ノシラン
(熨斗蘭)

ユリ科     多年草
花 期 7〜9月
草 丈 30〜80cm




 観音崎公園の森の中で,ヤブランに似た花を見つけた。花の色は純白,花も葉もヤブランよりだいぶ大きい。ヤブランのアルビノか?とも思ったが,念のため写真に撮り,翌日,観音崎自然博物館へ行き名前を教えていただくことにした。

 生憎その日,研究員は不在だったが,受付にいた庶務のHさんに名前を尋ねたところ「ノシランじゃないかしら?」と言われた。更に続けて「秋から冬にかけて,美しい青い種子がなるわよ!」とも教えてくれた。Hさんは研究員ではないが,私より遙かに植物について詳しい。

 帰宅後,ノシランをキーワードにウエブ検索したところ,紛れもなく,ノシランであることが確認できた。暖地の海岸や照葉樹林内に群生する種のようだが,観音崎では照葉樹林内で見られるものの,海岸部では見たことがない。名前の由来は葉が「熨斗」に似ていることからつけられたようだ。秋から冬にかけて青い種子がなるのが待ち遠しい。
2006.8.22
 
 
 秋,ノシランにはヤブランの2倍くらいの丸い種子がなった。色は最初薄緑色だったが,日が経つにつれ徐々に濃くなり,新年も明けて,久しぶりに行ってみるとようやく青く色づいていた。これから更に色づくと,藍色に近い色になるようだ。
2007.1.22

2006.12.11
 

(自然光) 2007.1.22
 

(フラッシュ) 
 一週間ぶりにノシランの生育場所を訪れてみると,一週間前とは見違えるほど美しく色づいていた。私はこの色を,これまで青とか藍色と表現したが,実物の色はもっと複雑で,深みのある色合いをしているように思える。

 因みに,ノシランをキーワードにウエブ検索したところ,大半がノシランの種子の色を「青」または「コバルトブルー」と表現,稀に「ルリ色」「藍色」「碧色」があった。講談社の日本語大辞典によれば”コバルトブルーは一般に青と呼ばれる。”とあるので,結局は青派が優勢のようだが,「群青色」という表現があっても良いような気がする。

 これも日本語大辞典によれば”群青色は青色顔料の代表的な色名で,群青のような鮮やかな藍青色を表す。古代から天覧石として知られていた天然の群青の原石はきわめて貴重なものだったので,東洋でも西洋でも至上の存在を描くのに用いられた。たとえば聖母マリアの衣服の色とされたので,マドンナブルーともいう。また西洋ではこの色が海外から渡来した色であったので,ウルトラマリンの色名が生まれた。”とある。

 ウルトラマリンはウルトラマンと勘違いしそうな色名だが,ノシランの種子をマドンナブルーに例えるのは,少々恐れ多いような気もする。
2007.1.29

2007.1.29
 
 観音崎自然博物館の植物コーナーに,見事なノシランが展示されていた。ボランティアの方が自宅で栽培されているものを持参,展示されたようだが,実に美しい色をしている。ノシランの種子の青色を,マドンナブルーに例えるのは恐れ多いと思ったが,この美しい色を眺めていると,相応しいような気もする。尚,観音崎公園内の野生のノシランの種子は,残念ながら,野鳥かタイワンリス?の餌食になったか,一粒残らず姿を消してしまった。
2007.3.6

2007.3.6
 

フラッシュ撮影
余    談
   
 2010.1.7新潟にお住まいのOHMY様から,ありがたいメールを頂戴した。

 −前略−
 
説明文にチョッと気になるものが有り、忌憚無く書きましたので悪しからずご確認を宜しくお願い致します。

 ノシラン、ヤブラン などの種子を実として表記しておられますが?他のジャノヒゲなどと同様に、実と呼ぶのは如何なものかと思って見せていただきました。

 実として見るのが一般的なようですが?これらは種子だと聞いております。より正しく表記するのに,実のように見えますが、種子で有ることを皆さんから知って頂ければと愚考しております。
 −後略−

 私がこれまで,疑いもなくノシラン,ヤブランの実だと思いこんでいたものが,種子だとは?念のため,ネットで検索してみると,正しくご指摘の通り。私にとっては青天の霹靂だった。

 調べた結果を要約すると…
 「ノシラン,ヤブラン,ジャノヒゲなどの植物では,子房は受精後発育して果実になるが,果皮(子房)は成熟前に破れて種子が露出し,青く熟する。果実のように見えるのは,じつは果実でなく種子です。」と言うことになり,OHMY様のご指摘の通り。

 本ページを改めて見直してみた所,「実」という文字が7回も使われていた。植物に詳しい方が本ページをご覧になった時,OHMY様と同じように違和感を持たれたことと思われます。そこで,「実」の箇所を「種子」と訂正させていただきました。

 しかしながら,本ページをアップしてから3年余。この間,Yahoo!のアクセス解析によれば,3,102件のアクセスがあったものの,今回のようなご指摘は初めてでした。改めてOHMY様に感謝したい気持ちです。

 今,ネット上には真贋,玉石混淆の情報が氾濫しています。誤った情報に対して,それを指摘するには,それなりの正義感と勇気が必要だと思います。私からOHMY様への感謝の返信に対し,下記のようなメールを頂戴しました。

 私も以前はジャノヒゲに着くものは実と思っていましたが、種子だから実と表記するのは誤りですと教えて頂きました。以後理解して頂ける方には、教えていただいたように、お知らせして上げなければと思っていますので、お知らせした次第です。

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