観音崎
磯の生き物たち

ウミウシの仲間











        
裸鰓目
アオミノウミウシ科 サガミミノウミウシ
ムカデミノウミウシ
イロウミウシ科 アオウミウシ
コモンウミウシ
サラサウミウシ
シロウミウシ
オオミノウミウシ科 イロミノウミウシ
キヌハダウミウシ科 キヌハダモドキ
クロシタナシウミウシ科 クロシタナシウミウシ
マダラウミウシ
ミヤコウミウシ
タテジマウミウシ科 オトメウミウシ
ドーリス科 イソウミウシ
クモガタウミウシ
サンシキウミウシ
チシオウミウシ
ネズミウミウシ
ヤマトウミウシ
メリベウミウシ科 ムカデメリベ
嚢舌目 ゴクラクミドリガイ科 コノハミドリガイ
ヒラミルミドリガイ
ナギサノツユ科 ナギサノツユ
無楯目 アメフラシ科 アマクサアメフラシ
アメフラシ
クロスジアメフラシ
フレリトゲアメフラシ
ミドリアメフラシ
背楯目 カメノコフシエラガイ科 ウミフクロウ
 ウミウシって何者でしょう?
 
 
最近はテレビにも登場する機会が多くなり、ご存じのかたがたも増えてきた磯の人気者です。

 ウミウシは巻貝の仲間ですと言うと「えっ!」と驚かれることが多いのですが、学問的には軟体動物門の腹足綱(巻貝類)に属する裸鰓(らさい)類のグループですから歴とした貝の仲間です。尚,裸鰓類とは鰓(エラ)が心臓の後部にあることからそう呼ばれています。
 
 しかし、幼生の頃には貝殻を付けているものの、その後はほとんどの種類で貝殻を全く消失している点で特殊なものといえます。

 特徴は全て雌雄同体ということと、通例は頭部に一対の触角を持っていることです。また,身体の大きさは50センチほどの大きなアメフラシから数ミリの小さなものまでありますが、普通は5センチ前後のものが多いようで,体型もナメクジ状、イボイボ状、ミノを着たもの、トゲトゲ状など千差万別です。

 色や模様はそれ以上に多彩で美しく、紅、黄、緑、青、黒など多色で、模様も縞、雲型、斑点、粒状などさまざまです。ウミウシを真似するだけで世界的な色彩デザイナーになれるのではないかと思えるほど,配色や形,体型との組み合わせは千変万化で不思議としか言いようがありません。

 食べ物は種類により多種多様で海藻を食べるもの、海藻の液を吸い取るもの、カイメンやホヤ類を食べるもの、ヨコエビなどの動物を捕食するもの、さらには他の種類のウミウシを食べてしまうものさえいる逞しさです。

 ウミウシといえば昭和天皇を連想される方が多いのですが、昭和天皇は葉山御用邸を中心にして小舟に乗ってご自分で標本採集を行い相模湾のウミウシやヒドロ虫の御研究で優れた業績をお残しになりました。

 ウミウシに関しては生物学御研究所編「相模湾産後鰓類図譜」という形で研究成果を発表されていらっしゃいます。これを見るとこのご調査によって新しく命名されたウミウシが多数あることが分かります。
by:ろくびい


(50音順)



 
アオウミウシ
(青海牛)
イロウミウシ科  体長:4cm内外
 
 ナメクジ形の代表選手とも言えるウミウシで,鮮やかな濃ブルーの身体に黄色の筋、触角と身体後部の鰓(エラ)は美しい紅色をしている。
 海藻の間で交尾中のペア(右側)と接近中のペア(左側)です。ウミウシは雌雄同体なので,同じ個体がその時の都合で,メスの役割になったりオスの役割になったりする。
by:kamosuzu
 





 
アマクサアメフラシ
(天草雨降らし/雨虎)
 
アメフラシ科  体長:20cm内外
 
 アメフラシと同じ体型だが身体は黒褐色で,模様は有ったり無かったりで,海中では海藻や岩の影と見分けにくい色や形であることが写真で良く分かる。
by:kamosuzu 
 





 
アメフラシ
(雨降らし/雨虎)
 
アメフラシ科  体長:30〜45cm
 
 名前は「いじめると雨が降る」ということに由来し,春先から梅雨の頃にかけて特に多く見かける。アメフラシといえば大部分の人が「ああ紫色の汁を出すやつ」というくらい皆さんにはおなじみで,春の磯に沢山群がっているのを見ることができる。3〜7月に産卵,卵塊はウミソウメンと呼ばれているが,色や形状からはウミラーメンといった方が適切なような気がする。

 体長は約30〜45cmで,頭に耳のように突き出した長い触角と,背中が丸く黒い身体にゴマを振ったような白い模様の身体を,英語ではこのアメフラシを”Sea Hare”海のウサギ,中国名も海兎という。

アメフラシの卵塊 : ウミソウメン
by:kamosuzu 
 





 
イソウミウシ
(磯海牛)
ドーリス科  体長:2cm
 
 朱色というか橙黄色というか、とても美しい色をしています。もっぱらダイダイイソカイメンを食べると云われていますので、餌の中にいると同じ色なので見分けがつきにくい保護色なのだと思います。
 
 ヒジキの下を移動中の姿です。周囲の地味な色の中ではとても目立っているので容易に見つけることができました。芽ヒジキの大きさと見比べてご覧ください。
 
 移動中の姿を真横から写そうと考えて、さまざまな角度で撮っている中で偶然こんなのが撮れました。海中の姿が上の海面に反射して逆さ富士のように見えているのが面白いと思いました。水深10センチ位の場所です。
by:ろくびい 
 





 
イロミノウミウシ
(色蓑海牛)
オオミノウミウシ科  体長:3.5cm
 
 磯の転石下で発見、採集した時は背中の赤が目立ったのでイソギンチャクのように見えました。この写真は水槽内を移動中のものです。鰓(エラ)突起が大きいので見た目はミノウミウシの中では身長横幅ともに大きいなと感じます。

 水槽内のウメボシイソギンチャクに興味があるような仕草をしますが食べているかどうかは今のところ確認できません。

観音崎自然博物館
by:ろくびい 
 





 
ウミフクロウ
(海梟)
カメノコフシエラガイ科  体長:10cm内外
 
 観音崎自然博物館のボランティアで,タッチプールのドチザメやダイナンギンポの餌やり作業中,これまで見たこともないウミウシらしき生き物に気づき,居合わせた河野研究員に名前をお尋ねしたところ「ウミフクロウ」と教えていただいた。

 何故,ウミフクロウなのだろうか?と思いつつ,何枚かの写真を撮っている内に,2枚目の写真の角度になって,なるほどウミフクロウだと名前の由来に気づいた。

観音崎自然博物館   2005.4.12

フクロウそっくりですね!
by:kamosuzu 
 





 
オトメウミウシ
(乙女海牛)
タテジマウミウシ科  体長:1cm内外
 
 観音崎自然博物館でボランティア作業の休憩中,磯の観察会から戻った学芸員実習生が嬉しそうに「オトメウミウシを見つけました!」とポリバケツを差し出した。中には体長1cmに満たない小さなウミウシが,バケツの底にへばりついていた。オトメウミウシとは素敵な名前だが,どこが乙女だろうか?とその時は思った。

 三週間後,博物館のウミウシコーナーに展示されているオトメウミウシと再会。捕れたての時と比べ落ち着いたのか,白い体色に赤い触覚,白い縦縞に黒い斑点と背面中央部の三日月形の黒い斑紋が鮮やかで,どことなく乙女らしい雰囲気が感じられた。
 

観音崎自然博物館   2007.7.3

2007.7.24
by:kamosuzu 
 





 
キヌハダモドキ
(絹肌擬き)
キヌハダウミウシ科  体長:1cm内外
  
 キヌハダウミウシのような薄い絹の布をしわしわにしたような感じではなく、ややざらついた肌をして、飴ん棒にちょこんと触角をつけたみたいな単純な形をしてる。
by:ろくびい 
 





 
クモガタウミウシ
(雲形海牛)
ドーリス科  体長:10cm内外
 
 背中の模様はなんとも地味というか汚れたような冴えない姿をしている。海底の色や模様とそっくりなので探してもまず見つからない。別の生き物を探している時に偶然の出会いで発見できることがある。

背面
 
これは干潮の時に岩の上で見つけたクモガタウミウシです。腹面を上にしてこのうえなく派手で,嫌でも目に入るオレンジ色に褐色の水玉模様の姿をしている。

 最初に見つけた時には「この生き物は何だ?」と思いとりあえず採集した。持ち帰って採集ケースから取り出そうとしたけれど見つからず、不思議に思いながらケースの底に着いていた汚れたやつを剥がしてみたら水玉模様が出てきた。
 
 なぜか干潮時に岩のくぼみに小さくなってくっついている時は,腹面の派手な模様を上にしているので容易に見つけることができる。

腹面
by:ろくびい 
 





 
クロシタナシウミウシ
(黒舌無海牛)
クロシタナシウミウシ科  体長:5cm内外
 
 高級ビロードのようにシックで滑らかな肌に身体周辺は,鮮やかな黄色のフリルを付けて,黒と黄色のコーディネートが見事です。水深の浅い砂地で日なたぼっこをするのが好きなように思う。大きさは手前に写っている指先と比較して下さい。

観音崎自然博物館
by:kamosuzu 
 リボン状の卵塊を渦巻き型に張り付けて産みます。ルーペで見ると卵塊の中には小さな黄色い卵粒が無数に入っているのが判る。

クロシタナシウミウシの産卵
by:ろくびい 
 





 
クロスジアメフラシ
(黒筋雨降らし/雨虎)
アメフラシ科  体長:3cm内外
 
 小さい身体ですが体型は間違いなくアメフラシです。ルーペで観察すると身体の表面にとげとげ状の突起が沢山出て、眼点模様ととても細かくて美しい縞目模様があり,アメフラシの中では繊細なデザインだと思う。
by:ろくびい 
 





 
コノハミドリガイ
(木の葉緑貝)
ゴクラクミドリガイ科  体長:3cm内外
 
 観音崎自然博物館の海藻展示コーナー片隅の小さなシャーレーに,可愛いウミウシが入っていた。草緑色の体にゴマのような小さな黒班が散在している。緑藻のハネモに着生していたようだが,一見したところ,まるでガラス細工のようにも見える。

観音崎自然博物館   2007.3.6
by:kamosuzu 
 





 
コモンウミウシ
(小紋海牛)
イロウミウシ科  体長:3cm内外
 

2005.8.16

観音崎自然博物館   2005.8.16
by:kamosuzu 
 





 
サガミミノウミウシ
(相模蓑海牛)
アオミノウミウシ科  体長:2cm内外
 
 2cmほどの小さな身体で,ピンクのドレスをまとった貴婦人のように,優雅で美しい背中の呼吸器が,まるで簑をまとったようなのでミノウミウシと呼ばれている

by:ろくびい 
 





 
サラサウミウシ
(更紗海牛)
イロウミウシ科  体長:4cm内外
 
身体に紅色の更紗模様、触角と身体後部の鰓も紅色
by:ろくびい 
 





 
サンシキウミウシ
(三色海牛)
ドーリス科  体長:3cm内外
 
 ウミウシのページに掲載した写真はby:kamosuzuとあるものを除いて,先輩ボランティアのろくびいさんが水中カメラで撮影されたものですが,このサンシキウミウシはkamosuzuが普通のデジカメで偶然撮影したものです。

 ろくびいさんにこの写真を見ていただいたところ,観音崎では珍しいウミウシで,これまでに見たことがないとのお話しで,少し鼻が高くなりました。

 尚,この写真を額縁に入れたところ,少し奇妙な?変わった雰囲気の写真になったので,HPの磯の美術館に展示してあります。

2003.4.17
by:kamosuzu 
 





 
シロウミウシ
(白海牛)
イロウミウシ科  体長:4cm内外
 
白い身体に黒の斑点、触角と身体後部の鰓および身体周辺は鮮やかな黄色をしている。
by:ろくびい 
 





 
チシオウミウシ
(血潮海牛)
ドーリス科  体長:3cm内外
 
 観音崎自然博物館の海藻展示コーナーの小さなシャーレーに,3cmほどの赤い生物が展示されていた。名札を見ると「チシオウミウシ」とあった。「チシオ」は漢字で「血潮」と書き,その名の通り鮮血のような体色が印象的なウミウシだ。

2007.5.8

2007.5.8
by:kamosuzu 
 





 
ネズミウミウシ
(鼠海牛)
ドーリス科  体長:5cm内外
  
 なぜネズミという名なのかよく分かりません。色は違うし、動きもゆっくりしています。でも「これはネズミだ」と思って見れば何となく鼠に見えてきませんか。岩陰のような暗い場所が好きなようでじっとしています。手で触ったりすると緊張して身体が弾力がある硬質ゴムのように固くなりますが、暗くして静かに見ているとゆっくり動き出します。

(相模湾)
by:ろくびい 
 





 
ナギサノツユ
(渚の露)
ナギサノツユ科  体長:1cm内外
 
 観音崎自然博物館の研究員から「フサイワヅタにこんな可愛いウミウシがついていました。名前はナギサノツユです。」と小さなシャーレを手渡された。シャーレの海水の中にはフサイワヅタとアオサの切れ端が入っていたが,目を凝らしてみてもウミウシらしきものは見当たらない。

 海水を指先でそっとかき回し海藻を退けてみたところ,体長1cm位の緑色をしたナメクジのような生き物を見つけた。どうやらそれがナギサノツユという名のウミウシのようだ。それにしても,ナギサノツユ(渚の露)とは随分ロマンチックな名前を貰ったものだ。
 

観音崎自然博物館
 お許しを得てシャーレを室外に持ち出し,写真を撮ることにしたが,光線の具合によって,ナギサノツユの体色が微妙に変化する。あれこれ工夫しながら写真を撮っていると,ナギサノツユが活発に動き出した。その姿は「流氷の天使」と呼ばれるクリオネにどこか似ている。

 ナギサノツユ”渚の露”とは少々名前負けしているのでは?と最初は思ったが,薄緑色をした透けるような愛らしい姿を眺めていたら,なんとなく納得した気分になった。

 後になって,ナギサノツユの背中の丸い部分が貝殻で,ミドリガイの一種であることを知ったが,クリオネもハダカカメガイという巻き貝の一種だそうで,どこか共通するものがあるようだ。
by:kamosuzu 
 





 
ヒラミルミドリガイ
(平海松緑貝)
ゴクラクミドリガイ科  体長:1cm未満
 
 写真では彼らが集まって写っているので画面右上、真ん中、右下左上に四匹見えます。真ん中にある白い渦巻き模様は卵です。海藻のミルにくっ付いて棲んでいて、ミルの細胞の中の液を吸い出して食べます。この写真で木の枝のように見えるのがミルの分岐している一本です。枝の直径は5ミリほどですから彼の大きさは体長が1センチに満たない小さな身体だとわかります。
by:ろくびい 
 





 
フレリトゲアメフラシ
(ふれり棘雨降らし/雨虎)
アメフラシ科  体長:15cm内外
 水深10m前後の砂泥の海底に棲み,そこで見るブルーの斑点は実に色鮮やか。ダイバー達はこの斑点の色を,コバルトブルー,ターコイズブルー(トルコ石),瑠璃色等と表現している。 

2008.11.13

2008.11.13
by:kamosuzu 
 





 
マダラウミウシ
(斑海牛)
クロシタナシウミウシ科  体長:3〜5cm
 
 観音崎自然博物館のウミウシ展で,小さなシャーレの中にクロシタナシウミウシと一緒に展示されていた。長らくシャーレの中で飼育されていたためか,名前の由来であるマダラ模様がハッキリ写っていないのが残念!クロシタナシウミウシと同種と考える研究者もいるようだ。

観音崎自然博物館   2017.6.9
by:kamosuzu 
 





 
ミドリアメフラシ
(緑?雨降らし/雨虎)
アメフラシ科  体長:5〜15cm
 
 観音崎自然博物館のタッチプールで小さなアメフラシが産卵をしていた。体長が6〜7cm位なので子どものアメフラシと思っていたが,子どもが産卵するのはおかしい。不思議に思って,博物館の研究員にお尋ねしたところ,ミドリアメフラシだと教えて頂いた。傍にいたアメフラシと比べると確かに小さい。

観音崎自然博物館   2005.5.31
by:kamosuzu 
 





 
ミヤコウミウシ
都海牛)
クロシタナシウミウシ科  体長:10cm内外
 
蛍光色に光る眼点模様と背面の鍋の蓋のつまみのような形の突起がきわだった特徴です。この写真は水深の浅い日が射している場所で撮ったので少し淡い感じだが、黒いバックの場所で見ると眼点模様の光は輝いて見えるのでとても神秘的である。
by:ろくびい 
 





 
ムカデミノウミウシ
(百足蓑海牛)
アオミノウミウシ科  体長:8cm内外
 
身体の突起が簑をまとっているような姿なのでミノウミウシと呼ばれる。突起の付き方が嫌われものの虫の百足の足のように左右に沢山出ているので,ムカデミノと呼ばれたのだと思うが、ご覧のように美しい柄の頭触手センサーと鮮やかなブルーのマントをまとった姿は,ムカデと呼ぶにはふさわしくないと思う。
by:ろくびい 
 





 
ムカデメリベ
メリベウミウシ科  体長:10cm内外
 
 普通は転石の下などに数匹が集まっているが、カニノテとフクロノリの間を進んでいるのを見つけた。

 翼のような大きな突起は呼吸器で表面にいぼいぼが沢山ついている。また口が投網のように広がる珍しい形をしていて、ヨコエビのような小さな餌を捕らえるときはビローンと大きく拡げて被せます。そして口の縁にびっしり生えている繊毛を激しく動かし,吸い込むような水流を作り餌を口の中に取り込みます。

 吸い込む力はかなりのものらしく,砂の中にいるヨコエビを掻き出して食べていますし、5ミリほどのヤドカリを殻ごと口まで運んで食べようとしたのを見たことがあります。この時はしばらくもぞもぞと食べる努力をしていたが結局あきらめて吐き出しました。
by:ろくびい 
 





 
ヤマトウミウシ
(大和海牛)
ドーリス科  体長:6cm内外
 
身体にイボイボがあってちょっと見は気味が悪いが,美しい黄色は魅力的です。
by:ろくびい 
 

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