アメフラシ
(雨降らし・雨虎)


アメフラシ科  体長:約30cm

冬のアメフラシ
アメフラシは食べられる?
ウミソウメン
トンビにソウメン?
富山の海そうめん
アマクサアメフラシ
フレリトゲアメフラシ
冬のアメフラシ
    
 越冬中のカモ達の様子を見に鴨居港へ行った。昨年暮には約60羽が飛来していたが,現在は20羽減ってホシハジロとオナガガモ合わせて40羽足らずが越冬している。昨年はスズガモやヒドリガモも飛来,合計100羽を超えるカモ達が越冬していたことを考えると少々寂しい。
2006.1.23
 水際で日向ぼっこをしたり,エサの海草類をついばんでるカモ達を岸壁から眺めていると,カモ達の泳いでいる水面下10〜30cmほどの浅瀬にアメフラシがいるのに気づいた。辺りを注意深く探してみると10匹ほどいた。アメフラシは3月頃から観音崎の磯で目立ち始めるが,冬にアメフラシを見るのは初めてのこと。

 私が水面を覗き込み写真を撮っていると,二人の坊やの手を引き,赤ん坊を背負った,ねんねこ半天姿のおばあちゃんが近づき「何を撮っているのですか?」と私に尋ねた。「アメフラシですよ!」と答えると,幼稚園児くらいの坊やが「本当だ,アメフラシだ,懐かしいなー!」と感嘆したように声を上げたので,私は思わず笑ってしまった。

 笑われた幼児が不満げな顔をしていると「アメフラシを見るのは去年の春以来だから,懐かしいんだよね!」とおばあちゃんがすかさずフォロー,坊やはコクリとうなずき機嫌を直してくれた。あとで,観音崎自然博物館の研究員に,鴨居港でアメフラシを見たことを得意気に報告すると,アメフラシは観音崎の磯にもいると言われた。どうやら,磯にアメフラシがいないのではなく,寒いので,私が磯へ行かないだけだと判明した。 

☆画像をポイントするとウミウシの場所が分かります。

☆画像をポイントするとウミウシの場所が分かります。
 アメフラシは磯の人気者?で,4〜7月にかけて開催される磯の観察会では引っ張りだこだ。最初は一見グロテスクなアメフラシの姿に怯える子どもも,恐る恐る触ってみるとその感触が面白いようで,キャーキャー大騒ぎになり,時には雪合戦ならぬアメフラシを投げ合う”アメフラシ合戦?”が始まることさえある。アメフラシの一生は短い。4〜6月頃にかけて産卵するが,産卵が終わると7〜8月頃には,そのほとんどが死んでしまうため,夏の観察会では滅多にお目にかかることができない。
アメフラシは食べられる?
    
  アメフラシの英名Sea hareは「海のウサギ」という意味で,頭部の二本の突起をウサギの耳に見立てたようだ。中国名も海兎という。早春のある晴れた日,観音崎へ出かけ中潮で潮の引いた磯に行くと大小のアメフラシがゴロゴロしていた。写真のアメフラシは産卵前と思われ,体が大きくまるまると太っていかにも美味しそうだ。

 このアメフラシが食べられるかどうかは良く話題に上るが,答は条件付のYes!である。しかしながら,体の一部に毒があるとのことで,それがどこか判らぬためまだ私も食したことはない。今頃磯には数え切れないほどのアメフラシがいるのに,誰も採らず,食べたという話も聞かないところを見るとあまり美味しいものではなさそうだ。

 ところが,これを食べる習慣が島根県のどこかにあると聞いて,アメフラシをインターネットで検索してみると,なんと120,000件(2002年3月現在)ものアメフラシに関する情報があり,その中から食に関するものを拾い読みしたところ,隠岐の話がなかなか興味深かったので有毒性に関する部分をご紹介したい。

アメフラシの有毒性について
原稿作成:隠岐・松浜旅館 斉藤一志氏注)
 一般的に隠岐以外の地域ではこのアメフラシを食用に用いることはありません。ムツゴロウこと畑正憲氏が以前「アメフラシの卵は美味である」と言う事を伝えたようですが、その意見に対し「アメフラシを食べるのは危険である」と言う反対意見が飛び出したことがあります。

 危険であると指摘した背景には、本来アメフラシは上でも述べてあるように、海草類を好んで食べるのですが、もし紅藻類などで有毒な成分を持っている海藻を食べていたらアメフラシの体内にもそれが溜まっていて、場合によっては人体に悪影響を及ぼすことが予想されます。

 そう言った有毒な海草が繁殖する海域で捕獲されたアメフラシは食用に用いないことをお願いいたします。なお、現在までの隠岐において、アメフラシの有毒性が確認された記録はありません。

 (後日談)隠岐ではどのようにしてアメフラシを食べるのか?2002年3月時点では「ベコの木の芽あえ」という料理が写真付きで紹介されていたが,現在では,残念ながらリンク切れになっている。

 当時の「ベコの木の芽あえ」紹介文:ウミウシの仲間のアメフラシはバイ貝やカタツムリの仲間。見た目と違いとても美味しい。ベコはワカメなどの海藻を食べているため磯の香りを濃縮した味。醤油,酒………以下略

 最近,隠岐・松浜旅館についてじゃらんnettで調べたところ,宿の紹介文中に「…アメフラシやイカの卵などの珍味もあります。」とあった。どうやら,アメフラシ料理は健在らしい。一度味わってみたいものだが,隠岐は横須賀から少々遠すぎる。(2008.11.27)

 料理自慢の宿。若旦那の歴史講座が好評!エコツアーの手配も可。
 西郷港から徒歩10分で観光にも仕事にも便利な料理自慢の宿。隠岐の歴史文化にも詳しい若旦那の語り部もあり。イカの陶板焼きや鮑の貝焼きなどの人気料理の他、アメフラシやイカの卵などの珍味もあります。

2002.3.18
ウミソウメン
    
 大潮で沖合まで大きく潮の引いた,観音崎自然博物館裏の磯へ降りると,なにやらカラフルな岩が目についた。近づいて良く見ると,黄色やオレンジ色をしたアメフラシの卵塊だった。アメフラシの卵塊にはウミソウメンの別名がある。微妙に色の異なるウミソウメンをこれだけまとめて見るのはこれが初めて,卵塊の近くにはまだ産卵中のアメフラシも数匹見うけられ,ウミソウメンは更に増えそうな気配だ。
2005.5.28
  
  
  
  
トンビにソウメン?
 
 ある日,海辺に落ちていたアイスクリームの容器にウミソウメンを入れてみた。いかにも美味しそうだが,実は私はこれを口に含んで噛んでみたことがある。ところが,噛んだ途端に口の中一杯に苦い刺激を感じたため,すぐに吐き出し海水でウガイした。幸い命に別状なかったが,食べることはお薦めできない。
 上の写真を撮ろうと一人悦に入っていると,突然バタバタという音が私の頭をかすめ,ビックリして見上げると一羽のトビが飛び去り,ウミソウメンと容器がひっくり返されていた。

 ものは試し,ウミソウメンと容器をもとの状態に戻し,少し離れて上空を見ると二羽のトビが旋回しながら様子を窺っていた。やがて一羽が急降下してきたため,カメラのピントを容器に合わせ夢中でシャッターを押した。その結果が下の写真。

 幸いウミソウメンは無事だったが,さすがのトビも食べ物と勘違いしたようだ。観音崎一帯には無数のトビが生息している。弁当を広げ油断していると,唐揚げ等をさらわれることがしばしばあるので,くれぐれも頭上にご注意いただきたい。

富山の海そうめん
    
 毎週日曜日午前9時30分から10時まで,テレビ朝日系列全国ネットで放送されている「冒険JAPAN関ジャニMAP」は,人気グループのメンバーが日本各地の村や町を訪問,現地の食べ物や文化,伝統工芸などを体験しながら紹介する番組。

 この番組の2011年9月18日(日)放送「富山の旅」に北陸の珍味海そうめんが登場した。富山出身の女優・室井滋の案内で関ジャニの横山裕と渋谷すばるが富山の各地を旅する30分番組。室井滋は個性的な演技派女優として知られているが,なかなかの酒豪でもあるらしい。
 
 
 その酒豪の行きつけのお店「親爺」で海そうめんを食べることになったが,関ジャニの二人は海そうめんが何であるかを全く知らない。店の主人からアメフラシの卵だと教えられるが,ちんぷんかんぷん。先ずは注文することになった。
 
 
 三人が海そうめんを食べる前,アメフラシと卵についての解説が入った。そこに使用されていたアメフラシと卵塊の写真が,実は私の提供した写真。8下旬,番組制作会社から本サイト掲載写真の使用申し入れがあり,©kamosuzuと写真の一部に明記することを条件に承諾した。
 
 三人の前に出された600円也の海そうめんは一見もずく風。沖縄の海ぶどうのようにも見える。卵塊は湯通しすると柔らかくなり食感が落ちるので,水洗い後,そのまま三杯酢をかけ,おろし生姜をのせて食べるようだ。
 
 海そうめんを食べ始めて直ぐに,慣れているはずの室井滋が「ゴホ,ゴホ」と酢でむせた。それを笑って馬鹿にした横山裕が,続いて「ゴホ,ゴホ」とやったのはご愛敬。おそらく台本にはなっかった巧まざる演技のようで微笑ましかった。
 
 食後の関ジャニ横山裕・渋谷すばるの感想は「食感が面白い」だった。外見と似て,もずく海ぶどうの中間的食感らしい。私も直ぐに「親爺」へ駆けつけ試食したいところだが,横須賀から富山までは簡単に行ける距離ではない。来春,アメフラシが産卵するまで待つことにしよう。

 「海そうめん」は放送時間3分足らずの短い話だったが,郷土愛に溢れた女優・室井滋と関ジャニ横山裕・渋谷すばるの掛け合いも面白い,微笑ましい番組だった。
 私は卵塊の一部を生のまま口に含んで噛んでみたことがあるが,噛んだ途端に口の中一杯に苦い刺激を感じたため,すぐに吐き出し海水でウガイした。幸い命に別状なかったが,食べることはお薦めできる代物ではなかった。

 今回の放送で,三杯酢につけ,おろし生姜をのせて食べると美味しいことを知った。アメフラシが産卵する来春が待ち遠しい心境だが,一つ心配なことがある。フリー百科事典「ウィキペディア」のアメフラシのページの食材欄にこんな記載があった。

 一般的に身は食用にしない。卵は海素麺(うみぞうめん)と呼び,食糧難の頃などは食用にされたことはあるが,美味しいものではなく,毒性の問題もあり通常は食用とされない。

 現在食用とされている海素麺(うみぞうめん)は,ベニモズク科の紅藻を指し,アメフラシの卵と混同されているが全くの別物である。また,島根県の隠岐島や島根半島,鹿児島県の徳之島,千葉県南部,鳥取県中西部などでは身を食用にする。

 ただし,アメフラシが毒を持つ海藻類を食べているとその毒がアメフラシに蓄積されている可能性があるため,注意が必要。食用している海域では毒の元となる海藻類が無いとされているため食せるが,気候変動等により海藻の植生が変化している可能性もある。味はほとんどない。


 因みに,観音崎周辺地域や三浦半島一帯では,アメフラシや卵を食べる話は聞いたことがない。「君子危うきに近寄らず」とか,私は君子ではないが命は惜しい。素人料理でアメフラシや卵を食べることは自制して,富山の「親爺」で食べる日が来ることを楽しみにしたい。

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