丑年にちなんで
「牛あれこれ」

 令和3年,西暦2021年は十二支の「丑」。「丑」は「うし,ちゅう」と読む。十二支には12種の動物「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」が当てはめられているが,いずれも何らかの理由で人間に身近な存在の動物たち。十二支に割り振られている動物の順番については子(鼠)年の昨年記したが,2位となったウシは相当悔しい思いをしたに違いない。

 新年早々,2位で相当悔しい思いをした大学が現れた。箱根駅伝で2位になった創価大学だ。2日の往路では誰もが予想しなかった優勝。3日の復路でも9区まで先頭に立ち2位に3分19秒の大差。私のみならず誰もが創価大学の優勝を確信した筈だ。ところが,創価大学10区の最終走者が大ブレーキ。残り2.1キロで駒沢大学が大逆転。創価大学は2位に沈んでしまった。監督・選手・関係者のショックは計り知れないものがあると思われる。「事実は小説よりも奇なり」とはこのようなことを言うのだろう。

 10年ほど前,事業仕分とやらでスパコンの開発について威丈高に「世界2位じゃ駄目なんですか?」と言い放った女性国会議員がいたが,2位ほど悔しいものは無い。ところが,悔しい思いをしたはずのウシは,ネズミに騙されて十二支に入れなかったネコのように,ネズミを目の敵にして追い回すような事をしていない。ウシはいっけん鈍重に見え,愚鈍・愚直に思える。牛にまつわる故事・ことわざの類には「牛の歩み」「牛の涎(よだれ)」等,なかなか含蓄のあるものが多い。


久里浜天神社
破 魔 矢
絵  馬
土  鈴
動  物
植  物
お年玉切手シート
「うし」の大看板
我が家のグッズ
<余談-1>牛にまつわる故事・ことわざの類





久里浜天神社
  
 三浦半島で唯一の天神さま久里浜天神社(天満宮)は,イオン久里浜店が入っているビルの久里浜中央自動車学校出入口から道路を挟んでほぼ向い側に鎮座している。創建は万治3年(1660)で祭神は菅原道眞公(すがわらみちざねこう)・天照皇大~(まてらすおおみかみ)・素戔嗚尊(すさのおのみこと)。

 境内に入り真っ先に目につくのが,臥牛と呼ばれる座った牛に菅原道眞公が乗った大きなブロンズ製「牛乗り天神」像。菅原道眞は「学問の神様」として知られているのはご存知の通りだが,何故?牛に座っているのか,私は恥ずかしながらその理由を知らなかった上に,知ろうとしたことも無かった。

 そこで各地にある天満宮のサイトを調べてみたところ諸説紛々,10指に余る説があることがわかった。その中からそれらしき5説をご紹介したい。

@道眞公が生まれたのは承和12年(845)6月25日で,この年が丑年にあたるから。更には「丑年の丑の日の丑の刻」に生まれたという伝説的な話もあるがこれはいささか信じがたい。

A亡くなったのが延喜3年(903)2月25日の丑の日だから。

B道眞公の亡骸を載せた車を引いていた牛が,途中で突然座り込んで動かなくなってしまったので,その場所を墓所と定めた。そこが後の太宰府天満宮。このため天満宮にある牛はほとんどが「臥牛」である。

C政略で都から遠い九州へ左遷され,太宰府へ下られる途中で刺客に襲われた時,以前可愛がっていた牛が現れて,その刺客を追い払い助けてくれたから。

D道真公没後に下された「天満大自在天神」という神号からきているという説。「大自在天」は元々バラモン教の大本尊で,白い牛に跨がるとされているので,そこから結びつけられたと思われる。

願掛け撫で牛
絵  馬
 参拝後,絵馬掛け台へ行き,掛けられた絵馬の絵柄を確認したところ,絵馬の全てが菅原道眞公か臥牛であった。私が天神社を訪れたのは2020年12月,道眞公は兎も角,子年(鼠年)にもかかわらず「ねずみ」の絵馬は一つも掛けられていなかった。どうやら午年(馬年)でも「絵馬」ならぬ「絵牛」なのだろう。
    





破魔矢
 

西叶神社・説明板
   

鴨居八幡神社・破魔矢
   





絵  馬
 

西叶神社・説明板
 

2021年(令和3年) 鴨居八幡神社
  

2021年(令和3年) 西叶神社

2021年(令和3年) 東叶神社





土  鈴
 
 旅行へ出かけた時,神社仏閣や土産物店で土鈴が置いてあることが多い。我が家では地元の鴨居八幡神社へ初詣で出かけた時や,観光旅行先等で土鈴を買ってくるのが習慣になっている。ここではこれ迄に買い求めたウシの土鈴をいくつかご紹介したい。
 

西叶神社・説明板
  

2021年(令和3年) 鴨居八幡神社

2021年(令和3年) 西叶神社

2021年(令和3年) 西叶神社

2009年(平成21年) 鴨居八幡神社

2008年(平成20年) 川崎大師参道のお土産店

1997年(平成9年) 鴨居八幡神社

1985年(昭和60年) 鴨居八幡神社

不明





動  物


 
ウシ(牛)
  
 丑年に因んで生きた牛の写真が欲しいと思ったが,残念ながら私の手元には一枚の写真も無い。その上,観音崎や浦賀周辺で牛を飼っている農家も思いあたらない。私がこの地へ引っ越してきた50年ほど前には,藁葺き屋根の家も数軒あり,牛小屋も見かけたものだが,いずれもいつの間にか姿を消してしまった。

 横浜の野毛山動物園へ行けば簡単だが,せめて横須賀市内の牛にこだわりたい。あれこれ記憶の糸を辿って思い出したのが,葉山近くの小さな牧場。ネットで「横須賀市内の牧場」をキーワードに検索したところ「関口牧場」の名前が浮上した。住所は横須賀市長坂とあるが,我が家からは車で約40〜50分ほどの場所。

 早速,バイクで出かけようと思ったが距離的に少し遠いので,昼食に佐島漁港近くの磯料理をエサに家内の運転する車で行くことにした。Googleマップで調べたところ以前数回通った事のある場所だったので迷うこと無く到着。

 さほど大きくない牛舎には30頭前後の牛が飼われているようだ。たまたま近くに居合わせた若い牧童さんに「牛の写真を撮っても良いですか?」と許可を求めたところ。あまり接近しないよう道路際からの撮影を条件にお許しを得た。

 牛たちはカメラを構える私に驚いたり怯えたりすることなく,かといって愛想笑いも見せず普段通り?淡々としている。10数枚の写真を撮り撮影はあっけなく終了。その後,牛舎近くにある牧場の売店で330円也のソフトクリームを買ったが,そのボリュームの多さと濃厚な味には家内も私も納得した。 
 
 

ホルスタイン種  2020.12.10
  

ジャージー種   2020.12.10



 
ウミウシ
(海牛)
 
 ウミウシは巻貝の仲間。学問的には軟体動物門の腹足綱(巻貝類)に属する裸鰓(らさい)類のグループなので歴とした貝の仲間。尚,裸鰓類とは鰓(エラ)が心臓の後部にあることからそう呼ばれている。しかし,幼生の頃には貝殻を付けているものの,その後はほとんどの種類で貝殻が縮小・体内に埋没・消失している点で特殊なものといえる。名前は頭部にある一対の触角が牛の角のように見えることに由来する。
 
観音崎の代表的なウミウシ
  

アオウミウシ

オトメウミウシ

コモンウミウシ 産卵中
 




カタツムリ
(蝸牛)
 
 カタツムリはウミウシと同じ軟体動物門の腹足綱に属する,陸に生息する巻貝を指す通称で,学術的には「マイマイ」が正式名称。カタツムリは漢字で「蝸牛」と表記し,「かぎゅう」や「でんでんむし」とも読む。漢字は渦を巻いた殻,牛のような角を持っていることに由来する。
 
観音崎の代表的なカタツムリ

ニッポンマイマイ
 

ミスジマイマイ

ヒダリマキマイマイ



カミキリムシ
(髪切虫・天牛)
 
 カミキリムシの漢字表記の一つ「天牛」は中国語に由来し,長い触覚を牛の角になぞらえたものである。「天牛」は日本由来の読み方では「カミキリムシ」と読むが,中国由来の読み方では「テンギュウ」と読む。
 
観音崎の代表的なカミキリムシ

ゴマダラカミキリ
 

ホシベニカミキリ

ノコギリカミキリ



ウシアブ
(牛虻)
 
 普段見かけるハエの一回り,二回りほど大きなアブで,雌は主に家畜を吸血するが,人間も吸血することもある。雄は花や樹液を吸密する。雌雄で食性が異なるのは珍しい? 名前の由来は定かでは無いが,私の推測では「牛の血を好むから?」「体型が牛のようにごつい感じがするから?」

2008.9.24
 





植  物


 
ウシハコベ
(牛繁縷)
名前の由来:ハコベに比べて全体に大きいため
牛に例えて
 
ナデシコ科 越年〜多年草
草丈:20〜50cm
 

2007.4.24

2007.4.24
 

2007.4.24



 
カマツカ
(鎌柄)
別名:ウシコロシ(牛殺し)
この木で牛の鼻木を作ったから等諸説有り
 
バラ科 落葉低木
樹高:5〜7m

2011.4.30
 

2011.4.30
 

2005.11.1

2005.11.1



 
ミゾソバ
(溝蕎麦)
別名:ウシノヒタイ(牛の額)
葉の形が牛の額に見えることから
 
タデ科  一年草
草丈:30〜70cm
 

2020.10.22
 

2017.10.6
 
シロバナミゾソバ
 

2019.10.30
 



ヨウシュヤマゴボウ
(洋種山牛蒡)
別名:アメリカヤマゴボウ(亜米利加山牛蒡)
 ヤマゴボウ(山牛蒡)は日本に古くから自生。食用にもされていて根がゴボウに似ているのでこの名がつけられた。ヨウシュヤマゴボウは根がヤマゴボウに似ていて,海外から渡来したことからヨウシュ(洋種)と名づけられたが,全草に毒がある有毒植物。

 尚,ゴボウは,古く薬草として中国から伝来したもので,漢語の「牛蒡」が語源。「牛蒡」の「牛」を「ゴ」と読むのは,呉音「グ」の慣用音「ゴ」で,中国では草木の大きなものに「牛」が冠される。「牛蒡」の「蒡」は,ゴボウに似た草の名に使われた漢字で,それらの植物より大きいことから「牛」が冠され「牛蒡」になった。・・・・・・「語源由来辞典」から要旨抜粋引用
ヤマゴボウ科  多年草
草丈 100〜200cm
帰化植物 北アメリカ原産
渡来時期 明治時代
 

2004.7.2
 

2006.7.26
 

2011.8.18
 

2012.10.24





お年玉切手シート
 
赤べこ
1961年(昭和36年)
 
作州牛
1985年(昭和60年)
 
闘牛/牛乗りこども
1997年(平成9年)
 
願かけ牛/寝牛乗り天神
2009年(平成21年)
 
大入り袋に鶴と亀
2021年(令和3年)
 





「うし」の大看板
 
 例年,西叶神社近くにある西源材木店の店頭には,商品の材木を並べて立てかけ,カラースプレーで絵と文字を書いたと思われる新年挨拶の大きな看板が飾られる。普通,店舗や施設の新年挨拶はA4かA3サイズの用紙が使用されているが,西源材木店のそれは,畳十畳くらいはある超特大サイズ。カラースプレーで一気に書き上げたと思われるが,毎年なかなか見事な出来映えで西叶神社へ初詣に訪れた人たちが,その前で代わる代わる記念写真を撮っている姿が微笑ましい。
   





我が家の「牛」グッズ
 
 「牛」に因んだ我が家のグッズを物色したが,掛け軸や置物はおろか土鈴以外何一つ無いことにいささかガッカリ。カバンや靴・ベルト・財布等,牛革製品らしきものはあるものの私も家内もブランド志向ゼロで,実用本位のため安価な人工皮革か合成皮革の製品ばかり。見つかったのは冷蔵庫の中の乳製品。牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・シチュークリーム,いずれも貴重な栄養源。毎日何らかの形で牛のお世話になっていることを再認識した。付録として洗面所で懐かしい牛乳石鹸を見つけた。最近は手洗い用として薬用泡ハンドソープを使うことが多くなったので,滅多に石鹸を使用しないが,気がつくといつの間にか使っていることもある。
  
乳製品
    
   





<余談-1> 牛にまつわる故事・ことわざの類
 
 牛にまつわる故事・ことわざ等の類は,辞典やサイトを検索してみると驚くほど数多くあるが,浅学な私にはあまり馴染みのないものも多い。そこでここでは私が知っていたものと比較的馴染みやすそうなものに限定してご紹介したい。尚,故事・ことわざの類の説明文は日本語大辞典から大半を引用。

 「牛」について日本語大辞典では次のように語釈している。
一般にはウシ科の家畜のウシをさす。ホルスタインなどの乳用種。ヘレフォードなどの肉用種。シンメンタールなどの乳肉兼用種,役用種に大別される。
 
牛に経文 どんなに説得しようとしても無駄なこと。
牛に引かれて善光寺参り 人に誘われて思いがけず,よい方へ導かれる。
牛の歩み 進み方のひどく遅いこと。
牛の角突合い 仲が悪く,何かにつけて争いあうこと。
牛の涎(よだれ) 細く長く続ける,又,続くこと。
牛は牛連れ,馬は馬連れ 似たもの同士が一緒になること。
牛を馬に乗り換える 都合のよい方に換えること。
牛耳る・牛耳を執る 盟主となって人や物事を思うままに左右する。
女賢しくて牛売り損なう 女は利口なようでも,目先にとらわれて,物事の全体を見失うものだ。
九牛の一毛 多数の中のごく一部分。問題にならないほどわずか。
草木も眠る丑三つ時 丑三つとは現在のおよそ午前2時頃で,真夜中の静けさのたとえ。
食って直ぐ寝ると牛になる 食べて直ぐ横になる行儀の悪さを戒める言葉。
暗がりから牛 物事の見さかいがつかないこと。動作が鈍いこと。
鶏口となるも牛後となるなかれ 大きなものに付き従うよりは,たとえ小さくても頭になれ。例えば,小さくとも社長のほうが,大会社の平社員よりましだ。
角を矯めて牛を殺す 欠点を直そうとして,かえって,その全体を駄目にする。

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