タニギキョウ
(谷桔梗)


キキョウ科  多年草  草丈:5〜15cm

 2年前の5月,観音崎公園の案内役・フィールドレンジャーとして案内所のスティションで待機していた時のこと,午前中,園内をパトロールしてきた先輩が「東京湾海上交通センターの近くで,タニギキョウが咲いていたよ!」と大発見でもしたように報告した。

 タニギキョウという名前すら知らなかった私は,谷に咲く桔梗の花を思い浮かべ,早速その話に飛びつき,午後からのパトロール中にその場所へ行くことに決めた。先輩は地図を書きながら,ニコニコと少し意味ありげに「とっても可愛い花だよ!」と教えてくれた。

 午後一番,先輩が書いてくれた地図を便りにその場所へ出かけてみたが,それらしき花が見当たらない。その付近には直径1cmにも満たない,ちっぽけな白い花をつけた雑草が,数株生えているだけだった。

 スティションへ帰ると先輩が「どうだった?可愛い花だったろう!」いたずらっ子のような笑みを浮かべて声をかけてきた。「桔梗なんて咲いてませんでしたよ!ウシハコベの花のような白い小さな花が咲いてるだけでした!」私が少し抗議口調で答えると「それがタニギキョウだよ!」と大笑いされてしまった。どうやら一杯食わされてしまったようである。
2005.5.21
 タニギキョウはその名のように,山地の谷や沢など湿り気の多いところを好んで生える。観音崎では谷でも沢でもないが,周辺に大木が茂り木漏れ日が当たる程度で,昼間でも少し薄暗い場所に生えている。湿気が多いためか周辺にはコケが密生,リョウメンシダが繁茂しているところをみると,タニギキョウには最適の場所のようだ。
 白い花の大きさは5〜8mm程度で,それほど美しい花と感じなかったが,マクロ撮影して拡大してみると,なかなか清楚で可憐な花で,ちょっぴりキキョウにも似ているような気がする。

花暦TOP  植物たちTOP  HOME