ジョロウグモ
(女郎蜘蛛)

クモ目 アシナガグモ科
体長:♀15〜30mm
    ♂ 6〜13mm
見られる時期:9〜12
 
 秋,観音崎公園を歩くと,ジョロウグモの巣がやたら目につくようになる。直径が50cm位ある大きな巣の真ん中に,ジョロウグモのメスがでんと居座っている姿は少々不気味ですらある。

 ジョロウグモは漢字で「女郎蜘蛛」と書き,私はその姿から,遊女の女郎を連想してつけた名前と早合点していたが,念のため名前の由来を調べてみると意外なことが判明した。古人はジョロウグモの姿を雅やかで艶やかと感じ,当時の身分の高い女官の上臈(ジョウロウ)になぞらえ名づけたという。

 因みに講談社の「日本語大辞典」で「上臈」を引いてみると「@年功を積んだ高僧 A身分の高い人,上流の人 B身分の高い女官,上臈女房 C江戸幕府の大奥の職名 D身分の高い婦人,貴婦人」とあり,いずれをとっても大変なほめ言葉で,古人はジョロウグモの姿を愛し,高く評価していたことになる。その上臈(ジョウロウ)が何時?何故?女郎(ジョロウ)に身を落としてしまったのか,残念ながら,そこまで解説してくれる文献やサイトを見つけることができなかった。

 冬が近づくと,産卵を控えたジョロウグモのメスは,腹部の模様や色合いが鮮やかになり,ますます大きく逞しく?なったように見える。その腹部を拡大してみると,まるで刺青か,歌舞伎役者の隈取りのように,どこか怪しげな美しさがある。
2006.10.29
 
 
 
 
 産卵直前のメスは上の写真のように丸々と太っているが,妊娠前?産卵後はスリムで別種のように見える。
 

2009.10.27
 

2009.10.27
ノミの夫婦?
 
 秋,ジョロウグモの大きな巣をじっくり眺めると,巣の中に小さなクモが同居していることが多い。大きなメスの1/3足らずのサイズで,それがジョロウグモのオスだが,どう見ても居候である。その居候も当然のことながら種を残すためには不可欠な存在であるが,正面から求愛するとメスに食われてしまう恐れがあるため,メスの背後から交尾の機会を窺っているという。子孫を残すのも命がけの作業である。夫より妻のほうが大柄な夫婦を「蚤の夫婦」に例えられるが,ジョロウグモ夫婦の場合は大人と子ども以上の差があるから驚きである。
2005.9.16
 

♂♀  2005.9.16
 

♂  2010.8.30
縄張争い?
    
 観音崎公園の通称「皇室の道」と呼ばれる緩やかな坂道を歩いていると,崖の崩落防止用フェンスの傍で,二匹のジョロウグモが細い糸の上でにらみ合っていた。どうやら縄張り争いならぬ糸張り争い?のようだ。二匹ともメスだが,秋の頃のどこか凄みのある姿に比べると,まだ幼くあどけない感じがする。 ジョロウグモ同士のケンカなどはこれまでお目にかかったこともない珍しい光景なので,興味津々,しばらく高見の見物をさせて貰うことにした。
2006.5.29
 
 
 
 しばらく相撲の仕切りよろしくにらみ合っていた二匹のジョロウグモは,制限時間が一杯になったのか,どちらからともなく歩み寄った。最近の大相撲のような「待った!」の乱発はなさそうだ。長い手を伸ばして,お互いにちょっかいを出し合っている。品のない張り手の類はジョロウグモの世界では禁じ手なのか,長い手を緩やかに上品に振り回しながら,徐々に接近していく。
 
やがて急接近した二匹のジョロウグモは,細い糸の上でがっぷりと組み合った。決まり手は「寄り切り?」「出し投げ?」「網打ち?」等々,野次馬気分で眺めていたが,突然動きが止まってしまった。良く見るとお互いの口が噛み合ったような状態になっている。待つこと数分,全く動かなくなってしまった。水入り後の取り直しとしたいところだが,ジョロウグモのしきたりを知らない私が手を出すわけにもいかず,しびれを切らしてその場を後にした。
 
 
獲物はミンミンゼミ!
 
 観音崎青少年の村から戦没船員の碑へ通じる山道を歩いていると,ジョロウグモの巣にミンミンゼミがかかって,羽をバタバタさせているのに出会った。まだかかったばかりのようで,ミンミンゼミが必死にもがいているのを,巣の主と思われるジョロウグモのメスが,20cmほど離れてその様子を窺っている。

 以前の私であれば,迷うことなくクモの巣からセミを解き放してやり,良いことをした気分に浸っていたと思うが,最近は余計なことをするのを止めた。自然の成り行きに任せることにして,その様子を写真に撮ることにした。 
2006.9.16
 
 数枚の写真を撮ったところへ,犬を連れて散歩中のお年寄りが通りかかり,被写体が目に入らないのか「何を撮っているのですか?」と声をかけてきた。私はジョロウグモの巣を指さし,そこにミンミンゼミがかかって,これからどうなるのか写真に撮るつもりです。」と答えると「はあ〜そうですか」となんとも呆れたような生返事をしながら通り過ぎていった。

 セミは相変わらず羽を震わせ暴れているが,数分の間にだいぶ弱ったようだ。時々,動きを止めるようになってきた。すると様子を窺っていたクモが,突然,セミに襲いかかり,バタバタさせている羽の根元あたりに噛みついた。ジョロウグモのメスは春に見た頃に比べ,体も大きくなり逞しくなっているが,それでも体はセミの方がだいぶ大きい。把瑠都と豊ノ島が相撲を取っているくらいの違いがある。 
 
 敢然とセミに襲いかかったジョロウグモのメスは,セミの羽の動きが弱まると,腹部の先にある糸いぼから糸を出し,それを後ろ脚?で巧みにセミの体に巻きつけていく。まるで銭形平次が犯人をお縄にするような鮮やかなお手並み?で,ほんの数分でセミを糸でグルグル巻きにしてしまった。

 その間,メスより小さなジョロウグモのオスは,30〜40cm離れた場所からメスの活躍振りを眺めているだけで,手伝う気配は一向に感じられなかった。秋も深まり冬が近づく頃,ジョロウグモは産卵するが,このセミはジョロウグモのメスの貴重な栄養源になり,オスも多少はおこぼれを頂戴することになると思われる。
 
 
 
 別の日,コクワガタのオスがジョロウグモの巣にかかっているのを見かけた。コクワガタもまだ生きていて手足をモゾモゾ動かしていたが,全身を糸でグルグル巻きにされているので,逃げ出すことは不可能と思われる。巣の主は狩りを終え,木陰で昼寝でもしているのか姿が見えなかった。
 
 
 
空からジョロウグモ!
 
 我が家の玄関のドアーを開け,晴れ渡った青空を見上げた途端,空からジョロウグモが降ってきた。と思ったのは目の錯覚,たまたま光線の関係で,クモの糸が全く見えない珍現象のお陰だった。秋の深まりと共に,ジョロウグモの巣が目立つようになるが,このような光景に出会うのは初めてだ。
2007.10.8
 
セアカゴケグモ
 
 一週間ほど前,関東地方の某県保健所から,ジョロウグモをセアカゴケグモと間違って通報してくることが多いので,広報用のチラシを作成するに当たって,本ページに掲載してあるジョロウグモの写真を使用させて欲しいとメールがあった。

 セアカゴケグモは特定外来生物に指定されている毒グモで,素手で触ってかまれると,かまれた部分が腫れて赤くなったり,痛みが全身に広がる場合もあり,悪化すると多量の汗をかいたり,寒気・吐き気などが現れることもあるという。

 日本では,1995年11月大阪府高石市で最初に発見され,以降日本各地に分布域を広げ,2014年11月時点で37都府県で確認されている。神奈川県内では2012年に川崎市内と大和市内,2013年に川崎市内,そして2014年に厚木市内で確認されているが,横須賀市内ではこれまでのところ確認されていない。

 メールで送られてきたチラシを拝見したところ,セアカゴケグモはジョロウグモのメスに比べて体長も小さく,斑文もだいぶ異なっている。直ぐ見分けがつくと思われるので,万一発見された場合は,最寄りの保健所へご通報頂きたい。

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