タコノアシ
(蛸の足)

タコノアシ科 多年草
準絶滅危惧(NT)
花 期 8〜9月
草 丈 30〜100cm
 観音崎自然博物館前の水の広場の池で,タコノアシの花が見頃を迎えた。タコノアシとは奇妙な名前だが,茎の先についた,沢山の花が並んだ花序の枝振りを見ると,奇妙なネーミングも納得がいく。2007年8月の環境省のレッドリストでは,準絶滅危惧(NT)に指定されている稀少植物。

 タコノアシは湿地や沼,休耕田などに生育し,以前はそう珍しいものではなかった。ところが,開発等によりそれらの場所が減少したり,生育環境がセイタカアワダチソウと重なっていたことが,減少の大きな原因と考えられている。

 そのような稀少植物が何故,観音崎に生えているのか?残念ながら,その来歴ははっきりしない。水の広場の池は人工的なもので,自然に生えたものとは考えられない。池にはヨシ(アシ)やミソハギ等,水辺の植物が植栽されているので,恐らく,ヨシなどにタコノアシの根か種が付着して持ち込まれたものと考えられる。
2009.8.18
 
 
 10月中旬頃になるとタコノアシの実や枝は赤く色づき紅葉する。吸盤のような形をした実,反り返った枝振りは茹で蛸(ユデダコ)を連想させ,ネーミングの妙に感心させられる。
2008.10.22
 
   
タコノアシの増殖
  
 紅葉も終わり枯れ始めたタコノアシを眺めながら,その増殖を思い立ち,管理業者のお許しを得て,実をしごくようにして10数個採取した。殻の直径は約5mm,少し固い殻を手でつぶすと,中からミクロン単位の白い種子が現れた。ナンバンギセルの種子を連想させる,きな粉のような微粒子だった。
2008.11.18
 
 
 

殻の直径は約5mm,周辺の白い点がミクロン単位の種子
 増殖を思い立ったものの,私は植物の栽培等の経験はゼロに等しい。取りあえず,年末に「土になる天然素材ポット」の鉢に種蒔きしたが,なかなか発芽しない。そのまま数ヶ月が経過。その存在すら忘れかけていた5月24日,土の表面にコケのようなものが生えているのに気づいた。

 コケのようなものは,やがて双葉となり,茎を伸ばすことになるが,とにかく成長が遅い。計画としては,定期的に写真を撮り,成長の記録をつける予定にしていたが,1ヶ月が過ぎてもあまり変化が感じられない。行列に並んだり,車の渋滞が大嫌いな短気者の私には,向いていない作業であることに,今さらながら気づいた。

 しかしながら,枯らしてしまうわけにはいかない。湿地に生える植物だけに,朝晩,水やりだけは欠かさず,面倒を見た結果,8月21日現在,ご覧のような状態になった。面白いことに,8鉢の成長状態が著しく異なる。まだコケのようなものから,草丈約7cmのものまで,その成長過程が一目でわかるような状態になっている。なんとも不精者向きの成長記録になってしまった。
2009.8.21
 
 
 
 
 
群落出現!
 
 博物館前にある水の広場の池に,タコノアシの群落が出現した。三年前までは,幻に近い存在だったが,管理業者に保護増殖をお願いした結果,今年は爆発的に増えて,約100本ほどが見頃を迎えた。つい先日までは,辺りに雑草が生い茂っていたが,管理員の方々が除草していただいたようで,直ぐにそれと判るようになっているのはありがたい。
2010.8.28
 
 
 

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