観音崎今昔写真館
アジサイ見所の減少
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今は昔,観音崎公園はアジサイの名所と呼ばれ,広い園内の各所に見所が存在。6月上旬から下旬にかけて,手入れの行き届いたセイヨウアジサイやガクアジサイ,更には自生のガクアジサイが咲き誇る様は本公園自慢の一つだった。その状態は経費節減を目的として指定管理者制度(※1)が導入された2007年度以降もしばらくは続いた。しかしながら,経費節減の効果はある程度あったと思われる反面,年を追うごとに公園管理の質は低下,その結果,多くのアジサイ見所が荒廃して姿を消していった。 (※1.)指定管理者制度とは,「公の施設」の管理運営を行う民間事業者等を競争入札により選定。適格業者を「指定管理者」として指定することにより,民間のノウハウを活用しつつ,サービスの向上と経費の節減等を図ることを目的とした制度。 |
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観音崎公園指定管理者:横浜緑地・西武造園グループ 「観音崎通信」2010年6月号から転載 |
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それでも観音崎公園は,今でも一応アジサイの名所として認知されているようで,神奈川県の広報誌「県のたより(2023)6月号」の一面トップで,『県立観音崎公園内のあじさいは「かながわの花の名所100選に選定されており,「汐音」をはじめ,多くのあじさいが楽しめます。』と紹介された。その効果もあって,今年は梅雨にもかかわらず公園を訪れる人の数も多く,昔を知る者としてはいささか複雑な気持ちである。 指定管理者制度の導入によって,経費節減の効果はある程度あったと思われるが,年を追うごとに公園管理の質は低下,その結果,多くのアジサイ見所が荒廃して姿を消していったのが現実。その結果,2023アジサイマップによれば,見所は赤線のロングコース内だけになってしまった。パークセンターを出発点として実際にコース内を歩いてみると,コース内のアジサイの多くは適切な時期に正しい方法で選定されていると見えて,それぞれ美しく咲き誇っているが,最大の見所はゴール地点の横須賀美術館周辺。皮肉なことにこの辺りだけ,公園の指定管理者ではなく美術館が発注した業者が管理しているという。どうしてこのよう差が生じるのだろう? |
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観音崎公園指定管理者:神奈川県公園協会・京急サービス共同企業体 「かんのんざ紀」2023年5月号から転載 |
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アジサイの花を毎年美しく咲かせるには,指定管理者の維持管理の善し悪しにかかっていると言っても過言ではない。指定管理者制度が導入されてから3年後の2010年「観音崎通信6月号」に,2010アジサイマップと共に興味深い記事が載っていた。この心意気が後々の指定管理者に受け継がれていけば2023アジサイマップのような状態にはならなかったと思われるが,現実はどこかで歯車が狂ってしまったようだ。 指定管理者制度が導入されて,コストダウンが図られることは結構なことだが,安かろう悪かろうは許されない。現在の公園管理の状態はこのアジサイ管理だけではない。至る所でこのような状態を目にするのが現実。管理者の選定は入札によって決まるが,それなりの仕様書に基づき管理をすることが条件となっている筈。私は仕様書を見たことがないので断定できないが,現在の公園管理が仕様書に基づき忠実に実施されているとは考えられない。公園管理を監督する立場にある神奈川県土木事務所の見解を伺いたいと思っている。 |
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2012.6.15 |
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2023.6.16 |
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2006.7.2 |
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2023.6.16 |
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2011.6.8 |
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遊具は老朽化のため撤去 2023.6.19 |
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2011.6.22 |
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アジサイの前に2列のカワヅザクラが植栽されてしまった! |
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2023.6.19 |
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2012.6.22 |
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2023.6.16 |
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2011.6.22 |
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2023.6.16 |
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横須賀美術館の建設がはじまる2004年まで,そこには「走水園地」という美しい園地があった。走水園地と隣接する三軒家園地との境界には低い擁壁があり,その上にはセイヨウアジサイやガクアジサイが植栽され,季節になると見事な花を咲かせて,来園者の目を癒やしてくれていた。 | |
2004.6.7 |
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横須賀美術館完成後,走水園地の跡地は美術館の管理下に置かれ,美術館の前面を除いた周辺道路にはセイヨウアジサイが植栽された。それを境に擁壁の上は公園の指定業者,下は美術館の指定業者がそれぞれ管理するようになった。それから約20年が経過した結果が下の写真の通り。 | |
2023.6.16 |
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現在,「アジサイ」といえば,カラフルなセイヨウアジサイを指すのが一般的だが,元はと言えば日本原産のガクアジサイを品種改良したものが「アジサイ」。それをヨーロッパで品種改良して日本に逆輸入されたものが「セイヨウアジサイ」。従って,ガクアジサイはもっと尊重されても良い存在と言える。その貴重なガクアジサイの自生種を観音崎では数多く見ることができる。 2023アジサイマップでは,ロングコース・ショートコースそれぞれに自生種のガクアジサイも紹介されているが,このコースから外れた観音崎園地等の園内各所にもガクアジサイの見所が多数点在している。観音崎園地は観音崎で唯一バーベキューが許された園地。天気の良い休日ともなればバーベキュー・海遊び・磯の観察を楽しみに沢山の観光客が訪れる人気の園地。ところが,テントを張ったりバーベキューを楽しむ広場は,ゴミもほとんど見当たらないほど綺麗に整備されているものの,周辺のセイヨウアジサイはアズマネザサ・雑木類やツル植物に埋もれて情けない状態になったまま。 しかしながら自生種のガクアジサイは逞しい。草木に覆われ見る影も無く存在感を失ったセイヨウアジサイを尻目に,他の植物を寄せつけず背丈を伸ばし,急斜面を這い上がるかのように生息範囲を広げている。これは園路沿いや海岸部のガクアジサイも同様で,特に剪定もされていない状態ながら美しく咲いているその姿に逞しい生命力すら感じる。 |
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2023.6.21 |
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2023.6.21 |
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2023.6.21 |
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2023.6.21 |
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2023.6.21 |
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「権現洞に落石防護網」のページで紹介,「2023アジサイマップ」のショートコースにも記載されている「第2駐車場~三軒家トイレ」に至る坂道のA地点付近で興味深いガクアジサイを見かけた。それが生えている崖地には落石防護網が設置されているが,剪定もされず育ったと思われるガクアジサイは,まるで大きな亀の甲羅のような形をしている。 落石防護網の網目は一辺が50mm程度の菱形。幹はどのくらいの太さなのだろう?葉の隙間から顔を突っ込み覗いてみて驚いた。太い幹は見当たらず,親指程度の細い幹が30本前後,思い思いの網目から顔を出し,それが大きな甲羅を形成していたのだ。毛利元就の三本の矢どころか,30数本集まれば怖いもの無し。ガクアジサイの逞しい生命力の秘密?をかいま見たような気がした。 |
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2023.6.8 |
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2023.6.6 |
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観音崎公園指定管理者:横浜緑地・西武造園グループ 「観音崎通信」2010年6月号から転載 |