アシタバ
(明日葉)



セリ科  多年草
草丈:50〜120cm

 走水神社近くの民家の庭先でアシタバの花を見かけた。もう花の季節かと思いながら,妙なことに気づいた。天気が良いと,ほとんど毎日のように観音崎を歩いていながら,この秋,アシタバの花を見たのはこの日が初めてであった。
2004.9.21
 
 帰途,観音崎の海岸部を歩いてみたが,アシタバの花どころか,アシタバそのものがほとんど見当たらない。たまに見かけても花をつけるほど生長していない。

 観音崎自然博物館の芝生広場の周辺にアシタバが保護・増殖されているのを思い出し,念のため立ち寄ってみると,民家の庭先のアシタバと同じように白い花を咲かせていた。2〜3年くらい前までは,観音崎周辺でも結構花が見られたのに,何故消えてしまったのか?

 アシタバは漢字で明日葉と書き,今日,葉を摘んでも明日にはまた葉が生えてくるというのでこの名前がついたと言われるように,非常に生命力の強い植物である。それが何故?

 アシタバの原産地は八丈島と言われるが,20数年前,我が家でこんな出来事があった。
 妹夫婦が八丈島へ観光に出かけ,土産の一つにアシタバを持ってきてくれた。アシタバは”医者知らず”といわれるほど健康に良い野草で,天ぷらやお浸しで食べると美味な上に,万能薬的効能があると言う。

 私はそれを感謝して受け取ったまでは良かったが,食事後,うかつにも観音崎を案内してしまった。そこでアシタバがあちこちに生えているのを妹が見つけ,「観音崎にもアシタバが随分たくさん生えているのね!」と,ガッカリしたような顔で言われ,少々気まずい思いをした。


 それほど多かったアシタバがまるで蒸発でもしたように,ほぼ消滅状態にあることを知り愕然としたが,その原因・理由は明白である。実は私もフィールドレンジャーになる前までは,春になると山菜採りの感覚でアシタバの新芽を摘んでいたので,あまり偉そうなことは言えないが,多くの人々が入れ替わり立ち替わり新芽を摘んでしまうため,アシタバは生長できずに枯れてしまうのである。

 春先の一番芽・二番芽,せいぜい三番芽までを摘み取る分にはこのようなことにならないと思うが,アシタバの新芽と見れば季節に関係なく摘み取る人を見かける。夏も終わったつい先日も,海岸部の少々危険な崖地の草むらから出てきた人の手に,数本のアシタバの新芽を見かけた。

 アシタバは種子でも繁殖するので,保護・増殖すれば復元することは比較的容易と思われるが,いくら復元しても,際限なく摘み取る人がいるかぎりイタチごっこである。観音崎は自然豊かな公園であるが,その自然は個人のものではなく,共有財産であることを一人一人が肝に銘じる必要があると痛感する。
 
 
種  子
   

2006.10.31
 
新  芽
   
 観音崎公園・噴水広場の片隅で,アシタバの新芽を見つけた。早春の陽差しをスポットライトのように浴び,黄緑色に輝く新芽はいかにも瑞々しい。摘み取ってお浸しか天ぷらにしたら美味しいだろうな!と不埒なことを考えながらも,なんとか思いとどまり,その場を後にした。
2007.2.16
 

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