観音崎に濃霧発生!

 バイクで走行中,鴨居港の交差点にさしかかり,港を見ると,まるでカーテンかスクリーンで遮られたように,目の前が真っ白になった。普段は間近に見える房総半島の鋸山や沖行く船は勿論,100m先にある防波堤や港入口の灯台すら,濃い霧に包まれて見ることができない。

 更に進んで観音崎大橋では,70〜80m先の道路は霧の中に消え,正面に見えるはずの観音崎自然博物館の姿は影も形もない。箱根辺りでは珍しくもない濃霧だが,観音崎周辺でこれほどの規模の濃霧発生を見た記憶がない。……写真下の数字は撮影時刻
2008.7.5

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 たたら浜入口階段付近から浜辺を見ると,十数人の人々が海水浴をしていた。濃霧に霞んで,ボンヤリとまるで夢でも見ているような光景だ。博物館も微かにその姿を確認できるが,手前,木道のベンチに佇む人々の姿と共に,幻想的な雰囲気が漂っている。

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 濃霧の凄さに圧倒されながらも更に進み。観音崎隧道(トンネル)を抜けた途端,急に視界が開けた。濃霧が発生していない!横須賀美術館近くの船着き場から横浜付近を眺めると,ランドマークやベイブリッジの姿は霧に霞んでいるものの,水平線がクッキリと見える。

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 同じ船着き場から観音崎を眺めると,東京湾海上交通センターの管制塔がはっきりと見える。たたら浜から船着き場までバイクで5分足らず。何故,これほどの差が生じてしまうのだろう? 

 観音崎の尾根は南西から北東にかけて走っている。標高は40〜60m,一番高いところでも74m足らずの小さな岬。それにも関わらず観音崎の風と波のページでご紹介したように,尾根の南と北で海の様相が激変することがある。これもその類と思われる。 

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 そう思ったのも束の間,その尾根を乗り越えて煙のようなものが漂ってくるのが見えた。濃霧だ!風はほとんど感じられないのに,ものすごいスピードで,霧が尾根を乗り越えてくる。まるで霧将軍?が采配でも振っているかのような凄まじさで,観音崎園地へ攻め込んでくるように見える。船着き場について僅か5分足らず,あっと言う間に東京湾海上交通センターの管制塔も濃霧に呑み込まれてしまった。磯で釣りを楽しんでいた人たちも,それを呆然と眺めていた。

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余     談
  
 翌日,読売新聞朝刊に濃霧に関する記事が二つ載っていた。

 「沿岸に濃霧」
 略…横浜地方気象台によると,南から湿った空気が入り,海上で霧が発生。神奈川県内沿岸部は5日,濃霧注意報が出され,6日早朝まで濃霧が続くという。

 「浦賀水道 船衝突相次ぐ」
 5日午後3時15分ごろ,神奈川県横須賀市の観音埼灯台沖約3キロで,貨物船と同市の遊漁船が衝突…略。午後5時15分ごろには,約1.5キロ離れた海域で貨物船同士が衝突した。…略。一方,5日午後4時20分ごろ,貨物船同士の衝突現場近くで,別の貨物船から,「プレジャーボートと衝突したようだ」と第三管区海上保安本部に無線連絡があった。…略

 3ヶ所の現場はいずれも,船舶が頻繁に行き交う浦賀水道航路内。横浜地方気象台などによると,当時,濃霧注意報が出されており,視界は100m程度だったという。

 3件の船衝突事故は,幸いにして沈没の危険もなく,死者・不明者もなく,大事に至らなかったようだが,浦賀水道の日頃の混雑ぶり,濃霧の凄まじさを考え合わせると,良くこの程度の事故で済んだものと身震いがする。

 先般,海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突。漁船の乗組員2人の行方がいまだに判らないという痛ましい事故が発生したが,3件の船衝突事故の記事を見ると,この教訓が生かされていない気がする。

 レーダーが発達した現在,濃霧の中でも船同士お互いの位置を確認できるが,貨物船やタンカー等の大型船は,小型船をレーダーで認識したとしても,直ちに進路を変えることはできない。濃霧注意報の最中,何故,遊漁船やプレジャーボートが浦賀水道にいるのか?自殺行為と言っても過言ではない。危険を回避する為,ボーボーと頻繁に鳴り響く霧笛の音が,まるで悲鳴のように聞こえた。

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