マ ダ イ
(真鯛)

タイ科
全長:50〜100cm

 観音崎の浜付近をバイクで走行中,何気なく横目で浜の方を見ると,なにやら大きな魚を手に,記念撮影している光景が目に飛び込んできた。バイクを急停車,カメラ片手に押っ取り刀で駆け寄ってみると,大きな魚はマダイだった。クロダイでもこれだけの大物は目にしたこともないが,マダイとなればこれだけの超大物は魚屋さんや磯料理屋でもお目にかかったことがない。あまりにも大物のため,釣り人はポーズを撮るのに四苦八苦している。滅多にないチャンス「写真を撮らせて貰って良いですか?」と声をかけ,お許しをいただいて私も写真を撮ることになった。
2006.6.2
 
 ところが,マダイは重たい上に,まだ生きていて時々暴れるため,ポーズがなかなか様にならない。すると助っ人が現れ,タイを持つ位置,タイの角度等あれこれ指導した。助っ人はタイ釣りのベテランのようで,流石につけるポーズが様になっている。「いよー日本一!」と思わず声をかけたくなるような晴れ姿になった。私は七年前,巨大ハモを捕獲,記念写真を持ち歩いて,自慢話をあちこちでご披露したことがあるが,この超大物マダイには「参りました!」の一言である。 
 撮影後,釣り人の三軒谷在住・水野悟さんにうかがったところ,マダイは重量が6.5kg,体長は82cm,釣エサはエビとのことであった。矢張りタイはエビで釣るようだ。

 恐らく今夜,水野さん宅では盛大に祝宴が行われるに違いない。刺身や塩焼にしたり,アラはお吸い物にしたり,マダイは捨てるところのない,縁起の良い,魚の中の王様である。家族では食べきれないので,親戚知人を招いたりして,日本酒で一杯やるのだろうか?あれこれマダイのその後に思いを巡らせながら,「私もその仲間に入れて貰えませんか?」とは,流石に図々しい私も言い出せず,後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
 鴨居・走水は昔からマダイ釣りの漁場として知られ,一本釣りで釣れたマダイは「江戸前の鯛」として江戸城に献上されたと言われている。鴨居とその周辺地域には,マダイに因んだ木彫り彫刻等が今でもいくつか残されている。

「真鯛と伊勢海老」
鴨居・磯魚活料理「谷ふじ」玄関入り口装飾

「真鯛を抱えた恵比寿様」
東浦賀・東耀稲荷の屋根装飾
 鴨居の脇方地区には横須賀市の文化財指定を受けたとっぴきぴーおどりと呼ばれる仮面里神楽が江戸時代から伝承されていた。その演目の一つに「鯛釣り」がある。恵比寿様,ヒョットコ,バカやタコに扮した演者がパントマイムよろしく,身振り手振りコミカルに鯛を釣り上げる様子を演じていたものだった。
走水のマダイとマアジ
 
 第8回観音崎フェスタの開催された文化の日。横須賀美術館・谷内六郎館前にある「なかね貸ボート店」脇の舗道に人だかりがしていた。何だろう?見過ごすわけにはいかない。

 野次馬の中に割り込んでのぞき込むと,マダイやマアジがご披露されていた。この日ボートで三人が釣り上げた獲物だという。マダイは大小とり混ぜて四匹。大きなものは3kgくらいあるようだ。傍らで釣り人が満足げに微笑んでいる。ボート店の主人も自分が釣り上げたかのように得意気だった。
2010.11.3
 マダイが魚の王様であることは異論を挟む余地はないが,私には少し小さなマダイの周りに脇役として飾られているマアジが気になった。写真で見るとマダイが大きいため小アジのように見えるが,実際は20〜40cm位はある。

 走水の大アジは知る人ぞ知る存在で,50cm以上,1kgを越す特大アジが釣れることもあるという。刺身で良し,タタキにして良し,勿論,塩焼きにしても美味しいが,他産地のものに比べてお値段が高いのが難。

 地元のスーパーや鮮魚店で販売されることもあるが,人気があるためか,流通経費のかかる他産地マアジの数倍の値段がつけられている。大きなものは養殖マダイより高いこともあるから驚きだ。

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