ナガサキアゲハ
(長崎揚羽蝶)
チョウ目 | アゲハチョウ科 | |
前ばね長さ | : | 60〜70mm |
見られる時期 | : | 5〜10月 |
ナガサキアゲハ♀
最初の出会い? |
クロアゲハでした! |
尾状突起 |
本物発見! |
優雅なメス |
観音崎で繁殖! |
我が家の柑橘類に産卵! |
路上で吸水するオス |
幼虫〜蛹〜羽化 |
福島で発見! |
寒さに耐える? |
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2003.6.29 ムラサキツバメを発見,それを掲載するにあたりいろいろ調べている過程で,ムラサキツバメのように分布地が北上しているチョウの代表例として,ナガサキアゲハの存在を知った。クロアゲハやジャコウアゲハに似ているが,尾状突起がないのが特徴のようだ。このサイトを開設する1年半前まで,私は黒いアゲハチョウは全てカラスアゲハと思っていただけに,それからは,尾状突起の有無を注意深く観察することにした。 ひょっとすると,私がこれまで気がつかなかっただけで,観音崎にもナガサキアゲハはいるのでは?との疑問から,ムラサキツバメを発見した翌日,山野草の写真を撮りながら,ヒメヒオウギズイセンの群生地へ出かけてみると,満開の花の上を黒いチョウが飛んでいた。 その黒いチョウは一ヶ所に止まることを知らず,花から花へと吸蜜,せわしなく飛び回りユックリと観察ができないが,気のせいか尾状突起がないように思えた。私のカメラは望遠・接写等万能のデジカメであるが,シャッタースピードが遅いのが難。そのため,野鳥や昆虫の動きの素早いものは苦手であるが,”下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”で10〜20枚も撮ると,まぐれで素晴らしい写真が撮れることもある。 今回も大半の写真が使い物にならなかったが,幸運にも一枚だけ鮮明に撮れている写真があり,そこに写っている黒いアゲハチョウには尾状突起が無く,模様から判断するとナガサキアゲハと思われた。あまりにも簡単に目的を果たせたため,いささか拍子抜けしたが,これは私の運が良いと言うよりも,観音崎にナガサキアゲハが数多く定着している証?なのかもしれない。 ナガサキアゲハの幼虫の食樹はミカンやユズの柑橘類で,観音崎・ふれあいの森に新しくできた”果実の森”には,これらの若木がたくさん植栽されている。ムラサキツバメ同様,今後ますます繁殖することが考えられる。 |
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(注)右側クロアゲハの写真は輝(かがやき)さんのHP「大阪市とその周辺の蝶」のクロアゲハのページから転載させて頂きました。 |
博物館研究員のお話によれば,クロアゲハの中にも稀に無尾のものがあったり,逆にナガサキアゲハの中に有尾のものもあるとか。私が考えるほど単純な世界ではないらしい。その話をお聞きして,4年前,神奈川県立生命の星・地球博物館で見たナガサキアゲハ(雌)の標本をを思い出した。変異の多い種のようで,有尾のものや別種か?と思われるようなものも展示されていた。 |
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ナガサキアゲハの特徴はモンキアゲハ,クロアゲハ,ジャコウアゲハ,カラスアゲハ等の黒いアゲハチョウにある「後ろバネの尾状突起が無い」ことで,この点に注意すれば見分けることができる。しかしながら,稀に尾状突起のあるナガサキアゲハや,尾状突起のないモンキアゲハ,クロアゲハ,ジャコウアゲハ,カラスアゲハ等も存在するので,同定には後ろ羽根の模様等も確認する必要があるようだ。 | |
モンキアゲハ 2005.9.4 |
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ナガサキアゲハ擬(もどき)のクロアゲハを発見した場所と直線距離で500m以上離れた森の中で,ヒメヒオウギズイセンの花を吸蜜しているナガサキアゲハに出会った。羽の模様がナガサキアゲハのメスの特徴を鮮明に表している。 | |
2003.7.9 | |
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観音埼灯台の入口付近で,ヤブカラシの花を吸蜜するナガサキアゲハのメスを見かけた。花から花へヒラリヒラリと飛ぶ姿はなんとも優雅で美しい。私が近づきカメラを構えても私のことなど眼中に入らないのか,吸蜜に夢中だった。 | |
2003.9.17 | |
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梅雨の中休みで晴れ間の広がった昼下がり,蒸し暑い中を観音崎へ出かけた。私は雨が降るか特別な事情でもない限り,観音崎を1〜2時間程度散歩するのが日課であるが,あまりの暑さのためか行き交う人も少なく,些かうんざりしかけたところへ,突然一匹の黒いアゲハチョウが姿を現した。 ナガサキアゲハのメスである。まだ羽化して間もないようで,羽根の色も瑞々しく,飛び方も何処かぎこちない。私を恐れる気配もなく,しばらく飛んでは木の葉に留まり羽を休める。お陰で私はいろいろな角度から彼女の美しい姿態を写真に納めることができ,暑さも何処かへ吹き飛んでしまったから現金なものだ。 私がナガサキアゲハに出会ったのは2003.7.9が最初であるが,以来10月末くらいまでその姿を観音崎に限らず,自宅周辺でも頻繁に見かけることになった。ナガサキアゲハはもともと南国のチョウであるが,地球温暖化の影響か?年々その生息域を北上させているようで,観音崎及びその周辺地域でも相当数が生息していると思われる。 |
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2004.6.28 | |
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なにげなく庭へ出ると,1頭のアゲハチョウが産卵行動をしていた。猫の額ほどの我が家の庭に所狭しと植えられた柑橘類,ミカン・ユズ・レモンの葉に卵を産みつけている。良く見るとナガサキアゲハのメスで,危険分散のためか1ヶ所に1ヶの割合で,次から次へとせわしなく飛び回り産卵している。 私はあわてて部屋に戻り,カメラを構えてその様子を写真に撮ろうとしたが,私の気配を察したか3枚写真を撮ったところで何処かへ姿を消してしまった。彼女が飛び去った後,卵を探してみたが,老眼には無理なようで1ヶも見つけることができなかった。運良く卵がふ化して幼虫からサナギになったら?その成長過程を記録してみたいと思う。 (後日談) その後,幼虫が出現するのを楽しみにしていたが,残念ながら,孵化した形跡は見られなかった。 |
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2005.8.1 | |
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小雨がぱらつく中,外出先から車で帰ると,車庫の7〜8m先の路上で黒いアゲハチョウが舞っていた。尾状突起が無い!ナガサキアゲハのオスだ!何事が起こったかと呆れる妻に車庫入れを任せ,デジカメを取りにあたふたと家へ駆け込んだ。 今年は何故か?ナガサキアゲハの発生が遅れていた。昨年末の厳しい寒波の影響で,成虫やサナギが死滅してしまったのだろうか?心配していた矢先の三日前,今年初めて観音崎でそれらしき姿を見かけた。以来,四日連続,毎日一頭ずつ,ナガサキアゲハのオスに出会ったことになるが,これまではほんの瞬間的な出会いで,写真に撮ることができなかった。 ところがこの日のナガサキアゲハは,余程ノドでも渇いているのか,路上に落ちた僅かな雨水を求めて,必死に吸水している。その為か警戒心も若干薄いようで,いろいろな角度から撮影することができた。 四日連続出会ったこれらのナガサキアゲハが,観音崎で越冬したものか,今夏,新たに北上してきたものかの判別はできないが,今年も観音崎でナガサキアゲハを観察できることは間違いなさそうだ。 |
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2006.7.17 | |
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2009.9.17埼玉県さいたま市緑区にお住まいの“じゅげむ”さんから,掲示板に次のような書き込みをいただいた。 [コメント] : 季節は秋になりすっかりしのぎ易くなりました。曼珠沙華の花がきれいです。先日自宅の庭で草むしりをしていたら、柚子の木に見慣れない幼虫を見つけました。普通クロアゲハは茶色ストライブですけど、この幼虫は白ストライブです。『もしかして?』と思い調べた所ナガサキアゲハの幼虫でした。私が成虫を初めて見たのは去年の事でこの掲示板に報告しました。今年になってかなり頻繁に成虫を見かけるようになりました。でもまさか自宅の木に卵を産み付けるとは。 北上中のナガサキアゲハの生体が確認されたのは,現在,栃木県南部が北限と聞いている。幼虫を確認されたとすると,じゅげむさんがお住まいのさいたま市緑区あたりが,幼虫確認の北限かもしれない。私自身は2005.8.1ナガサキアゲハの産卵を見かけたものの,孵化を確認することはできなかった。「ぜひ,観察を続けて,写真を撮って下さい。成長過程を記録して,本サイトに投稿頂ければ幸いです。」とお願いした。 それから7ヶ月余が経過。 2010.5.7再び“じゅげむ”さんから,次のような書き込みをいただいた。 [コメント] : 五月に入り急に暑くなりました。虫達も動き出した様で、越冬中だったナガサキアゲハも2頭、無事に羽化して初夏の空に飛び去って行きました。一応簡単ではありますが様子を写真に記録してあります。メールをお送りしましょうか。 早速,メール添付で写真の送信と,本サイトへの掲載をお願いしたところ,いずれも快諾いただき本サイトへの掲載が実現した。因みに,「ナガサキアゲハの幼虫」をキーワードにウェブ検索したところ,幼虫の発見例は大半が関東以西,一部が関東の神奈川・千葉・埼玉,関東以北のものは見当たらなかった。 |
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4齢幼虫(長さ35mm位) 2009.9.15 |
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終齢幼虫(長さ50mm位) 2009.9.21 |
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前蛹 2009.9.26 |
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蛹 2009.9.29 |
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早朝に羽化成虫の下部に脱け殻 2010.5.6 |
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2010.5.6 |
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2010.9.25読売新聞・朝刊に「ナガサキアゲハ福島で発見!」の記事が載っていた。それによれば,福島県いわき市の写真愛好家が同市内の山間部で,ナガサキアゲハのオスの撮影に成功したとあった。ここ数年は茨城県・栃木県辺りが北限とされてきたので,更に北上したことになる。今年は記録的な猛暑が続いていたので,その影響かと思われるが,何処まで北上を続けるのだろうか? | |
2010.9.25読売新聞・朝刊37面から転載 |
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台風一過,猛暑から一転して冬のような寒さとなった観音崎公園内を散策していると,頭上2mほどの高さにあるムラサキシキブの葉の上に,ナガサキアゲハのメスを見つけた。寒さを必死にこらえているのか,死んだように動かない。 昨日まで半袖で過ごしていた私は,厚手の長袖に着替え,その上にチョッキまで着込んで出かけたのでそれほど寒さを感じなかったが,南国の蝶にはよほど寒さが応えているようだ。1分,2分,3分,そして5分が過ぎても微動だにしなかった。 |
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2010.9.24 | |