タイワンリス
(台湾栗鼠)

ネズミ目  リス科
頭 胴 長 20〜22cm
尾  長 17〜20cm
体  重 360g


初 対 面
大 接 近 !
タイワンリスの被害
ホルトノキも被害!
クルミを食べるタイワンリス
ハゼの実を食べるタイワンリス
余  談
初対面
   
 観音崎公園・三軒家砲台跡前の園路を歩いていると,どこからか「キャンキャン,キャンキャン」と子犬のような鳴き声が聞こえてきた。鳴き声は砲台跡と反対側の林の中から聞こえてくる。

 絶え間なく鳴き続ける声を頼りに,声の主の居場所を耳と目で辿っていくと,30〜40m離れた場所の高い木の上で鳴いているらしい。子犬が木に登るはずはないし?鳥にしては聞き慣れない声だ。

 鳴き声のする辺りをしばらく眺めていると,なにやら丸いフサフサしたものが微かに動いているのが目に入った。リスだ!それもタイワンリスだ!丸いフサフサしたものはタイワンリス独特の大きな尻尾のようだ。なんとか全身を写真に撮りたいものと,あちこち園路を移動してみたが,太い枝が邪魔をして尻尾の他は見ることができない。

 タイワンリスのいる木に接近するには,高さ3〜4m,傾斜が60〜70度の崖を登らなければならない。意を決して,露出している木の根や低木等を手がかり足がかりになんとか崖をよじ登り,やや平坦な場所へ辿り着くことができたが,距離的には,まだ30〜40m離れている。 
2006.11.6
 タイワンリスに接近する為,抜き足差し足で歩き出すと,足下で枯れ枝がポキポキと音を立てた。この辺りは普段,人が立ち入らないためか,枯れ枝が積み重なり,歩くたびにそれが折れて大きな音を立てる。

 あまりに音が騒々しいので歩くのを止め,タイワンリスの様子を窺うと,音に驚いたのか鳴くのを止め,上半身を太い枝の上に現すのが見えた。私は急ぎデジカメを構えシャッターを押したが,私の存在に気づいたらしく,太い木の枝伝いにスルスルと移動を始めた。私は慌てて再びシャッターを押したが,タイワンリスの逃げ足?は早く,あっと言う間に私の視界から消えてしまった。
   
 
 帰宅後,パソコンに取り込んだ画像を見ると,10数枚撮った写真の内,タイワンリスの姿がまともに写っていたのは上の写真一枚だけだった。他はピンボケか姿が見当たらない写真ばかり,少々ガッカリしたが,一枚でもタイワンリスの存在を証明出来る写真が撮れたのは,大収穫と言えるかもしれない。 
大接近!
   
 横須賀美術館近くの森の中でタイワンリスに出会った。ご近所の方から,その辺りにリスが出没すると聞き出かけたのだが,いとも簡単に出会えたのには拍子抜けした。最初は15m位離れていたので,写真を撮りながら徐々に接近した。
2010.11.15
 
 10m位近づいたところでストップ。カメラを構えたまま身動きしないで立っていると,大きな尻尾のタイワンリスは,私の存在を知ってか知らずか辺りを動き回り,ついには,5〜6m近くまで接近してきたのには,こちらが驚いてしまった。辺りを見回すと,この他にも2匹ウロチョロしているのが見えた。

 タイワンリスを観音崎公園内で初めて見かけたのは4年前の2006年。それから最近までは,人間が近づくと子犬のような鳴き声の警戒音を発し素早く逃げ去り,写真を撮るのもままならなかったものだが,数も増え人慣れしてきたようだ。その姿や仕草はいかにも愛らしいが,観音崎の生態系に与える影響が憂慮される。
     
タイワンリスの被害
  
 戦没船員の碑前の園路を歩いていると,頭上でなにやらゴソゴソうごめく気配を感じた。見上げると,素早く逃げ去るタイワンリスの姿があった。そして,逃げ去った跡のタブノキの木の皮が無惨な状態になっているのが目に入った。

 近年,タイワンリスによる被害が増大していると目や耳にするが,その現場を目撃するのはこれが初めて。2006年に初めて出会ってから5年が経過。タイワンリスは確実にその数を増し,その姿をたびたび目撃,警戒音をしばしば耳にするようになったが,このような現場を見るのは初めてでいささか驚いた。

 5年前,初めて出会った頃は警戒心も強く,人前にほとんど姿を現さなかったが,徐々に大胆になり,最近は人目をあまり気にしなくなった。目と目があっても,直ぐには逃げようともせず,愛くるしい目でこちらを見つめていることすらある。可愛いものだと気を許しがちになるが,この現場を見ると,防除の必要性を痛感する。
2011.10.4
 
 
ホルトノキも被害!
  
 タイワンリスはその後ますますその数を増し,今では珍しい存在ではなくなった。被害はこれまでのところそれほど顕著ではなかったが,タブノキ等の食害が目立つようになってきた。たたら浜園地から戦没船員の碑へ通じる山道脇にある珍しい「なんじゃもんじゃ」(正式名:ホルトノキ)の大木には,痛々しいほどの傷跡が残されていた。このまま放置すれば,これらの木々が枯死する危険性があり対策が急がれる。
2013.3.17
クルミを食べるタイワンリス
     
 タイワンリスを初めて見かけてから12年が経過。今では公園内で大繁殖。見慣れた存在となり,見かけても写真を撮る気にもならなくなってしまっていた。ところがこの日,クルミの木の傍を通り過ぎようとすると,一匹のタイワンリスが木の下で特有の愛らしいポーズをして何かを食べている姿が目に入った。

 どうやらクルミの実をかじっているらしい。あの堅い実をどうやって食べるのだろうか?ユックリと近づき,更にカメラをズームアップしてみると,確かにクルミを食べようとしているようだ。食べる瞬間の写真を撮りたい!欲を出してさらに接近したところで私の気配を察したリスは慌ててクルミの木に飛びつき上へ上へとよじ登り,さらには隣りに生えていた桜の木に飛び移り姿を消してしまった。
2018.9.18
 
ハゼの実を食べるタイワンリス
            
 走水展望広場から浦賀水道を行き交う船を眺めていると,近くのハゼノキの上で小動物が動いているのにきづき,カメラでズームアップして見たところタイワンリスだった。ムクドリやヒヨドリがハゼの実を啄む姿は珍しくないが,タイワンリスが食べる姿を見るのは初めて。

 暫く一心不乱に食べていたが,やがて満腹になったのか食べるのを止め,ハゼの実を一房食いちぎり,口にくわえたまま何処かへ姿を消してしまった。子供か彼女?へのお土産なのだろうか?
2021.2.1
余  談
 
 タイワンリスはその名の通り台湾原産の帰化動物で,一見なかなか愛らしい姿をしている。「ようこそタイワンリスご一行様!」と横断幕で歓迎したいところだが,そうも言っていられない事情もある。鎌倉市周辺ではタイワンリスによる果樹類や電線の被害が,相当深刻な問題になっていると新聞で読んだ記憶がある。

 鎌倉市周辺で繁殖するに至った経緯としては,1935年(昭和10年)頃,伊豆大島の動物園から逃げ出したものが島内で大繁殖。その一部が1951年(昭和26年)頃,江ノ島植物園に連れてこられ,台風で小屋が壊れたため脱走。弁天橋を渡り,鎌倉市内で繁殖するようになったというのが定説となっている。

 観音崎で見かけたタイワンリスは,恐らく鎌倉市周辺で繁殖したものの一部が移住してきたと思われる。彼らは集団性が強く「キャンキャン,キャンキャン」と聞こえた鳴き声は,仲間に危険を知らせる警戒音だったようだ。従って,観音崎には複数のタイワンリスが移住してきていると考えられる。

 観音崎にはスダジイ,コナラ,アケビ,ヤブツバキ等,彼らの好物が豊富にあり,このまま放置すると鎌倉市周辺のように大繁殖して,深刻な被害が発生する危険性がある。タイワンリスによる被害の代表例としては下記のようなものがあり,観音崎周辺での被害拡大を防止するには,早急な対策が必要と思われる。

 1.電線や電話線がかじられ,時には電話が不通となった。
 2.庭のモモやユズ等の果樹を収穫前に食べられた。
 3.木の枝をかじり切ったり,木の表皮を剥がしたりした。
 4.住宅の天井裏に侵入した。
 5.その他

 タイワンリスのように見せ物やペットとして輸入され,逃げ出したものが野生化,周辺住民に被害を及ぼす例は多々あるが,アライグマやハクビシンも観音崎周辺で繁殖しつつあると聞く。人間の身勝手で輸入された彼らが,増えすぎて悪者や害獣扱いされるとは,彼らの方が被害者なのかもしれない。

 尚,アライグマ・タイワンリス・ハクビシンの被害によりお困りの場合は,横須賀市役所農林水産課の「アライグマ・ハクビシン・タイワンリスの被害にお困りの方」へアクセスすると,詳しい対処法が掲載されています。

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