海の見晴らし台
(旧第一展望台園地&第三砲台跡)

 園地名の海の見晴らし台は看板に偽りありで,現在は園地内にそれらしきものは見当たらない。園地名から絶景ビューポイントを期待して訪れた来園者は失望すること間違いなしの状態にある。

 以前は鉄筋コンクリートの上に天然石のスレートを張り詰めた,モダンな階段状テラス風見晴し台があり,周辺の視界を遮る大きな木々は刈り払われ,対岸の房総半島は勿論,浦賀・久里浜方面,更には遠く太平洋へと続く東京湾口まで遠望することができた。まさに海の見晴らし台の名に相応しい園地だった。

 しかし,肝心の見晴し台も経年変化によりスレートが剥落したり,手摺りやフェンスの無い構造が安全上問題視されてか,10年ほど前に取り壊されてしまった。
   

2004.5.26
 当初はいずれ安全性を重視した見晴し台が新設されるものと期待していたが,いまだにその計画は無さそうだ。その上,周辺の木々が生長して視界のほとんどを遮っている為,浦賀・久里浜方面どころか対岸の房総半島すら望むことができないのが現状。僅かに東京湾口の先,太平洋の一部が望める程度である。海の見晴らし台の名が廃ると言うものだろう。
   
北門第三砲台跡
  
  いきなり海の見晴らし台について否定的なご紹介をしたので,来園を予定している方はこの園地をパスしてしまう恐れがある。しかしながら,それは早計というものでこの園地は歴史的にも地質学的にも魅力たっぷりな場所なのです。

 見晴し台に通じるトンネル前の案内標識には「海の見晴らし台」。トンネル出入口の右側に貼り付けられた金属プレートには旧園地名「第一展望台園地」が記されているだけで,肝心要の北門第三砲台跡の存在を示す標識は何処にも見当たらない。

 この園地にある北門第三砲台跡は司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」にも登場する日露戦争で活躍した二十八センチ榴弾砲が設置されていた場所。又,その大砲が国産化された時,試射した場所としても知られている歴史的にも貴重な遺構なのです。・・・・・・詳細は北門第三砲台跡参照
   
トンネル
 
 砲台跡と共にその付属施設として造られた園地出入口のトンネルも興味深いものがある。地下弾薬庫・揚騨井・掩蔽壕等の付属施設はフランス積みで造られているが,トンネルは当初素掘りであったと思われる。しかし,地質が脆弱だったため天井や側壁の一部が剥落したのか,後年,安全性を高めるため側壁の一部と天井全体をイギリス積みレンガ構造で補強しているのがわかる。フランスからイギリスへ,幕末から明治にかけての外国との関係変化が垣間見える気がする。
   
 更に,素掘りのままの側壁も異色で,変化に富んだ異様とも言える地層が露出,豪快な抽象画のような雰囲気を醸しだしている。又,トンネルや切り通しの素掘りの側壁は,左右対称となっているのが普通だが,何故かこのトンネルは左右非対称な部分が多いのには驚かされる。薄暗いトンネル内だが素通りせずに,それが形成された過程を想像したり,自然の造形美を楽しんで頂きたい。
   
観音崎の典型的な地層
 

第四砲台下・素掘りのトンネルの側壁・左右対称

観音埼灯台横・素掘りの切り通し・左右対称
海の見晴らし台トンネル側壁の地層
 

海の見晴らし台トンネルの側壁は左右非対称
トンネル地層の壁画
    
トンネル地層の一部を額縁に入れてみました!
 
園地名改称&園地改善提案
※詳細は北門第三砲台跡参照

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