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チンチン電車が?

 
 ある日の朝,観音崎へ散歩に出かけた。観音崎園地から海岸園地を経て灯台登り口へ通じる園路は御影石が敷き詰められていて,落ち着いた雰囲気があり私の好きなコースの一つである。

 灯台の登り口手前には,西脇順三郎の「灯台へ行く道」という詩碑があるが,その付近へさしかかった時,前方からチンチン・ガタンゴトン・ガタンゴトンという音がしたかと思うと,目の前に路面電車が現れた。ビックリして道路端へ避けながら夢中でカメラのシャッターを押し,ゆっくりと走りすぎる路面電車を見ると,なんとそれはかって横浜を走っていた市電であった。

 電車はやがて,むかし大蛇が住んでいたといわれる大きな海蝕洞窟の中へと消えていった。我に返って他に目撃者を捜したが付近には誰一人おらず,ネコが10匹ほど朝日を浴びて寝ころんでいるだけであった。ネコにもすがる思いで,電車を見たか尋ねようとしたが,我が輩はネコ語を話せないことに気づきあきらめて帰宅した。
 バス発着所のある観音崎レストハウスから海岸園地を経て灯台登り口へ通じる園路には,横浜市電が廃止された時,路面から撤去された御影石が移設して敷き詰められている。園路の幅はちょうど路面電車が一台走れるほどで,御影石の敷き詰め方も往時を偲ばせるものがある。その上をのんびりと散策していると前方からチンチン・ガタンゴトン・ガタンゴトンという音が聞こえてくるような気がしてくる。

 横浜市電の御影石はこの他に,観音崎自然博物館近くの噴水広場の横から戦没船員の碑方面へ通じる坂道にも敷き詰められている。その後公園の拡大・整備が進むと共に御影石の他にレンガの園路が増え,観音崎にはレンガの構築物が多いこともあり周囲の自然ともマッチして,落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 観音崎にはこの他に自然のままの山道や倒木をチップにして敷き詰めたチップ道?もあり,それはそれなりの趣があり楽しい。ところが最近更に拡大・整備された部分には予算の関係もあってか,コンクリートやアスファルトの園路が増え,何か味気なく正直のところ残念である。

「灯台へ行く道」
画面中央右:西脇順三郎詩碑

海蝕洞窟

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