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カ ッ パ ?
冬特有の澄んだ青空に誘われて,このところ熱中しているカワセミの写真を撮りに,観音崎ふれあいの森の池へ出かけた。池の近くからはカワセミを驚かさないようにユックリと歩を進め,カワセミ指定席の岩の上を見ると,いつものようにチョコンと留まっていた。 カワセミのより鮮明な写真を撮るために,せめて15〜20mのところまで近づきたいものと,抜き足差し足で忍び寄りながらふと水面を見ると,妙な生物が浮かんでいた。背中を上にして,冬の陽射しを浴びながら気持ち良さそうに浮かんでいるその姿は,漫画やアニメで見るカッパそっくりである。「河童の川流れ」とはこのような状態を言うのだろうか? ビックリしながらも写真に撮り,辺りを見回してみたが人っ子ひとりネコの子一匹いなかった。私とカワセミだけが目撃者のようである。私の位置からは頭の部分がはっきりしないため,恐る恐る前に回り込もうとしたところ,私の気配を察したカッパに似た生物は,水中へ姿を没してしまった。 |
目撃証人のカワセミ |
カッパのような生物の写真を見て,私は横須賀市自然・人文博物館の元館長 田邊 悟
氏の著書「観音崎物語」に紹介されている「カッパの恩返し<カッパ神様>」という走水のカッパ伝説を思い出した。 要約すると……… 「走水」の里は昔から水が豊かで,神社の裏山にあった清流は,どんな日照りが続いても涸れることなく,そこにカッパが暮らしていた。 ところが多くのカッパの中には「いたずら者」もおり,時々,里におりてきては,辻に干してある魚を食べたり,畑のキュウリを失敬したりと,いろいろ悪さをしたそうな。心の豊かな村人も,たびかさなるカッパのイタズラにこまりはて,いつかカッパ達をこらしめてやろうと思うようになった。 そんなある日のこと,突然に地鳴りがゴゥー……としたかと思うと,村中がユサ ユサ ユサと大きくゆれた。その時,村の長が「津波が来るぞ……。船をあげて,神社の裏山に逃げろ……」と大声でさけんだので,村中は大さわぎ。 これを聞いたカッパ達は,いつも村人達に迷惑をかけているのだから,「みんなで恩返しをしよう……」と相談した。カッパ達は,山の上から大きな岩をゴロゴロ押して浜まで運び。村の海岸に沿って大きな堤防をつくり,一匹のこらず水の中に入り,岩を押さえて津波から村を守ろうとした。そのおかげで,走水の村は津波の被害にあわずにすんだ。 ところが,その日の津波は,それまでにない大きなものだったため,カッパ達は一匹残らず津波の犠牲になってしまった。村人達は村を守ってくれたカッパに感謝し,村の守り神になってもらおうと思うようになり,いつ,だれが祀ったのかわからないが,神社の楠の木の根元に<カッパ神様>が祀られるようになったそうな。 この伝説は,田邊 悟氏の奥様が走水の故老から聞き取りしたものであるが,古い書物などに記載がないので,新しく生まれた伝説だろうと氏は記している。 走水神社本殿裏の小さな岩室には,この伝説を裏付けるかのように今も<カッパ神様>が祀られている。又,観音崎公園の三軒家園地の標識がカッパなのもこの伝説を意識したものと思われる。 |
カッパ神様 |
観音崎公園・三軒家園地の標識 |
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カッパの正体は下の写真の「アカガエルのカップル」でした。 お騒がせしてご免なさい。 |
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