戌年にちなんで
「犬あれこれ」
2018年 平成30年は十二支の「戌」。ご存知の方も多いと思うが,戌は「ジュツ」と読み,本来は動物の犬とは無関係である。それを中国・後漢の時代(947〜950年),王充(おういつ)という人物が,難しい十二支の思想を一般庶民に覚えやすくするために,十二支の概念に身近な動物の名前を適当に割り当てて普及を図ったのが,戌(ジュツ)を犬(イヌ)と読むようになった由来と言われている。尚,「戌」は十二支の中で常用漢字にも人名漢字にも含まれていないため,人名に使用できない唯一の文字のようだ。 しかしながら,現在では戌=犬として一般的に「定着しているので,ここでは観音崎と周辺地域及び我が家で目にする犬に因んだあれこれを思いつくままにご紹介したいと思う。ご笑覧頂ければ幸いです。 |
和風総本家 14代豆助 |
狛 犬 |
日本犬と洋犬 |
忠犬ハチ公 |
薩摩犬「ツン」 |
和風総本家・豆助 |
植 物 |
破 魔 矢 |
絵 馬 |
土 鈴 |
お年玉切手シート |
「いぬ」の大看板 |
我が家のグッズ |
<余談ー1>犬の故事・ことわざ |
<余談-2>ドンの独り言 |
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狛犬(こまいぬ)とは,神社や寺院の前に置かれる獅子に似た想像上の生物像。昔,高麗から伝来したので高麗犬(こまいぬ)と言う説が有力だが,魔除けとしておかれたので拒魔犬(こまいぬ)と言う説もある。 狛犬は神社だけに存在すると私は思っていたが,百科事典等によれば寺院にも存在すると言う。明治政府の「神仏分離令」まではお寺の中に神社があったので,今でもその名残で寺院の中に狛犬も存在することもあるようだ。しかしながら,私は寺院で狛犬を見た記憶は全くなかったので,念のため観音崎周辺の鴨居・走水・東浦賀にある8寺院を訪れ確認してみたが,境内に狛犬が存在する寺院はゼロであった。 観音崎周辺地域に散在する4神社の内,全国的にも珍しいと思われる狛犬が東西・叶神社にある。普通は神社の入り口や本殿の正面左右に一対でおかれ,片方が口を開けた阿行(あぎょう)の形,片方が口を閉じた吽行(うんぎょう)の形をしているが,西叶神社の狛犬は左右とも口を開けた阿行の狛犬。浦賀港を挟んだ対岸の東叶神社の狛犬は左右とも口を閉じた吽行の狛犬。 どうやら東西の神社で一対となって「阿吽の呼吸」を表現しているようだ。更に興味深いのは,東叶神社の狛犬には左右それぞれ乳飲み子がいることから雌犬,西叶神社のものは雄犬と考えられる。このような狛犬は果たして他にも存在するのだろうか? |
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西叶神社の狛犬 | |||
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東叶神社の狛犬 | |||
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美保神社(島根県)のご祭神は大国主大神の御后神三穂津姫命(みほつひめのみこと)と第一の御子神で恵比寿様として知られる事代主神(ことしろぬしのかみ)」。大黒様として知られる大国主大神をご祭神とする出雲大社と両参りすれば,縁結びのご利益がさらに増すと言われている。 その美保神社の拝殿左右には備前焼の狛犬が設置されていた。備前焼の狛犬は岡山県を中心に中国・四国地方に数多く存在するようだが,私の生活圏である神奈川・東京では見た記憶がない。ところがあれこれ調べたところ,我が家の菩提寺近くの品川神社にも備前焼の狛犬があるとのこと,近いうちに参拝したいと思っている。 |
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備前焼の狛犬 | |||
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犬は猫と並びペットの人気ランキングで一二を争う存在。観音崎公園や町中を歩いていると犬を散歩させている人を多く見かける。ところが連れている犬の種類はほとんどが洋犬で日本犬は柴犬を時々見かける程度。忠犬ハチ公で有名な秋田犬などは一度もお目にかかったことがない。また,上野の西郷隆盛像が連れている犬は薩摩犬だが,これは絶滅寸前だとか。日本犬は何処へ行ってしまったのだろう? 日本犬の保存に関して中心的な役割を果たしている公益社団法人 日本犬保存会のホームページによれば,日本犬として天然記念物に指定されているのは,大型犬:秋田犬,中型犬:紀州犬・四国犬・北海道犬・甲斐犬,小型犬:柴犬の6種類。日本犬保存会にはこの内,主に柴犬・紀州犬・四国犬の3種が多く登録されているという。 また,日本には100種類を超える犬が飼育されているが,一年間に血統登録される純粋犬は50万頭強。この中で日本犬の占める割合は10%強で5万5千頭と記されている。しかしこれも減少傾向にあり,現在では4万頭を割り込んでいるようだ。そこで日本犬を写真で紹介したいところだが,残念ながら,私の手元には恥ずかしながら一種類もない。ご興味のある方は日本犬保存会のホームページに詳細が掲載されているので,そちらでご確認いただければ幸いである。 その代わりと言っては何だが,本ページでは日本郵便発行の特殊切手「身近な動物シリーズ第1集&第4集をご覧いただきたい。本シリーズには40頭の犬が登場しているが,犬種としては29種類。その内,日本犬は秋田犬と柴犬のみで全体の7%。採用された犬種は大半が洋犬。紀州犬・四国犬・北海道犬・甲斐犬は最早「身近な動物」ではなくなっているのだろう? 時代の流れとは言いながら日本郵便さんももう少しそこら辺のところを配慮して貰いたいものだ。 |
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日本犬の中で一番有名な犬の名を挙げるとすれば「忠犬ハチ公」で異論のないところ。日本映画「ハチ公物語」やリメイク版のアメリカ映画「HACHI約束の犬」などを通じて,日本はおろか世界にその名は知れ渡っているようだ。 死去した飼い主の大学教授・上野英三郎博士の帰りを渋谷駅前で約10年間待ちづづけたハチ。その後渋谷駅前にはハチの銅像が設置され,「忠犬ハチ公」の愛称で呼ばれ親しまれ,スクランブル交差点と共に渋谷の観光スポットとなっている。 2017年クリスマスイブの12月24日。品川にある菩提寺へ墓参に行った帰途,戌年を迎えるにあたりハチ公に敬意を表するため回り道して渋谷へ行った。渋谷へ行くのはなんと20数年ぶり,その割には大きく変わったような変わっていないような印象だったが,外国人が多いのには驚かされた。 スクランブル交差点を横目にハチ公像のある広場へ行ってみると,ハチ公像の前は長蛇の列。50人ほどの人が行儀良く並び,順番にハチ公と共に記念写真を撮っている。半数位が外国人で特に東アジア・東南アジア方面からの観光客が多いように見受けられた。 皆,和やかに語り合いながら順番を待っている。マナーで悪評高い某国の観光客らしき人も多数いるようだったが,割り込もうとするような不心得者は一人もいない。これもハチ公の犬徳?のなせる技かと心が温かくなった。私も記念写真をと思ったが,理屈抜きに行列が嫌いな私は行列の横からハチ公像を撮り大満足で帰宅した。 |
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「忠犬ハチ公」は秋田県大館市生まれの秋田犬。郵便局(株)東北支社が2009年10月〜2010年2月の間,地域・期間限定のオリジナルフレーム切手「ハチ公のふるさと大館」の販売をした他,大館市では毎年「生誕祭」や「慰霊祭」などの行事が執り行われている。 | |
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東京上野公園にある西郷隆盛像が連れている犬は薩摩犬の「ツン」。西郷さんは兎狩を趣味として,多くの猟犬を飼育していたと言われているが,その中でも可愛がっていたのがメス犬のツン。しかしながら,銅像制作時には既に死んでいたため別のオス犬がモデルとされ,それもあって銅像のツンは姿形が本物はだいぶ異なっているようだ。また,薩摩犬は気性が荒い性格が災いしてか,残念ながら純血種は絶滅したと言われている。 | |
NHK大河ドラマ「西郷どん」から転載 |
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毎週木曜日の夜9時から7チャンネル「テレビ東京」で放映される「和風総本家」。「日本っていいな。」のサブタイトル付きの番組は,和に関する様々な物事を取り上げ,日本の良さを伝えていく一種の上質なバラエティーで私が好きな番組の一つ。そのマスコットキャラクターとして登場するのが柴犬の「豆助」。 首に唐草模様の風呂敷包みを背負い,チョコチョコと動き回る姿は1960年代〜1970年代前半,「夢もチボーもないね」と言いながら「イロイロあらあな」と栃木訛りのギャグで人気を博したコメディアンの東京ぼん太と重なる。 そんな「豆助」を私は日本犬と思っていたが,日本犬保存会によれば体が小さい豆柴の豆助は日本犬として公認されないらしい。理由は体高と体重が柴犬の標準値を下回ること。個体差もあるが平均して豆柴は柴犬の1〜2まわり小さいようだ。犬の体格は人為的に比較的容易に変えられるもののようで,飼育環境の変化に伴い近年はミニ化された犬種が好まれ,豆柴は柴犬にポメラニアン等の小型犬を交配してミニ化して繁殖したと考えられるからだという。 因みに土佐犬と呼ばれている土佐闘犬もブルドッグやマスティフ,グレートデンなどの洋犬を交配した犬のため,日本犬として認定されないという。純血種を保護するためにはそれもやむを得ないことだが,豆助がチョコチョコ歩き回る姿は理屈抜きに愛らしい。同じ小型犬でも洋犬にはない雰囲気が伝わってくる。洋犬は流行り廃りが激しいようだが,柴犬が流行とは無関係に日本人から愛されているように,その血を受けついている豆柴も末長く愛され続けるに違いない。 |
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「イヌ(犬)」の名を冠した植物は,その由来として「役に立たない」ことからと説明されていることが多い。イヌ=犬は「役立たず」の代名詞として定着しているようだ。何故イヌが役立たずなのだろう? 「日本語大辞典」で「犬」について調べたところ @家畜でもっとも古く人間に飼育されるようになったイヌ科の動物。品種は公認されたもので100種を越える。それぞれの特徴によって猟犬・番犬・闘犬・愛玩犬などに分かれる。 Aスパイ・間者・裏切り者 B一見似ているが,本物と異なるもの。劣るもの。 Cむだなこと。 4つの説明の中で@は「役に立たない」どころか「役に立っている」証拠。Aは「役に立たない」理由にならない。BorCがそれらしく思われるので,ここに掲載した植物についてその名の由来を調べてみた。その結果,犬の名が付いた植物のほとんどが,一見,他の有用な植物に似ているが,実際は無用=役に立たない。「似て非なるもの」という諺が当てはまることが判った。 従って,Bが「役立たず」の答えとなるが,「似て非なるもの」が何故イヌになるのだろう? 私の持っている辞書や事典の類にはその答えは載っていない。そこであれこれネット検索したところあるサイトに興味深い説が載っていた。それによれば「似て非なるもの」の諺から非(ヒ)≒否(ヒ・イナ)→イナ→イヌと転訛したという。私はこの説を支持したい。 |
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イヌガラシ(犬芥子) | |
食用にするカラシナに似ているが,食用にならない。 | |
イヌショウマ(犬升麻) | |
山菜のサラシナショウマに似ているが,食用にならない。 | |
イヌタデ(犬蓼) | |
葉に辛味があり蓼酢を作るヤナギタデに似ているが, イヌタデは葉に辛味がなくて役に立たない。 |
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イヌビワ(犬枇杷) | |
果実がビワに似ていて食べられるが味は劣る。 | |
イヌガヤ(犬榧) | |
果実が食用になるカヤに似るが,苦くて食べられない。 | |
イヌシデ(犬四手) | |
近縁種のアカシデなどと比較して材質が劣る。 | |
イヌカタヒバ(犬片檜葉) | |
イワヒバに似ているが枝が片方にしか伸びない。 | |
イヌワラビ(犬蕨) | |
食用になるワラビに似ているが食べられない。 | |
イヌセンボンタケ(犬千本茸) | |
倒木や切り株などに大量に発生するが食用にならない。 | |
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境内に会津藩士の墓や庚申塔が残る鴨居・西徳寺には,三浦半島の名木・古木50選として紹介されている樹齢400年を超えるイヌマキとビャクシンの大木がある。イヌマキの名の由来はホンマキと言われるコウヤマキと同じ仲間だが,姿形や材質が劣ることからイヌの名が冠されたようだ。しかしながら,西徳寺のイヌマキを見ていると「何を人間が勝手なことをほざきやがる!」とばかりに威風堂々としている。 | |
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イヌノフグリ(イヌの陰嚢)というチョット可哀想な名の植物がある。在来種で絶滅危惧U類(VU)に指定されている希少種。果実の形状が雄犬の陰嚢(ふぐり)に似ていることから名づけられたようだが,命名者が植物学者の牧野富太郎博士と言うから驚きだ。イヌノフグリには気の毒な話だが,犬も恥ずかしがっているのでは? 尚,春先よく目にするオオイヌノフグリは明治中期頃渡来したヨーロッパ原産の帰化植物。花は鮮やかなブルーだが果実はイヌノフグリと同様の形状をしている。 |
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イヌノフグリの花 |
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イヌノフグリの果実 |
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オオイヌノフグリの花 |
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花穂が犬の尾に似ていることから,犬っころ草が転訛してエノコログサと呼ばれるようになったとされ,漢字では「狗(犬)尾草」と書く。猫じゃらしの別名は,花穂を猫の目の前で振ると猫がじゃれつくことからつけられた俗称。 | |
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2018年(平成30年) 東叶神社 |
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2018年(平成30年) 西叶神社 |
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2018年(平成30年) 鴨居八幡神社神社 |
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(番外) 2018年(平成30年) 出雲大社(島根県) |
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(番外) 2018年(平成30年) 白兎神社(鳥取県) |
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観光旅行へ出かけた時,神社仏閣や土産物店で土鈴が置いてあることが多い。我が家では地元の鴨居八幡神社へ初詣で出かけた時や,観光旅行先等で土鈴を買ってくるのが習慣になっている。ここではこれ迄に買い求めたイヌの土鈴をいくつかご紹介したい。 | |
西叶神社の説明板 |
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2018年(平成30年) 西叶神社 |
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2018年(平成30年) 鴨居八幡神社 |
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2006年(平成18年) 鴨居八幡神社 |
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2006年(平成18年) 川崎大師参道のお土産店 |
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1994年 鴨居八幡神社 |
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犬はりこ人形 1958年(昭和33年) |
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守り犬 1970年(昭和45年) |
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犬 1982年(昭和57年) |
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千葉の犬/土佐犬 1994年(平成6年) |
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佐土原人形・戌/秋田犬 2006年(平成18年) |
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犬種不明 2018年(平成30年) |
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例年,西叶神社近くにある西源材木店の店頭には,商品の材木を並べ立てかけ,カラースプレーで絵と文字を書いたと思われる新年挨拶の大きな看板が飾られる。普通,店舗や施設の新年挨拶はA4かA3サイズの用紙が使用されているが,西源材木店のそれは,畳十畳位はある超特大サイズ。カラースプレーで一気に書き上げたと思われるが,なかなか見事な出来映えで,西叶神社へ初詣に訪れた人たちが,その前で代わる代わる記念写真を撮っている姿が微笑ましい。 | |
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我が家の番犬 |
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箸置き |
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犬にまつわる故事・ことわざの類は実に多い。そこで日頃愛用している日本語大辞典で調べてみたところ,想定外の故事・ことわざが数多くあることに驚かされた。しかしながら,犬にとっては腹立たしい心外と思われるものがほとんどで,32語中,犬に好意的な例(太字)は22%の7語に過ぎず,私が犬であったら名誉毀損で閻魔大王にでも訴えたい気分だ。 日本語大辞典では「犬」について次のように語釈している。 【犬】 (名詞)@家畜でもっとも古く人間に飼育されるようになった,イヌ科の動物。品種は公認されたもので100種を越える。それぞれの特徴によって猟犬・番犬・闘犬・愛玩犬などに分かれる。Aスパイ。密偵。間者。裏切り者。 (接頭語)@一見似ているが,本物と異なるもの。おとるもの。Aむだなこと。 古くから人間に飼育され番犬や愛玩犬などとして親しまれてきた犬が,何故スパイや裏切り者などの代名詞や植物の似て非なるものの接頭語として使われるようになってしまったのだろう? その反面,安産を願って「戌の日」に岩田帯をしめたり,「犬張り子」を子どもの魔除けとして宮参りに贈る風習があったり,愛と憎しみ・蔑視は表裏一体と言えそうだ。 |
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犬が西向きや尾は東 | あたりまえのこと。予想された当然の結果。 |
犬と猿 | 仲の悪いことのたとえ。犬猿の仲。 |
犬に論語 | どんな道理をもって説得しようとしても,無駄であること。 |
犬の川端歩き | 奔走しても,何の結果も得られないこと。また,目的もなく歩き回ること。大川。 |
犬の糞 | たくさんあって,汚いもの。手に負えないもの。くだらないもの,軽蔑すべきものなどを言う。また,単に,ありふれているものの意にも用いる。 |
犬の糞で敵を討つ | 汚いやり方で,しかえしをする。 |
犬は人に付き猫は家に付く | 犬は,飼い主になついて,どこまでもついて行くが,猫は,飼主が引っ越しても,元の家を離れようとしない。 |
犬,骨折って鷹の餌食になる | 苦労して得たものを,他人に取られてしまう。犬,骨折って鷹に取られる。 |
犬も歩けば棒に当たる | でしゃばると,ひどい目にあう。出歩くと,思いもかけない,よいことがある。 |
犬も食わない | いやなことや,くだらないことなので,だれも相手にしない。 |
犬も朋輩,鷹も朋輩 | 役目や地位は違っても,同じ主人に仕えるのであれば,同僚だということ。 |
犬神 | 西日本に多い俗信で,人にのりうつって害を与えるという犬の霊。 |
犬神憑き | 人に害を加える犬の霊がのりうつったために起こるとされる精神の異常。また,その人。 |
犬食い | 食卓の上に食器を置いたまま,食べ物に顔を近づけて犬のように食べる食べ方。 |
犬侍 | 武士としての道をわきまえない侍をあざけり,ののしっていう語。 |
犬死に | 無駄死にすること。徒死。 |
犬畜生 | 道にはずれた行いをした人をののしっていう語。人非人。 |
戌の日 | 犬の出産が軽いことから,妊婦は妊娠五ヶ月ごろの戌の日に,岩田帯をしめると安産できるといわれる。 |
犬張り子 | 犬を象った張り子の郷土玩具。室町時代からあるが,江戸時代のものが有名。子どもの魔除けとして宮参りに贈る風習がある。 |
飼い犬に手を噛まれる | かわいがっている者から害を受ける。 |
犬馬の心 | 臣下が,主君に忠義を尽くそうとする心をへりくだっていう語。 |
犬馬の年 | (犬や馬が年をとるように,無駄に年だけをとるの意から)自分の年齢をへりくだっていう語。 |
犬馬の養い | 父母を養うのに,ただ飲み食いの用意をするだけで,少しも敬う心のないこと。 |
犬馬の労 | (犬馬がよく主人に仕えることから)人に尽くした自分の労苦をけんそんしていう語。 |
尾を振る犬は叩かれず | 従順な人は,誰からもひどい仕打ちを受けることはないことのたとえ。 |
狡兎(こうと)死して走狗煮らる | (獲物のウサギが捕らえられたあとでは,猟犬は不用となり,煮て食べられてしまう,の意から)敵が滅びてしまうと,それに功績のあった有能な家臣はかえって邪魔に思われ,殺されてしまう。 |
喪家の狗(そうかのいぬ) | (喪中の家の犬。一説に,家や飼い主を喪った犬。ともに十分に世話をしてもらえないことから)やせて元気のない犬。 |
夫婦喧嘩は犬も食わない | 夫婦のけんかは一時的なもので,すぐ仲よくなるものであるから,他人が口出しするのはばからしいことだ。 |
煩悩の犬 | まつわりついて,身から離れない煩悩を,犬がつきまとうのにたとえたことば。 |
負け犬 | けんかに負けて尾を垂らして逃げる犬。競争などに負けて引き下がる人のさま。 |
負け犬の遠吠え | (弱い犬が相手から遠く離れたところで,尻込みしながら吠え立てることから)臆病者が本人の前ではできないくせに,陰では威張ったり悪口を言ったりすることのたとえ。 |
羊頭狗肉 | (ヒツジの頭を店先に出して,実はイヌの肉を売ること)見せかけだけで実質をともなわないことのたとえ。いんちき。 |
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吾輩は犬である。名前はもうある,その名は「ドン」。飼い主が明治の文豪・夏目漱石先生も脱帽するであろうと謳われた井上ひさしなる作家の「ドン松五郎の生活」という小説の主人公の名前から思いついたとか。由来としては文句ないが,ドン松五郎にあやかるつもりなら「ドン竹之丞」とか「ドン梅之助」とすれば良いものを,簡単で呼びやすいと言う理由で「ドン」と名づけたという。 飼い主は平凡な安サラリーマン。以前,彼が書いた「吾輩はマツカサウオである!」という短編が夏目草石賞?にノミネートされたこともあり,本人は文才があると思い込み,いまだに作家先生気取りでいる。それもあって吾輩は彼を作家先生擬(もどき)と呼ぶことにした。 生まれたところは鄙(ひな)には稀な洋館の庭先に設置された犬小屋。母親は血統書付きの純日本犬だが,父親はどこからか忍び込んできた野良犬のようだ。吾輩の品格ある姿形からすれば,父親も犬種はわからないが,それなりの日本犬だったのではないかと思っている。 吾輩と作家先生擬との出会いは,生後2ヶ月を過ぎたある夏の日の夕暮れ時。母親とドッグフードを食べていると,何処からかこれ迄に嗅いだことがない得も言われぬ匂いが漂ってきた。母親が止めるのも聞かず塀の隙間から道路へ飛び出してみると,一人の酔っ払いがフラフラ歩いていた。 猫にマタタビではないが,その匂いに魅せられてその後をついていくと,途中で気づいた彼は短い足を精一杯伸ばし足早に歩き出した。足早に歩いたところで所詮は酔っ払い,生後2ヶ月の吾輩でも簡単に追いつける。すると今度は急に駆け出したり,曲がり角では塀の隙間に隠れたり,なんとか吾輩を振り切ろうとそれを繰り返す。 浅はかな男だ。いくら隠れていても頭隠して尻隠さずで,魅力的なその匂いを消すことはできないので直ぐに見つけられる。自宅が近づいたのか彼は根負けして,吾輩を抱き上げ背広の内側に隠した。背広の中はあの匂いが充満していて,暖かく心地よい。 呼び鈴を押すと元気な男の子二人と若く美しいスリムな母親(自己申告による)が出迎えた。彼は姿勢を正し,手品師よろしく懐から吾輩と焼き鳥とやらを取り出した。吾輩を目にした子供たちは焼き鳥には目もくれず飛び上がって喜び,母親は一瞬,戸惑いの表情を浮かべたが,愛らしい吾輩を気に入ったのか,飼うことに反対しなかった。 翌朝,与えられた食事を見て驚いた。焼き鳥どころかドッグフードでもない。食べ残しのご飯の上に残り物の味噌汁をかけ,その上に焼き魚の頭と骨をのせただけの粗末なもの。それでもドッグフードを食べ飽きた吾輩には新鮮な味で美味しかった。・・・・・・・・・続く・2030年戌年 |
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あれから40年! 吾輩はフィラリアに感染して,人間なら80歳前後に相当する15歳の時,手術の甲斐無く昇天。火葬され庭の片隅で家族を見守っている。ここに一枚の写真がある。38年位前の正月に撮影したと思われる写真のおばあちゃんは,一昨年97歳で天国へ旅立ち,か細かった母親は,今や席取り?三役並みの風格を漂わせ,突き押しの得意技で作家先生擬(もどき)を圧倒している。幼かった長男は結婚して3児の父親となり,次男は花嫁募集中である。そして撮影者の作家先生擬は相変わらずしょうもない駄文を得意気に書いて恥ずかしげもなく全世界へ発信している。 めでたしめでたし |
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