アマクサアメフラシ
(あまくさ雨降らし/雨虎)
アメフラシ科 体長:約20〜25cm
釣用の長靴を履き,所々,干上がるほどに大きく潮の引いた鴨居の磯で,生物や海藻の写真を撮っていると,見なれぬアメフラシが合体しているのを見つけた。一匹は無地でワカメのような黒褐色,もう一匹には縞模様があるが,普段見なれたアメフラシとは模様が明らかに異なっている。大きさは20〜25cm位あり,結構大きい。アマクサアメフラシ?と直感したが確信はない。二匹の傍には産卵したばかりと思われる卵塊が転がっていた。 | ||||||||||
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しばらく眺めていたが一向に変化がない。あまりお邪魔をしても気の毒なので,あきらめてその場を離れた。少し歩いたところで,先ほど見かけた黒褐色のものと同じアマクサアメフラシ?を見つけた。一見したところ海藻のような感じで,これも一種の擬態なのだろうか? | ||||||||||
アマクサアメフラシ? |
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近くに漂っていた海藻 |
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アマクサアメフラシ?をじっくり観察してみると,首の辺りから腹部にかけて青白く輝いているように見える。手にとりひっくり返して見たところ,腹部が吸盤のようになっていて,青白く蛍光色に輝いて見える。これまで見たこともない不思議な美しさであるが,どこか怪しげな雰囲気のある輝きだ。このような輝きは,普通のアメフラシではお目にかかることはない。 | ||||||||||
アマクサアメフラシ?の腹部 |
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普通のアメフラシの腹部 |
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しばらく周辺を歩き回ってから,二匹が合体していた場所へ戻ると,既に,二匹は離れて別行動をしていた。縞模様のあるアマクサアメフラシ?を改めて眺めてみると,これまでお目にかかったことのない珍しい模様をしている。近くにいた普通のアメフラシと比較しても明らかに大きな違いがある。 | ||||||||||
アマクサアメフラシ? |
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普通のアメフラシ |
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私は本サイトの「ウミウシの仲間」のページで,ろくびいさんが撮影されたアマクサアメフラの写真を見たことはあるが,これまで実物に出会ったことはなかった。よい機会なので,三匹のアマクサアメフラシ?と普通のアメフラシを一匹,一ヶ所に寄せ集めて記念写真を撮った。 | ||||||||||
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帰宅後,これらの写真をウミウシに造詣の深いろくびいさんにメールで送信,鑑定をお願いしたところ,早速,次のようなご返事を頂いた。 「写真を拝見しました。おっしゃる通りアマクサアメフラシに見えます。先週の土曜日にたたら浜にも褐色で模様がはっきりしない25センチほどの大型のアマクサアメフラシを見ました。色や地模様の具合が個体差が大きい種類ですので見分けるのに悩まされます。確実な方法は突っついたときに紫の液を出すか白色の液を出すかで見分けるやり方です。アマクサアメフラシは白色です。少しかわいそうですが本当に見分けたい時は勘弁してもらって試してみます。」 普通のアメフラシは,うっかり踏んづけたりすると紫色の液を出すが,アマクサアメフラシは白色の液を出すという。本当に白い液を出すのだろうか? |
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普通のアメフラシの紫色の液 |
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翌日,潮が引くのを待ちかねて,いそいそと鴨居の磯へ出かけた。前日,アマクサアメフラシ?を見かけた辺りを探してみたが,一向にそれらしきアメフラシが見当たらない。あっちへ行ったりこっちへ行ったり。ウロウロする度にグニャッとアメフラシを踏んづけ,「ゴメンゴメン」と謝るが後の祭りで,足下から紫色の液が煙のように立ち上ってしまう。とにかく鴨居の磯にはアメフラシが多い,その数は数十どころか数百匹は棲息していると思われる。しかしながら,アマクサアメフラシは少数派で,おそらく比率ではせいぜい4〜5%位と考えられる。 その少数派のアマクサアメフラシを,なんとか見つけ出したいと,辺りをくまなく探し回った結果,その執念が天に通じたのか,一匹のアマクサアメフラシらしき縞模様のある奴を発見した。当に白い液を出すのだろうか?半信半疑,恐る恐る背中を指で突っついてみたが反応がない。更に,指先に力を込めて突っついても同じである。最後はアマクサアメフラシ?には気の毒であったが,指先で少し強引に背中をゴリゴリ数回突っつき回してみた。すると突然,背中の一部から白い液体が飛び出し,煙のように辺り一面に漂った。矢張りアマクサアメフラシだったのだ。 |
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4月28日 秋田県男鹿半島の「男鹿のうみうし」記録係さんからメールを頂戴した。 (前略) HPで気になったところがありましたのでメールいたしました。アマクサアメフラシとアメフラシの違いですが、アメフラシは紫の液を出しやすいですが、アマクサアメフラシは、何かに反応しなければ、なかなか白い液を出さないです。無理に出させるのは気の毒な気がします。 そこで、側足(背面のひだ)が左右に1対のアメフラシ、後でつながっているアマクサアメフラシと区別しています。我家でも区別の仕方をわからなくて、教えていただいたわけですが、海でも色彩的に区別できない種もいるので、背面のひだの様子を観察すると簡単にわかります。 HP「観音崎の自然&あれこれ」のような上手な絵ではありませんが、2006年5月4日飼育係書き込みをご覧下さい。 早速,「男鹿のうみうし」さんのサイトへアクセス。5月4日のページを拝見したところ,アマクサアメフラシとアメフラシの「背面のひだ」の違いについて,判りやすいイラストが掲載されていた。恥ずかしながら,私はこのことを知らなかったので,お願いして,このイラストを本サイトへ転載させて頂くことにした。 |
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下の写真には4匹のアメフラシが写っているが,色や模様に個体差は見られるものの,アマクサアメフラシほどの大きな変化は見られない。 | |
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潮が引いて浅くなった磯を歩いていると,養殖コンブらしい海藻を見つけた。鴨居港の沖合では,漁師さんがワカメと共にコンブを養殖している。そのコンブが荒波にもまれ,ロープ?から外れて漂着したらしい。夕食のオカズに拾い上げようと根元当たりを見たところ,なにか違和感がある。目を近づけて見るとアマクサアメフラシだった。遠目にはコンブと同化して見分けがつかない。一種の擬態なのだろう? 念のため,片手でそっとすくい上げ,しばらくして,海に戻し,手のひらの匂いを嗅いでみた。アマクサアメフラシ独特の芳香がする。花の香りとは異なり,若干動物的な匂いだが,清々しい感じのする素敵な匂いだ。因みに,普通のアメフラシにはそのような芳香はない。 |
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