令和6年・観音崎カレンダー・2024
私の歳時記


俳句・情景 村岡茂夫
写真・編集 kamosuzu
 
 日本の自然は美しい。季節ごとに大きく変化する。春になれば山は笑い、夏になれば山は招く。秋になれば山は装い、冬になれば山は眠る。自然にはいろいろな顔がある。ある時はやさしく、ある時は厳しい。山野を歩く度に新しい発見があり、その美しさ・素晴らしさに人は感動する。

 
この自然との触れ合いの中で私達が感じたことを,「俳句・写真・情景文」でお伝えし、大方の共感を得たい。これが「私の歳時記」を始めた動機である。俳句・写真・情景文。それぞれ異なる表現形式。言わば、この三種類の楽器で自然賛美の曲を奏でたい。時に競い、時に和し、豊かなハーモニーが醸し出せれば幸いである。あせらず、ゆっくり、着実に、二人三脚で進めたい。

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2024 観音崎 カレンダー 目次
Month サムネイル 記       事
1月 January 「ゆらゆらと海を真直ぐ初日影」
海の見えない山側に住んでいると,ふだんはあまり海を意識しない。しかし,年改まり新年を告げる汽笛を耳にすると,海の近さを実感する。また,汽笛は何故かもののあわれを感じさせ,人を感傷の世界へ誘い込む。
2月 February 「老木と言はれて久し梅の花」
苔がついたり、虚
(うろ)があったりして,梅は見るからに老木という感じの木が多い。しかし,老木と言われても立派に花を咲かせている。「生きているとは花を咲かせることである」とでも言いたげである。
3月 March 「底冷えといひつつ重ねコップ酒
桜の咲く頃は春とは言え,まだ寒さが残っている。所謂花冷え。特に,夕方から夜にかけてのお花見は冷える。暖をとるためにコップ酒。「花冷え」「花冷え」と言い且つ頷きながら杯を重ねる。
4月 April 「白浜や花の濃淡浜大根」
観音崎の砂浜は概ね白色。浜大根の群落が目立つ。春になると。花が一斉に開く。観音崎特有の美しい海岸風景である。よく見ると,花には濃淡があり,必ずしも色は一定していない。
5月 May 「触れ合うて花の咲き満つ躑躅かな」
満開の躑躅。紅白の花が押し競饅頭(おしくらまんじゅう)。押し合いへし合い咲いている。目覚めるような色彩と花数が素晴らしい。しかし,躑躅の仲間には有毒なものが多い。因みに,漢名は躑躅
(てきちょく)(行っては止り行っては止ること。足踏みすることの意)。ツツジにこの字が使われるのは,家畜が誤って食べて躑躅して死んだからだと言う。
6月 June 「みどりより出でて紫陽花色あまた」
紫陽花(あじさい),花になるまでは緑色をしているが,咲くといろいろな色になる。DNAの記憶は確かである。不思議でもあり,素晴らしい。
7月 July 「翡翠の翔たねば我も立ち去らず」
翡翠(かわせみ)が水辺にいる。じっとしてなかなか動かない。私が動けば翡翠が飛び立つような気がする。久しぶりの翡翠との出会い。少しでも長く見ようとして私も立ち去ることも出来ない。しばらくは翡翠との我慢比べである。
8月 August 「夏雲や果てし海向く船員碑」
観音崎の山の上から白い石碑が遥か南の海を見下ろしている。太平洋戦争で亡くなった船員6万人の方々の慰霊碑である。時あたかも夏。戦没された南国を思わせるような白い雲が空に浮かんでいる。「御霊よ!安らかに!」と祈る一瞬である。
9月 September 「後ずさり燈台撮れり秋の雲」
観音埼灯台。高さ地上約19メートル。高い灯台を全部写真にいれるのはなかなか難しい。後ずさりしてやっと納める。空には白い秋の雲が広がっている。
10月 October 「高階の夜景はるかに虫の声」
高層マンションに住んで早六年。海の見える夜景が素晴らしい。ベランダに出ると遙か下の方から虫の声が聞こえてくる。
11月 November 「秋晴れや海高く見ゆ坂の上」
当然のことながら,海は陸より低い。
まして坂の上よりは遥かに低い。しかし,おかしなことに,坂の上に立つと海が高く見える。今日は秋晴れで沖までよく見える。
12月 December 「岩礁に海鵜動かず冬の海」
海鵜は長時間海に潜って魚を捕まえる。しかし,水に潜ることが得意なくせに,濡れることは嫌いなようだ。岩礁には漁を終えた海鵜の群が見える。羽を乾かしているのだろう。冬の岩礁海岸でよく見られる光景である。

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