観音崎砲台跡
あ と が き

平成17年(2005)見学記
 
 観音崎の砲台跡について,恥ずかしながら,私はこれまであまり深く考えたことがなかったように思う。外国の脅威から首都東京を守るため,明治の先人達が築いた砲台という程度のことは承知していたが,いつ頃,どのような大砲が,どのような任務を担って設置されていたのか等々,見学会に参加して「目から鱗が落ちる」心境である。

 鎖国という長い眠りから覚めて,列強諸国に対抗するため,必死になって先進諸国に学び行動した,先人達の遺産の一つが観音崎の砲台跡や東京湾海堡のように思える。

 今回6ヶ所の砲台跡を見学して,これまでに幾つかの砲台跡が取り壊され,原形をとどめぬ状態にあることを知り,日本の勃興期を象徴する近代化遺産として,これ以上破壊が進まぬよう,監視・保護する必要性を痛感した。

 最後に,このような有意義な見学会を企画していただいた(幹事)の仲野正美講師と東京湾海堡フアンクラブ事務局に厚くお礼申し上げたい。
 
明治150年(2018)追記
    
 今年平成30年(2018)は明治元年(1868)から起算して満150年に当たる。そこで一念発起,13年ぶりに本ページの更新を目指して7月上旬にスタートしたものの意外に手間取ってしまった。そして私自身の知識がいかに浅薄なことを痛感させられた5ヶ月間でもあった。

 それを象徴したのが北門隠顕砲台の存在。公園の解説板には40年以上も前から明示されていたにも関わらず,これ迄それに気づかなかった迂闊さには呆れるばかり「開いた口が塞がらない」とはこの事だと我ながら思った。

 幸いだったのはその日が調査初日だったこと。それからはこれ迄の知識は一旦リセット。見慣れた砲台・堡塁跡を初心に返って訪れ,在庫写真があるものでも改めて写真を撮り,見落としがないか入念にチェックすることにした。お陰でこれまで知らなかったことや気づかなかったことに,いくつも巡り会うことができた。

 観音崎砲台跡の現在と13年前の状態について比べてみると,パークセンターに変身した第二火薬庫と再現・改修工事が中断中の火具庫を除けば,一見したところそれほど大きな変化がないように見受けられる。しかしながら,現在の管理方法のまま放置すれば,いずれ大きな問題が発生する危険性が潜んでいる事に気づく。

 その代表例が遺構の内外に生えている樹木の管理。砲台が建設された当時,視界を遮る樹木は現在の第四砲台ように全て刈り払われていたと思われる。その後,旧式・不要となり除籍・廃止された砲台跡には幼木が芽生え,約100年前後経過した姿がそこにある。

 樹木の生長は芽生えた当初それほどでもないが,数年も経つとそのスピードが驚くほど早くなる。管理されていない自然界は弱肉強食の世界。結果的に強い樹木が生き残り,遺構の空をほとんど覆い隠すほどになる。

 近年,台風が凶暴化?公園内での倒木が跡を絶たない。観音崎の土壌は表土が薄く樹木が深く根を張れないのが一因で,砲台跡の内外も例外ではない。その中にはコンクリートやレンガの割れ目に根を下ろし生長したと思われる樹木も見受けられ,その根が遺構を破壊したり,倒木により大きな被害をもたらす危険性もある。

 その危険性が最も高いのが第三砲台跡。写真に見られるように,揚騨井やレンガ壁がいつ崩れても不思議でない状態にある。第三砲台と共に歴史的価値の高い第一,第二砲台もそれに近い状態にあると言っても過言ではない。
     
  
  
         
 第三砲台跡の園地改善提案では,他の砲台・堡塁跡に普遍的な提案をしているが,いずれにしても財源の確保が肝要となる。しかしながら,その確保は単なるボランティアに過ぎない私が考えても容易とは思われない。県の苦しい台所事情からくる緊縮予算。それに伴い公園維持管理予算が大幅に削減されたであろう事は想像に難くない。

 厳しい公園維持管理予算の中で,結果的に最優先されるのが「安全・安心」のための対策工事。公園内で万一事故が発生すれば,一昔前であれば「自己責任」とされたものが,「管理責任」を問われる時代である。「羹<あつもの>に懲<こ>りて膾<なます>を吹く」類の工事も見受けられるが,非難するのも酷な面もある。

 しからばどうすれば良いのか?思いあぐねていたところ飛び込んできたのが読売新聞・横須賀版の記事。「公園で収益事業」可能にのタイトルに続いて「神奈川県の都市公園内で,公募で選んだ民間事業者がコンビニやカフェなどを設置して収益を上げることを認める代わりに,公園の維持管理や施設整備費を負担してもらう仕組み。」とある。

 なかなかの妙案で両手を挙げて大賛成したいところだが,一つだけ注文がある。この制度の対象となるのはあくまでも都市公園で,自然公園は対象外となる。県立観音崎公園は都市公園なので当然この制度の対象となるが,手放しで喜んでばかりもいられない。都市公園と言えば横須賀市内には,県立ではないが三笠公園・ヴェルニー公園等がある。

 果たして観音崎公園がそれらの公園と同様に扱われて良いのだろうか?同じ県立公園でも丹沢大山自然公園や真鶴半島自然公園等の自然公園は制度の対象とならない。これは自然を守るための配慮だが,観音崎公園は都市公園とは言いながら自然豊かな公園。この制度を活用して自然に配慮したアイディアが望まれる。私もそれなりのアイディアを本サイトに提案させて頂くつもりだが,アイデアはあっても先立つ物が無いのが最大の課題。それを解決する妙案があれば良いのだが。 
   

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