりすることがあります。原因は塗装用具を洗浄したり,路上洗車した車用洗浄剤が,道路側溝の集水枡に流入したためと思われます。この現象は数日で解消しますが,その間,アユやその他の生き物たちが何処でどうしているのでしょう?
  

2013.12.25
    
環境破壊
    
 長さ約470mの和田川の終点は下の画像の地点になります。昔,和田川の上流であった約950mの左支川(第3幹線)は全てが「暗渠」となり魚介類は遡ることはできません。。一方,約625mの右支川(第2幹線)は約20%が「暗渠」,約80%が「開渠」となっていますが,支川の排出口と和田川の通常水面とは大きな段差があるため,魚介類の遡上は難しいのです。仮に増水時支川に入れたとしても,道路反対側の開渠には直角に近い高さ約1m程の壁が待ち受けているので,魚介類の遡上は厳しいのが現状です。

(注)暗渠とは,地下に埋設されたり,蓋がされたりして見えないようになっている水路のこと。これに対し,開渠は,水面が露出している通常の川や水路を指す。暗渠は,悪臭の発生を防いだり,外部からの異物混入を防いだりする目的で設置されます。
 
     

第2幹線



和田川ウォーキング
 
 和田川は長さ約470mの小川。「和田川ウォーキング」と言っても川沿いを歩けるのは,上流部(終点)のかもい斎場脇から鴨居小学校前までの道路沿い約170m。残りの約300mは,鴨居小学校前から下流部(起点)の鴨居港河口までの川沿いに道はありません。川は県道209号(通称:観音崎通り)とほぼ並行して家並みの裏を流れているので,家並み前の歩道を歩き,川に架かった3ヶ所の橋の上から川を覗き込むことになります。終点から起点までは,川面を観察しながら,ゆっくり歩いても約15~20分足らずのウォーキングです。

 近年,健康志向の高まりで,バイクで観音崎大橋の上を走行すると,20代~80代の老若男女がウォーキングしている姿を数多く見受けます。その多くは鴨居地区の住民のようだが,和田川沿いは単なる通過地点で,川を覗き込んでいるウォーカーは滅多に見かけません。ウナギがウジャウジャいた2013~2018年頃の最盛期には,学校帰りの小中学生や買い物帰りの奥様方,そしてウォーカー達が揃って川を覗き込んでいた光景が懐かしく思い出されます。

 和田川では,市街地を流れる小川としては珍しくなった生き物たちに,今でも運が良ければ出合うことができるのです。終点から鴨居小学校前までの上流約170mは淡水域,アユやテナガエビなどが棲み。小学校前から起点の鴨居港河口までの約300m(満潮時)は汽水域,ボラやクサフグなどが遡上することがあるのです。時にはいずれの場所にもカワセミやアオサギなどが,小魚・小蟹やテナガエビなどを狙って飛来することもあります。それにしても残念なのは,上述のような要因で,ウナギの姿が見られなくなったこと。それでも,海流の変化などで奇跡が起こり,シラスウナギが遡上することがあるかも知れません。もしウナギをご覧になった方があれば,ぜひ,kamosuzu@yahoo.co.jpあてにご一報いただければ幸いです。
   

①~⑥観察スポット
  
観察スポット
(斎場脇)
 の地点は,かもい斎場の脇にあり,和田川の最上流部(終点)になる。川底は他の場所と異なり土砂や沈泥(シルト)が堆積,その上にコンクリート製のU字溝を伏せたり,立てたり,横にしたりして置いてあり,ウナギ・アユなどの棲み家になっています。また,腐りやすい木杭を川の両側に何本も打ち込んであり,そこには藻類などがついてアユなどのエサになるようだ。更にはコンクリート製の護岸とは異なる土製の川岸もあり,小さいながらもビオトープのようになっています。
 

※マウスポインタで画像をポイントすると野鳥の姿が見られます
2025.9.17
  

2025.10.9
    
 ①-②の中間点辺りから,川底の様子が大きく変化する。敷き詰めた砂礫土の上に,岩石を直径10cmから30cm程度の大きさに割った割栗石(わいぐりいし)を,バラ蒔くように置いてあります。割栗石は自然石で浸水性も高いため,見た目も良く,藻類や水生昆虫などの生育や活動などにも役立つ特徴を持つと言う。それもあって,ここから下流の到る所で利用されているのでしょう。
観察スポット
(鴨居交番横)
 川は県道209号(通称:観音崎通り)沿いにほぼ平行して流れているが,観察スポットの手前に,画像のような建物があるため,川沿いを歩くためには川の左側にある鴨居交番横から入る左側の道を歩くことになります。川底はの地点とは異なりほぼコンクリート製だが,よく見ると型枠の中に正方形のブロックを2列に並べてあり,ブロックと擁壁の間及びブロック同士の間にも隙間があります。そこは小さな生き物たちの隠れ家になっているに違いない。更にその先は,割栗石と砂礫土を組み合わせた川底になっています。
  

2025.10.3
  

2025.10.3
観察スポット
(ごはん亭キキ裏)
 右側の黒いフェンス沿いに歩けそうな気がするが,駐車場になっているため道路沿いの歩道を歩くことになります。から見る川底の構造はとほぼ同じ。
   

2025.10.3
  
 ③-④中間部の川底には砂礫土の上に割栗石が数多くバラ蒔かれています。
 

2025.10.9
   

※マウスポインタで画像をポイントするとヒルムシロが見られます
2025.10.3
 
 上の画像・左側擁壁に道路から川底へ下りるタラップがあります。この付近から下流迄の川底は,構造的には②③に似ていますが,左右のブロック間が広くなり,そこに土砂が堆積しています。この辺りにはヒルムシロ(2018.7.1撮影)と言う珍しい水草が発生することがあり,小魚たちが群れ泳ぐ姿を目にすることもあります。小魚の魚種はアユかも知れませんが残念ながら不明です。
観察スポット
(鴨居小前)
 鴨居小前ー東橋間はの斎場脇と並んで野鳥の観察スポット。主につがいのカルガモがオレンジ色のシートの下辺りでなにやらエサをついばんでいるのをよく見かけた。ところが,右上の駐車場辺りにあった「好文堂」という昔ながらの文房具屋さんが廃業,家屋も解体されてしまった影響で,周辺が以前より明るくなってしまったような気がする。カルガモはあまり人を恐れない鳥なので心配ないと思われるがいささか気にかかる。
  

※マウスポインタで画像をポイントすると工事の様子が見られます
2025.10.29
  

2025.10.29
  

※マウスポインタで画像をポイントすると工事の様子が見られます
2025.10.29
 この辺りがカワセミキセキレイに出会える確率が高いスポット。理由は,エサが豊富にあり,川の両側に道がないこと。鴨居小前ー東橋間は和田川の中では比較的勾配が急で,魚道らしきものが設置されている辺りの段差が特に大きい,ここが汽水域の上限でもあるようだ。そのため野鳥たちにとっては,汽水域と淡水域に棲む魚介類を少し移動するだけで採餌できる,便利な場所でもあるのだろう。
観察スポット
(東橋)
 観察スポット①~④の橋は何故か?名無しの権兵衛だが,には一番小さな橋にも係わらず東橋(ひがしはし)と言う立派な名前がついている。この辺りの正式町名は「鴨居3丁目」だが,地域の人たちは,旧集落名の「東(ひがし)」と呼んでいる名残なのでしょう。の宮原橋も同様理由によると思われる。東橋から少し上流迄が汽水域なので,満潮時には橋の上からクサフグボラの幼魚が群れて遡上する姿も時折見られます。 
  
 

※マウスポインタで画像をポイントするとクサフグの群泳が見られます
2025.10.3
 
 東橋-宮原橋間は両側に歩道がないため川沿いに歩くことはできません。また,下の画像に写っている画面中央奥の赤い橋と右側の青い橋は私橋(私有の橋)なので,許可なく立ち入ることはできません。従って,観察スポットとしては,青い橋と左側の三階建ビルの間にある黒いフェンスの隙間がお薦めです。尚,この辺りは汽水域なので,時折クサフグボラの幼魚が群泳する姿を見られます。
    

※マウスポインタで画像をポイントするとクサフグの群泳が見られます
2025.10.9
     

2025.10.9
   

※マウスポインタで画像をポイントすると地下の和田川が見られます
2025.10.9
  
 和田川河口から上流方面を眺めると,一見したところ,県道209号線(通称:観音崎通り)下に暗渠があり,そこを和田川が流れているかのように見えます。しかし,実際の和田川は上記画像の宮原橋欄干同士を淡青色の線で結んだ鴨居港前三叉路交差点下を流れています。
観察スポット
(宮原橋)
 宮原橋から河口前方を眺めると,河口の先に鴨居港の出入口。更にその先には,一日100隻を越える艦船が行き交う浦賀水道。そして房総半島が横たわり,真正面に鋸山がそびえています。鴨居港は横須賀風物百選にも選ばれている絶景スポットです。また,冬にはユリカモメ・カモ・バンなどの冬鳥達が飛来して,ウミウなどと突堤で日向ぼっこしたり,潜水して採餌する姿も見られるバードウォッチングスポットでもあります。
 

2025.9.23
  

鴨居ポンプ場   2025.9.23
  

河口の野鳥たち   2016.1.19
 
まとめ
  
 本ページを作成するに当たり9~10月にかけて,何回か和田川を訪れたが,出会えた生き物はアユ・アオサギ・ハグロトンボ・テナガエビ(画像なし)だけで,収穫は僅かでした。一因としては,鴨居小前~東橋間の石積改修工事が,7月下旬~11月28日の約4ヶ月間行われていたことが影響したのでは?と考えられます。この区間はと並ぶ野鳥観察のベストスポットで,カワセミやキセキレイの画像は全てこの辺りで撮影したものでした。11月末には工事も終了するようなので,春には再会できるのではないかと期待しています。

 一方,大きな収穫もありました。これまであまり気にもとめなかった和田川という小さな川の河川工事(堤防・護岸・河道掘削等)が,生き物たちに対して優しい配慮を払って施工されていることに気づいたことです。その一例が川底の構造。暗渠のような全面コンクリート製ではなく,場所により砂礫土や沈泥(シルト)・割栗石・木杭等を配し,水生生物のエサとなるプランクトンや藻類が繁殖し易い環境を心がけているようです。また,鴨居地区連合町内会も年一回,川の美化清掃をしたり,啓発看板を設置したりして生き物たちを見守ってくれているといいます。お役所と地域住民が協力して環境保全に取り組む姿勢は何とも頼もしいかぎりです。

 このような環境がこれからも維持されれば,ニホンウナギのエサとなるエビやカニ・小魚なども増え,「ナニコレ珍百景」に登録されたような景色が再来する可能性も期待できます。近年不良が続いていたサンマが,黒潮の大蛇行終息で豊漁となった例もあり,海流の変化などの奇跡によって,シラスウナギが大量に遡上する日が来ることを祈りたいと思います。
  
     
  

川の美化清掃作業


ホタルの里再生!(案)
 今は昔,のどかな田園地帯を流れていた和田川の2本の支川流域では,カエルの合唱が始まる6月頃になると,此処彼処(ここかしこ)でホタルが飛び交う様子が見られたという。ところが,高度成長期の大規模な宅地開発によって,それらの自然は消滅。和田川も一時は死の川と化したが,人々の知恵と努力で川は蘇り,アユやウナギ・カワセミなども戻ってきた。しかしながら,ホタルはいまだに戻ってこない。何故だろう?

 かっての左支川(鴨居第3雨水幹線=第3幹線)は雨水の下水道として,全長約950mのほぼ全てが暗渠化されて蘇る可能性はゼロ。一方,右支川(鴨居第2雨水幹線=第2幹線)は全長約625mの内,下流部(約20%)の約半分は「開渠」だが川底がコンクリート製,残り半分は「暗渠」で期待できない。ところが,上流部(約80%)は草木が生い茂っている場所が多いものの,下図の鴨居ハイム内を横切る③-④間以外の場所は,片側の大部分は高い崖,周辺の住宅も比較的少なく,自然の川に近い状態が残されているように思われる。ホタルの里として蘇る可能性が多いに期待できそうだ。

 そこで,第2幹線の③~⑥間だけでもホタルの里として再生できないか?素人なりに調べてみることにした。
 

 ホタルが生育できる環境は?
ホタルは街灯の届かない静かできれいな水辺を好みます。深すぎない川底に砂やレキ(大きめの土粒子)があり、餌となるカワニナ(巻貝)のいる穏やかな清流に多く棲みつきます。産卵できる水苔、さなぎになるための土草がある場所が必要です。

2025年(R.7)鴨居雨水第2幹線・航空写真



2025.9.17
 右支川(鴨居第2雨水幹線=第2幹線)は和田川終点の斎場脇を起点として,県道209号(観音崎通り)の下をくぐり,終点の水源迄約625mを流れている雨水・下水道。
スポット
(斎場脇)
ここから暗渠までの川底はご覧のようなコンクリート製
  

2025.9.14
    

2025.10.27
 

2025.9.14
 
スポット
(鴨居ハイム隣接住宅地)
この道路下の暗渠を第2幹線は流れている
  

2025.10.29
    

2025.10.27
  

2025.10.29
  

2025.10.27
観察スポット
(第2幹線下流部橋)
 鴨居ハイム内を流れる第2幹線はご覧のように整備され,川底は和田川本流並に生き物に配慮した構造になっている。水も澄んでいてゴミらしき物もほとんど見当たらない。
 

2025.10.27
   

2025.10.27
    

2025.10.27
  

2025.10.27
  
観察スポット
(第2幹線上流部橋)
 この場所から水源までの左側は高い崖,右側には公衆浴場とクリエイトの駐車場がある。ご覧のように草木が生い茂っているが,流れる水は澄んでいる。歩道に近いところに少しあるだけ。
 

2025.9.14
 

2025.10.27
    

2025.9.16
    

2025.9.14
 
 この場所の近くで
観察スポット
(クリエイト横橋)
 

2025.9.16
    

2025.10.23
  

2025.10.23
 
スポット
(水源?脇空き地)
 ここを「水源?」としたのは,水源と思われる辺りにはウツギなどの草木が生い茂り,湧水ヶ所を画像に収めることができなかったから。確認するためには草木を刈り払い,水路に下りる必要があるが,個人が勝手にできることではないので,残念ながらあきらめた。しかしながら,下の画像をご覧になるとおわかりのように,木の間越しに擁壁の下辺りから清水がコンコンと湧き出ている様子が見て取れる。
 

2025.10.23
  

2025.10.23
   

2025.10.23
  

2025.10.23
   

2025.10.23
  
U字溝上流
 

2025.10.23
 
まとめ
  

都会の中でホタルが棲息する里地を残していく意義につい て話したいと思う。 生物多様性というと余りに幅広くて分かり難い。横須賀で調査している中で、ホタルが自然に棲息する自 然環境、里地は、総合調査をいろいろ行ったが、非常に多くの動植物が見られる場所である。例えば、横 須賀の野比という所がある。横須賀の中でも生物が沢山棲息していて、ホタルも沢山いる場所だ。 自然にホタルがいるような場所は様々な生物が沢山いる、多様性がある場所だと、私は考えている。

  ホタルが減少した原因 ・水田耕作方法の変化 ・人工照明の影響 ・外来種の移入 ・水質悪化 ・開発による水源枯渇 ・捕獲

都市公園内での生物多様性保全活動モデル 都市公園内においてホタルが棲めるような環境を再生・保全する意義は 大きい。 ① 公有地であるために、維持管理が安定的に継続可能 ② 安全かつ身近に多くの市民が感動する機会を提供 ③ ホタルをはじめとする生きものとのふれあいから楽しみなが ら自然環境の学習が可能 ④ 地域の生物の多様性を保全・再生する拠点としての機能 ⑤ 施設が整備されているので展示活動、自然観察活動など多様 なプログラムを実施可能であり、地域の水文化、ホタル文化 を発信可能。 氷河期の生き残りと考えられ

馬堀中学校ホタルの里づくり 中学校が中心になって、小学校、自然教 育園と連携してホタルの里づくりを進 めている。 これは 7 年経っているが、地域の人たち と連携して計画づくりを行った。

大場信義講師の横顔 1945 年鎌倉市生まれ、東京理科大学理学部、東レ株式会社基礎研究所、横須賀市公立中学校教諭を経て 1975 年より横須賀市博物館学芸員、2006 年 3 月同博物館定年退官。 1983 年京都大学理学博士。 現在、大場蛍研究所所長、横須賀市自然人文博物館研究員、横須賀 市長井海の手公園ソレイユの丘ホタル館顧問、神奈川大学総合理学 研究所客員教授

テナガエビ、ヒラテテナガエビ、モクズガニ、シマヨシノボリ、ウキゴリなど川と海を行き来する生物が多く、純淡水生の生物はカワニナ、サワガニなど限られているのも、
 

※マウスポインタで画像をポイントすると看板の実物が見られます
























小魚の群れとヒルムシロ
  

2018.7.1