タシロラン
(田代蘭)


ラン科  腐生植物
準絶滅危惧種(NT)
花期 : 6〜7月

マヤラン発見!
タシロラン由来
環境省 準絶滅危惧種
大発生!
最大級発見
超最大級発見!
タシロラン発生確認日
タシロランマップ

タシロラン由来
 
 ランと言うと,カラフルで華やかなランを想像するが,タシロランは華やかさとは無縁な地味なランで,ツクシを細く頼りなくしたような茎の上に,緑の葉はなく,イネの穂のような若干黄色味を帯びた白い花が咲く。

 2001年,神奈川県公園協会主催の観察会で,初めてタシロランを見た時,正直のところ私は内心ガッカリした。ところが,講師の観音崎自然博物館・主幹研究員の話を聞いたり,ネットでタシロランについて調べたりする内に,このランが非常に貴重なランであることを知り,そう思ってこのランを改めて眺めると,神秘的な森の妖精のように見えてきたから妙なものだ。

 
タシロラン(田代蘭)の名は,発見者の植物学者・田代善太郎氏に因んで,牧野富太郎博士により命名された。観音崎のような常緑樹林内に生える,葉緑素を持たない腐生殖物で,観音崎では1983年6月東京湾海上交通センターの職員により発見された。

 
花期は6月下旬から7月上旬にかけての約2週間。関東地方南部以西の良く保存された森の,落ち葉が堆積して腐葉土に近い状態の日陰の場所からごく稀に生える。タシロランが生えることは,豊かな自然に恵まれていることの証でもあり,観音崎でいつまでもこのランが見られるよう,大切にしたいものだ。。
2003.6.24
 
 
環境省 準絶滅危惧種
 
 ネットでタシロランをキーワードに検索したところ,日本生物多様性防衛ネットワークの河野昭一代表幹事の「京都御苑のタシロラン保護に関する要望書」が専門的でありながら,素人の私にも判りやすかったので,抜粋してご紹介させて頂きます。

 タシロランは、照葉樹林の暗い林床に成育し、光合成をしない無葉の腐生ランで、地下部は菌根となり、得意な生活様式を持っていますが、その生活史の詳細は未だ解明されていません。

 産地は、オーストラリア、マレーシア、インドシナ、中国南部、台湾、日本となっています。日本での産地は少なく、九州、沖縄の限られた地域にその産地が知られ、また、本州では群馬県高崎(絶滅)、
神奈川県(三浦半島)(すでに絶滅?)、静岡県静岡(すでに絶滅?)、和歌山県(危険)、高知(危険)などに極限され、すでにその北限地域では絶滅してしまったと報告されています。

 環境庁は、タシロランを絶滅の危険性がある「危急種」に指定していますが、その危産ぶりからすると限りなく絶滅危惧種に近いと考えられれます。このような危産・貴重種が大都市のどまんなかにある京都御苑に産するのは奇跡的なことであり、大変な驚くべきことです。

 タシロランの生育条件は極めてデリケートであり、高木一本伐っても、土壌を掘り起こしても、落葉を掻いても、生育環境の破壊につながる取り返しのつかない事態となります。したがって、現在行われている草刈りした植物体や落葉の投棄は、少なくとも本種の成育地や隣接地では直ちにやめるべきです。

 また、タシロランの成育地の上に、無神経に落葉や刈り草を山積みすることや、整備の名のもとに林地面積を減らしたり、芝地に変えたりすることは決してしてはならないことです。ましてや、樹木の伐採や、緑地の減少を伴う建物施設の建設などは、いかなる目的であれ避けなければなりません。

 本種は、学術的にも危産・貴重種でありますが、本種のみを保護すればよいという考えは安易であり、最終的には本種の保護にもならない有害なものとなってしまいます。大切なのは御苑の自然環境全体を保護することであり、本種を含む植物、菌類、昆虫類、チョウ類などからなる多様な生物群全体、まさに生物多様性を保護することこそが今求められていることです。

 環境行政のよきお手本として、環境庁は自らの管理区域内に成育する絶滅危急種の保護保全に全力を尽くされるようお願いする次第です。浅慮による開発行為等によって、タシロランに象徴される危産・貴重種が絶滅してしまうようなことがあってはなりません。京都の文化には、自然との調和、自然との共存、自然との一体感といったものを求める世界に誇るべき伝統があるのですから、本種の保護をもってその範を示されんことを切に願う次第です。

(注)本文中「神奈川県(三浦半島)(すでに絶滅?)」とあったので,健在な旨報告済
大発生!
 
 前日の大雨がウソのように青空が広がり,蒸し暑い一日となった2004年6月26日。タシロランの発生には最適の条件が整ったと思われたので,タシロランが観音崎で最初に発見された,観音崎園地から東京湾海上交通センターへ通じる坂道を歩いてみた。

 予想通り坂道の左右あちこちで,タシロランが異常と言っても過言ではないほど大発生していた。現場の様子を観察すると,これから更に続々発生すると考えられるので,これから来週半ばくらいまでが見頃と思われる。
2004.6.26
最大級発見
 
 遅れていたタシロランの発生が,ここ数日の雨で一気に加速,ふれあいの森で4ヶ所の群落を見つけた。更に,その群落とは別の場所で,最大級のタシロランを2本発見,念のため計測したところ丈が43cmもあったのにはビックリ。

 ふれあいの森の今年の特徴は,倒木で造ったチップを敷き詰めた園路に数多く発生していることで,歩行者に踏みつけられる恐れがあるため,群落ヶ所には公園管理の作業者?が,篠竹で簡単な囲いをしてあった。10日くらいまでが見頃と思われる。
2005.7.5

43cmの大物
 
 

これからの成長が楽しみな群落
超最大級発見!
       
 タシロランとマヤランにお目にかかりたいという知人を案内して,観音崎公園内を散策した。タシロランは見頃を過ぎた感,マヤランは10本ほど発生はしていたものの,開花まで1週間ほど早過ぎる感があったりで,若干物足りなさを感じていたところ,意外なところで,タシロランの大群落を発見した。

 遠目にも数が多く丈が高い。斜面を下り近づいてみると,大小取り混ぜてその数50〜60本,丈が高いものは50cm以上ありそうだ。その周辺には他にも群生が見られる。ところが,その辺りは倒木や伐採した木や枝の捨て場になっているらしく,タシロランの群生地にそれらの投棄物が迫り,埋没する危険性がある。
2010.7.11
 
 早速,公園の管理事務所にこのことを連絡。翌日,所長さんと管理員さんを群生地へご案内することになった。現地をご覧になって,お二人共,その数の多さと丈の高さに驚かれていたが,念のため持参したメジャーで計測したところ,最大級のものはなんと67cmもあった。

 できることなら,この群生地を保護するためには,既に投棄した木や枝の撤去をお願いしたいところだが,手間やコストの問題もあり,簡単には解決しそうもない。しかしながら,最低限これ以上の投棄はストップして頂くことをお願いして,その場を後にした。
 





タシロラン発生確認日
2020年6月30日
2019年6月30日
2018年6月19日
2017年7月09日
2016年7月04日
2015年6月21日
2014年6月27日
2013年6月23日
2012年6月27日
2011年6月26日
2010年6月25日
2009年6月26日
2008年6月30日
2007年6月24日
2006年7月01日
2005年6月27日
2004年6月20日
2003年6月24日
タシロランマップ

観音崎通信2010年7月号から転載
(観音崎公園指定管理者:横浜緑地・西武造園グループ発行)

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