タマシキゴカイ
(玉敷沙蚕)
別名:クロムシ(黒虫)

環形動物 タマシキゴカイ科
体  長 約30cm
 4月中旬〜6月下旬にかけて,大潮の干潮時,鴨居港内に小さな干潟が出現する。その干潟にはさまざまな生き物が生息しているので,時折,デジカメ片手に潮干狩りに出かける。酒のつまみになるナマコや貝類を土産に持ち帰ることもあるが,写真撮影に熱中して獲物がゼロの時も多い。
2009.5.28
 
 その干潟には奇妙な光景が目につく。砂地のあちこちがお椀のように盛り上がり,その上にはひも状の糞のようなもの。その周辺には鶏卵大のゴム風船のようなものが転がっている。
 これらがタマシキゴカイの糞塊と卵塊であるのを知ったのは,つい最近のこと。糞塊の下に巣があるらしい。正体が判ると,その主にお目にかかりたくなるのが人情。図鑑ではもの足りず,実物を採集することにした。糞塊と卵塊の主はどんな姿をしているのだろう?
 
 採集初日は相手を甘く見て,百円ショップで買い求めた園芸用の小さな移植コテで,砂地を掘り下げてみたが,掘れども掘れどもそれらしき姿は見つからない。その内,移植コテの細い柄がポキンと折れてしまった。相手は思いの外敏捷で,砂中深くに潜んでいるようだ。

 翌日,今度は工事用の本格的なショベルで再挑戦。盛り上がった巣の近くにショベルをそっと突き刺し,一気に巣を掘り起こす。それを何回か繰り返す内,得体の知れないいろいろな虫が出てきた。どれも釣りエサにはなりそうだ。ところが,肝心のタマシキゴカイの姿は見つからない。相当,手強い相手のようだ。
 
 結局,二日目も見つけられず。その翌々日,性懲りもなく再々挑戦することにした。昼食後,ショベル片手に再び鴨居港へ。三度目ともなると,だいぶ要領が判ってきた。一気に掘り返すことは無理なので,周辺から少しずつ掘り下げることにした。

 掘り返すこと数回,5〜6回目に掘り返した砂の中に,タマシキゴカイらしき姿を見つけた。砂にまみれたその身体を,潮だまりで洗い流すと,図鑑で見たと同じタマシキゴカイが,完全な形で姿を現した。まるで,宝石でも掘り当てたような気分になった。
 
 タマシキゴカイはナマコと同じように,海底の砂を呑み込み,その中の有機物を食べる。消化できない砂を糞として海底に積み上げたのが糞塊。奇妙な形をした糞塊と卵塊は,見るものの心を和ませてくれるような気がする。掘り当てたタマシキゴカイは,釣りエサにしてクロダイでも釣ろうと思ったが,干潟の減少や汚染が進み,近年各地で激減していると知っていたので,撮影後,砂地に戻して帰宅した。
 
 

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