ハ モ
(鱧)

これぞ淡路の隠し味
ハモ捕獲顛末記
てんやの「夏天丼」
旅の香り時の遊び
続・ハモ捕獲顛末記
お詫び・訂正!
これぞ本物 巨大ハモ!
これぞ淡路の隠し味
  

 毎週日曜の朝7時30分から,日本テレビ系で放送される「遠くへ行きたい」は,30年以上続いている長寿番組。2003年6月8日放送された「これぞ淡路の隠し味」を何気なく見ていると,ハモの話が出てきたのでテレビの前に釘付けになった。

 淡路島近海でとれるハモは6〜7月が旬。郷土料理「鱧すき」として消費される他に,関西方面,特に京都へ多く出荷されると言う。7月の京都と言えば「祇園祭」で有名だが,祇園祭は俗に「ハモ祭」と呼ばれ,ハモ料理は祇園祭に欠くことのできない京の夏の味覚。

 "夏がくれば思い出す"という歌があるが,私はテレビから"コンコンチキチン,コンチキチン"と祇園囃子の鐘の音が聞こえてくると,4年前に釣り上げた?巨大ハモを思い出す。

 4年前の1999年5月5日,鴨居港の防波堤で,ウミタナゴ釣りをしていた時のこと,釣り上げた魚をビクに入れ,海に浮かせていたところ,1m以上はある巨大なウナギ?が,ビクの中の魚を狙っているのを発見した。

 悪戦苦闘の末,その巨大ウナギ?を捕獲,鴨居の魚屋に立ち寄り,地元の漁師にそれが"ハモ"であると教えられ,てんやわんやの挙げ句,ハモは三日がかりで,家族の胃袋に消えてしまった。

 因みにハモを計測してみると,体長1m10cm 体重は2.5kgあったが,私の腕の太さと比較しても,その巨大さがお判りいただけると思う。

 尚,弁解になるが,4年前は私も現役で,観音崎自然博物館のボランティアをしていなかったこともあり,ハモを胃袋の中へ収めてしまったが,もし仮に現在同じ状況におかれたら,まずハモを観音崎自然博物館に持ち込み,大型水槽に展示することを考えるのでは?(m_m)

ハモ捕獲顛末記

 1999年5月5日,鴨居港の防波堤で,ウミタナゴ釣りをしていた時のこと。釣り上げた魚をビクに入れ,海に浮かせていたところ,1m以上はある巨大なウナギ?が,ビクの中の魚を狙っているのを発見した。

 そこで,クロダイを万一釣り上げた時に備え,持参の直径50cmある玉網を取り出し,丸々と太ったウナギを捕獲することにした。

 悟られないよう,玉網をユックリと近づけ,一気に掬い上げようとしたが,あまりにも大きすぎて玉網に収まらず,逃げられてしまった。

 あきらめてウミタナゴ釣りを再開,何匹か釣り上げてふとビクを見ると,なんと逃げたはずのウナギが,再びビクの中の魚を狙っていた。

 今度こそ逃してなるものかと,慎重に捕獲を試みたが,再び,いとも簡単に逃げられてしまった。ところが,学習能力がないか,よほど飢えていたのか,三度その巨大な姿を現した。

 他に良い捕獲方法も考えつかないため,再び玉網で掬い上げようとしたが失敗,ところが,何を思ったか,前二回は私から反対方向に逃走したのに対し,今回は私に向かって突進して来た。

 私は咄嗟に玉網を,突進してくる目の前に突き立てると,うまい具合に玉網の中へスッポリと収まった。やれ嬉しと,玉網を海中から持ち上げようとしたが,暴れるのとその重みで,玉網の留め金具の一部が破損してしまった。

 最早これまでかと観念したが,悪戦苦闘の末,防波堤の上へ持ち上げることに成功した。ところが,それから先が問題で,彼があまりにも大きすぎるのと暴れるため,一人ではビクに入れることもできない。

 そこで,少し離れた場所で釣りをしていた若者二人に,大声で助けを求めると,何ごとが起こったかと二人は駆けつけ,巨大ウナギを見てびっくり仰天したが,事態を了解,協力してくれることになった。

 彼らはビクの中のウミタナゴを海へ放し,二人でビクの入口を目一杯に広げてくれたので,私は暴れる巨大ウナギを玉網越しに,抱きかかえるようにして,やっとビクの中へ入れることができた。

 ビクはクロダイが二三匹は楽に入るほどの大きさがあったが,巨大ウナギ一匹で網がはち切れそうになったため,若者二人に礼を言って釣り場をあとにした。

 帰途,鴨居の魚屋へ立ち寄り巨大ウナギを見せたが,主人は首を傾げてハッキリしない。そこへたまたま地元の漁師が通りかかり,声をかけ見て貰うと,これはウナギではなくて"ハモ"だと言う。

 恥ずかしながら,私はこの時初めて"ハモ"と言う名前を聞いた。食べられるのか尋ねると,「関東ではあまり食べないが,関西では結構人気があり,小骨が多いので,骨切りをすれば食べられる。」と言う。

 家へ帰りハモを妻に見せ,これを今晩のオカズにすると言うと,顔色を変えて「すぐに逃がして来て!」とわめいたが,私はそれを無視して風呂場の洗い場に放してみた。

 風呂場からはバタバタ暴れる音が聞こえていたが,暫くして静になったので,扉を開けてのぞいてみると,まるでコブラのように鎌首を持ち上げ,噛みつきそうな形相で私の方へ突進してきた。

 私はビックリ仰天,悲鳴を上げながらフロの扉を慌てて閉めたが,その姿を妻に見られ大笑いされてしまい,亭主の面目丸つぶれであった。


釣り上げてから一時間くらい経過したハモ
まだ生きていて,近づくと威嚇してきた。
 今晩のオカズにすると言ってはみたものの,どのような食べ方をしたら良いか見当がつかない。家にある魚の図鑑や魚クッキング百科を引っ張り出し,拾い読みしてみると,興味深い記事が二つ目に入った。

 一つは,ハモは関西,特に京都では夏の味覚として欠かせない魚で,祇園祭のことを俗にハモ祭りと言う。ハモの皮下にはいろいろの栄養が豊富で,人間の皮膚の老化防止に役立つコンドロイチンと呼ばれる物質が含まれているので,特に女性は肌が滑らかになり,京美人はハモが作った?と書かれていた。

 私がその記事を"錦の御旗"のように妻に見せると,それまで頑なに拒否反応を示していた彼女の顔が一変,早速,今晩のオカズにしようと言い出したから現金なものだ。矢張り女性は京都や京美人に弱いようである。

 妻の問題はこれで一応解決したが,もう一つは,ハモは小骨が多く,骨切りをする必要があり,これが調理人の腕の見せどころで,その上手・下手が料理の良し悪しに直結するとあった。

 そこで“魚クッキング百科”を見ながら,ハモを解体することになった。そのころになると流石のハモも息絶えて,写真を撮った時には茶褐色で,不気味な縞模様まであったものが,ウナギ屋の店頭で見かけるウナギのように,からだ全体が銀白色に変色していた。

 解体してみると,一家四人ではとても食べきれないボリュームがある。ご近所へ配ることも考えたが,気味悪がられるのではとあきらめ,三日に分けて家族の胃袋に収めることにした。

 骨切りらしきことを始めたところへ,勉強はあまり好きではないが,料理を得意とする次男坊が帰宅。ハモの話をすると,骨切りはオレに任せてくれと言う。

 彼は料理が好きなだけあって,テレビの料理番組を時々見ているらしい。二三日前に骨切りの仕方を見たばかりと言うので,それは彼に任せて,私はメニューを考えることにした。

皮を切らずに小骨を切る,これがハモの骨切り
 蒲焼き・天ぷら・刺身・酢の物・吸い物・ツミレ等々,思いつくままに8品目ほどのメニューに挑戦することになったが,料理の段階になると,すっかり乗り気になった妻と次男坊に台所を奪われ,私は傍観するだけの存在となった。

 その日の夕食はハモづくしで,日本酒を飲みながら,私の捕獲話を肴に多いに盛り上がったが,その外見に似合わず殊の外美味で,淡泊なこともあってか,食卓の上に所狭しと並べられた料理も,全て綺麗に家族四人の胃袋に消えてしまった。

 これがハモを捕獲して,胃袋に収まるまでの顛末であるが,あとになってハモの語源が,大きな口に凶暴な歯を持ち,やたらに噛みつくところから「噛む(ハム)」魚の意で,ハモと呼ぶようになったということを知り,怖いもの知らずというものの,よくぞこんな魚を捕獲して食べる気になったものと,我ながら呆れている昨今である。

ハモ料理の一部
てんやの夏天丼
  
 歯の治療に横須賀中央へ出かけた。治療を終わって時計を見ると12時を回っていたので,安くて美味しくてその上珍しいサービスランチはないかと,駅前の飲食店街をブラブラ物色したが,なかなかそんな条件を満足してくれるランチはない。

 そこで,浦賀まで帰って,駅近くのラーメン屋でお気に入りの「黒船ラーメン」でも食べようと,横須賀中央駅へ向かいかけたところ,「ハモの天ぷら」が目に飛び込んできた。

 それは東京・神奈川を中心に,関東地方で天丼のチェーン店を展開している「てんや」のポスターだった。「夏天丼」と題された具沢山の天丼がクローズアップされたポスターには,ハモの天ぷらが2枚写っていた。私は思わず足を止め,ハモに誘われるように店内に入り,カウンターに腰掛け「夏天丼」を注文した。

 5分ほどで目の前に出された天丼は,ポスターに偽り無しの具沢山。私は迷わず1枚目のハモを口に運んだ。それは5年前に捕獲した巨大ハモと同じように美味しく淡泊な味であったが,歯ごたえは巨大ハモのようなプリプリ感がなく少々残念であった。

 その差は,生きたハモを調理して直ぐに揚げたのと,調理してある程度時間が経過してから揚げたものとの違いであると思うが,750円の値段で贅沢は言っていられない。関西で人気のあるハモも,関東ではそれほどではない。これまでお目にかかる機会も少なかっただけに,今回の「てんや」の企画はヒットしているのかどうか不明であるが,私には大歓迎である。 
2004.7
 
「てんや」のコピー
  
 紀伊半島以南で水揚げされ、大きいものは体長2mにも達します。関西では欠かせない夏の味覚。大阪の天神祭や京都の祇園祭の頃が旬で、この時期には「祭鱧」と呼ばれて活魚で店頭に並びます。

 上品で独特のうまみのある白身が自慢ですが、小骨が多いため皮一枚を残して1〜2mm幅で骨を切る必要があり、料理に手間のかかるお魚です。皮膚の老化を防ぐコンドロイチンが豊富で、京美人は鱧で育つとも言われます。
旅の香り時の遊び
 
 毎週火曜日午後7時からテレビ朝日系で放映される「旅の香り時の遊び」は,野際陽子・氷川きよし・中井美穂がレギュラーの旅番組。異色3人の掛け合いが意外と面白く,なんとなくほとんど毎週のように見ている。

 2005年6月28日は「誰も知らない夏の京都」と題し,京都通の藤田まこと・山村紅葉が旅人の野際陽子・氷川きよしを,初夏の京都の穴場へ案内した。

 中学校の修学旅行以来,私は仕事で京都を数回訪れたことはあるが,観光で訪れたことは一度もない。どこかお上品で気取った感じのする京都は,無粋者の私には苦手な町だ。

 京風と名前のついた料理は見た目が美しく,見るからに高価な器に盛られ出てくるが,先ず例外なく量は少ない。数年前,相模湾に面した磯料理店で京風刺身なるものをいただいてみたが,単に小さく薄いだけで?値段だけは法外に高く,腹立たしい思いをした記憶すらある。

 そんなこともあってか,この日はなんとなく冷めた目で画面を見ていたが,料理旅館「幾松」の登場で目が覚めた。夏の京都の代表料理として鱧(ハモ)づくしが紹介されたのだ。テーブルに並べられた鱧料理を眺めながら,6年前の我が家のハモ騒動を妻と二人懐かしく思い出していた。
  
 料理旅館「幾松」は明治維新の立役者・桂小五郎の妻「幾松」の名にちなんだもので,元長州藩の控え室だった建物を改築した館内には,倒幕の参謀本部として使われていた部屋などが幕末当時のまま残されている。
続・ハモ捕獲顛末記
      
 2009年5月27日,大潮で干上がった腰越の磯で,海の生き物たちの写真を撮っていると,突然,バシャバシャと大きな水音がした。魚でも飛び跳ねたのだろうか?辺りをキョロキョロ見回してみたが,何処にもそれらしき姿がない。

 あきらめて撮影を再開すると,近くで再び,バシャバシャと水音がした。音は鳴り止まず,いつまでも続いている。音は傍にある岩の中から聞こえてくるようだ。岩には拳がようやく入るほどの裂け目があり,30度位の傾きで下がっている。音の主はその底にいるらしい。
 顔を近づけて覗き込むと,音の主が裂け目から脱出しようと,長い身体をくねらせながら,底から這い上がってきた。ところが,斜面が体長より長く,30度ほどの角度があるため脱出することが出来ない。

 ウナギ?アナゴ?否,ハモだった。10年ほど前に捕獲したハモほど大きくはなかったが,凶暴そうな顔つき,目つきは紛れもなくハモだ。裂け目に片手を突っ込んで,捕獲しようと思ったが,その鋭い歯を見ると,とてもその勇気が湧いてこない。そのくせ,10年前の天ぷらの味が脳裏を過ぎる。

 食いしん坊の私としてはあきらめるわけにはいかない。思案の末,浜の近くの釣具屋さんで,モリを買い求めることにした。お店まで往復約10分。息せき切って駆け戻ると,ハモはまだ裂け目の奥に潜んでいた。 裂け目の奥のハモに標準を合わせ,モリで一突き。意外と簡単に,一発で仕留めることが出来た。
 海の生き物たちの撮影を中断。ハモを自宅へ持ち帰り,家内に見せると,一瞬気味悪がったが,10年前のことを思い出したのか,ニコリと笑った。ハモに含まれる皮膚の老化防止に役立つコンドロイチンと呼ばれる物質が魅力なのだろう。

 夕方,調理を始める前に測定したところ,体長は73cm,体重は550gだった。10年前の巨大ハモに比べて,体長は約半分,体重は1/5と小ぶりだったが,年寄り三人家族にとっては,十分すぎる量の天ぷらが出来上がった。

 食卓にはハモの天ぷらの他に,磯で拾ってきた大きな海鼠(ナマコ)の酢の物と海鼠腸(コノワタ),前日釣り上げたメバルとカサゴの煮付け等々が並んだ。明日は私の誕生日。私は前祝いのつもりだったが,ビールで乾杯前に家内が一言「これだけ豪華な料理が並んだのだから,誕生祝いを今日に繰り上げましょう!」。そんな殺生な!
お詫び・訂正!
 
 1999年5月以来,16年間に亘り「ハモ」と信じて疑わなかった本ページ掲載の魚が「ダイナンアナゴ&クロアナゴ」と判明した。2015年10月26日,H.H.さんからの下記メールが発端で,ネットで調べたところ正式名はダイナンアナゴだが,東京湾周辺ではクロアナゴ,アナコンダと呼ばれていることも判った。尚,これまでダイナンアナゴとクロアナゴは同じ魚とされてきたが,近年の研究では別種ということになるようだ。……H.H.さんに感謝!

 本ページのタイトルは「ハモ(鱧)」,本来はタイトル及び内容を全てダイナンアナゴ及びクロアナゴと訂正すべき所だが,ハモと信じて演じた一連のドタバタ騒動記も味気ないものになってしまう。つきましては間違いを承知の上で,タイトル及び内容は訂正せず,本稿の「お詫び・訂正!」でご容赦頂ければ幸いである。
                                          2015.10.28 kamosuzu記

 H.H.さんからのメール
 「鱧について検索している際、たまたまHPを拝見させて頂きました。差し出がましいかと思いましたが、鱧のコーナーで掲載されている写真はダイナンアナゴであると思われます。同種はウナギ目の中でも巨大化する種で東京湾では身エサなどで釣ることができます。また当該記事末尾に掲載の魚はクロアナゴだと思われます。両者は小型の個体では同定が難しいことがあります。

 一方、鱧はウナギ目のなかでは口吻が長く目の後ろまで口が裂け、目立って鋭い歯を持っており、生死問わず黒ずむ事はなく黄金色をしております。また、鱧は大型の個体でも頭部から肛門付近まで太さはある程度均一であります。拝見した写真では頭部から腹にかけて太く、黒ずんでおり歯も見られない点から鱧ではなくダイナンアナゴであるとご指摘させて頂きます。しかしながら鱧ほど上品でないですが、鱧と同じ様に調理出来てそれなりの味だと思います。

 突然のメールで恐縮ではありますが当方も観音崎〜三浦界隈には幼少の頃から慣れ親しんでおり貴殿のHPは楽しく拝見させて頂きました。」
これぞ本物 巨大ハモ!
       
 2018.9.14神戸新聞が配信した「体長2.3m重さ19.5kgの巨大ハモ あまりの大きさに仲買人騒然」と言う記事にビックリ! その大きさ,凶暴そうな顔つき,鋭い刃。私が捕獲したダイナンアナゴ&クロアナゴとは残念ながら雲泥の差。競りにかけられ最終的に大阪の料理店に買い取られたという。

 記事によれば日本海に面した兵庫県の香住漁港で水揚げされたそうだが,ハモの本場・淡路島で捕れる標準的なハモの体長は1m前後の由。それに比べれば私の捕獲した体長1.4m重さ4.5kgの偽ハモも捨てたものでも無いか?と納得。
 

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