ノコンギク
(野紺菊)



キク科  多年草
草丈:50〜100cm


 ノコンギクはヨメナやリュウノウギク等と共に通称ノギクと呼ばれ,ヨメナと似ていて区別が難しい。今回掲載した写真は取りあえず「ノコンギク」としたが,正直のところ少々心もとない。

 花や葉で見分ける方法もあるようだが,果実の冠毛の長いのがノコンギク,短いのがヨメナ,この方法で見分けるのが一番簡単そうなので,種が実る頃,再度確認してみたい。

 10月も半ばを過ぎると,全国各地で菊花展が開催され,大菊,小菊,盆栽仕立,縣崖仕立,洋菊,古典菊と品種も多く,その豪華絢爛さは,それはそれで見事なものがある。

 江戸時代以降,多くの人々により品種改良された園芸種の菊に比べ,ノギクは地味で華やかさはないが,どこか素朴で純粋な美しさがあり,私の好きな花の一つである。

 ところが,観音崎公園を歩いてみると,意外とノギクが少ないことに驚かされる。ノギクはどうやら雑草扱いされているようで,公園整備が進むに連れてその数を減らしている。
2005.10.22
野菊の墓
 
 ノコンギクを見ると私は伊藤左千夫の「野菊の墓」,木下恵介監督の映画「野菊の如き君なりき」を思い出す。

 「……まア綺麗な野菊、政夫さん、 私に半分おくれツたら、私ほんとうに野菊が好き」  「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き……」  「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。 どうしてこんなかなと、自分で思う位」  「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」  民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。二人は歩きだす。 「政夫さん……私野菊の様だってどうしてですか」  「さアどうしてということはないけど、民さんは何がなし野菊の様な風だからさ」  「それで政夫さんは野菊が好きだって……」  「僕大好きさ」

 現代の若者から見れば”まどろっこい”プロポーズだが,なんとも言えない情緒がある。

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