西脇順三郎・詩碑

 灯台へ行く道の階段登り口右側に,詩人西脇順三郎の詩碑がある。明治27年(1894年)生まれの西脇は,昭和24年(1949年)ご子息順一氏の遠足に同行して以来,観音崎を幾度か訪れており,ここ観音崎をモチーフにした「灯台へ行く道」は詩集「近代の寓話」に収められている。

 私はあいにく,この詩の内容を云々する知識を,持ち合わせていないが,今から100年以上も前に生まれた人の詩とは思えないほど,型にはまらずノビノビとしているのが印象的である。

 人は誰も,広い海や青空にそびえる灯台を眺めると詩人になる。私も「そこで一句!」と詠んでみたいところであるが,ここは詩人西脇順三郎に敬意を表して,遠慮することにした。
 
 
     灯 台 へ 行 く 道
              
                   
西 脇 順 三 郎

     まだ夏が終わらない 灯台へ行く道

     岩の上に椎の木の黒ずんだ枝や

     いろいろの人間や小鳥の国を考えたり

     「海の老人」が人の肩車にのって

     木の実の酒を飲んでいる話や

     キリストの伝記を書いたルナンという学者が

     少年の時みた「麻たたき」の話など

     いろいろな人間がいったことを

     考えながら歩いた



 西脇順三郎(1894〜1982)のこと…小学館発行・世界原色百科事典より

 詩人・英文学者。新潟県の生まれ。慶大理財科卒業後,オックスフォード大学で英文学を専攻。 大正14年在英中に英文詩集「Spectrum」を発表。帰国後,母校の文学部教授となり,雑誌『詩と詩論』により,シュルレアリスムの中心的存在となった。結合しえないことばを配列して,イメージを主知的に構成する手法により,日本の現代詩に新領域を開いた。詩集『あむばるわりあ』『旅人かへらず』『失われた時』,詩論集『超現実主義詩論』などがある。
西脇順三郎ノーベル賞候補4度
 
 2013年1月14日付,読売新聞朝刊のトップで,「作家の谷崎潤一郎,詩人の西脇順三郎の2人が,4回にわたってノーベル文学賞の候補になっていたことが分かった。」と報じている。西脇が受賞を逃した理由として「選考に十分な翻訳された作品,またはそれに相当する資料を欠いているため残念ながら委員会は提案を却下せざるを得ない」とあり,翻訳の壁が大きな障害だったことがわかる。
 

碑文の後半部分他
 

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