ナンバンギセル
(南蛮煙管)



ハマウツボ科  寄生植物
花茎:15〜25cm



ナンバンギセル発見!
浮世絵美人とキセル
ススキ刈り取りのタイミング
我が家で開花!
種子は微粉末
観音崎で復元に成功!
再 発 芽
観音崎で大量発生!


ナンバンギセル発見!
 
 浦賀の叶神社の祭から帰り,一風呂浴びてメールを見ると,mtskさんから「ナンバンギセルがやっと見つかりました。」との朗報が入っていた。昼頃,現地から携帯メールで発信したらしく,写真と発見場所の詳細が記されていた。

 昨年,札幌のかわちさんから掲示板にナンバンギセルの書き込みがあって以来,観音崎へ行く度にススキの根元を気にかけていたが,昨年は発見できずに終わり。今年こそなんとか見つけたいものと意気込んでいた矢先に,mtskさんからのメールであった。
2004.9.12
 
 
 翌朝早く発見場所へ,古女房に不審がられるほど,まるで恋人に会いに行くかのように,いそいそと家を出た。現地はこのホームページに度々登場する鴨居小学校の近くにあり,県道から「上の台中学校」へ通じる通称100段階段の向かって右側の傾斜地にある。ススキが生い茂り,その上をクズが足の踏み場もないほど覆い被さるように繁茂している。

 ところが,mtskさんが指示された場所へ行ってみると,道案内が的確なためか,意外と簡単にナンバンギセルを見つけることができた。私にとっては初めてお目にかかる植物で,確かにその名の通りキセルによく似た姿をしていたが,思いの外大きかった。

 写真を10数枚撮ったあと,周辺を丹念に探したところ,mtskさんの指示された場所以外にも,ナンバンギセルを多数発見することができたが,ヤブ蚊が多かったのか,気がつくと顔や身体のあちこちがむず痒く,家へ帰ってからキンカンを乾いたら塗り,乾いたら塗りを繰り返す羽目になってしまった。
  
 
 
 
 ナンバンギセルはススキなどの根に寄生,それ単独では生きられない寄生植物なので,これだけを採取してきて鉢植えにすることはできない。どうやらこの傾斜地はススキが多く,ナンバンギセルにとっては快適な場所のようで,ナンバンギセルの宝庫と言っても過言ではない。
   
  
浮世絵美人とキセル
 
 ナンバンギセルは万葉集に「思い草」という名で詠まれた日本古来の植物であるが,1600年頃,ポルトガルなどの南蛮船でタバコが渡来,その喫煙具のキセルに似ていたことからナンバンギセルと呼ばれるようになったと言われる。

 戯れにナンバンギセルの背景を黒塗りにして,講談社の「世界原色百科事典」に掲載されているキセルと比較してみると確かによく似ている。浮世絵美人の右手にあるのがキセルであるが,本物のキセルの代わりにナンバンギセルを持たせてみたいような気になった。
 
 そこでふと思い出したのが浮世絵の名作,歌麿の「ビードロを吹く女」である。ビードロの代わりにナンバンギセルをくわえさせたらと思いつき,なんとかそれらしく完成したのが下の作品で,天国の歌丸師匠?ならぬ歌麿先生がご覧になったら「吾輩の作品を冒涜する気か!」とお叱りを受けるかもしれない。
  

ススキ刈り取りのタイミング
 そろそろナンバンギセルが発芽する頃?と,昨年mtskさんから教えていただいた上の台中学校へ通じる通称100段階段へ出かけた。まだ少し早いのではとも思っていたが,既に幾つかの小群落が発生していたのにはビックリした。

 昨年9月23日頃,ナンバンギセルの寄生しているススキが,草刈り機で刈り取られてしまい,今年の発生が心配されていたが,取り越し苦労に終わった。見頃は9月中旬位までと思われるので,この珍しい植物をぜひ現地でご覧いただきたいと思う。

 ナンバンギセルはご覧のように可愛らしい花で,鉢植えにでもしたくなるが,ススキの根に寄生する植物なので,ススキ無しには生きていくことができない。夏休みが終わったら,上の台中学校へ出かけ,ナンバンギセルが結実する10月中旬頃まで,刈り取りを延ばしていただくようお願いしようと思っている。
2005.8.28
 

我が家で開花!
 「灯台下暗し」とはこのことかもしれない。上の台中学校の100段階段付近でナンバンギセルの開花を確認した翌朝,「ススキの鉢で妙な花が咲いているわ!」ベランダで家内が奇声を発した。みるとナンバンギセルだった。

 ナンバンギセルがススキに寄生する植物と知り,昨年11月,種子を採取してきて,ススキの根元へ適当に振りかけたことを思い出したが,貧弱なススキが5本植えられた小さな鉢で,まさかナンバンギセルが発芽・開花するとは,ほとんど期待していなかっただけに嬉しかった。

 花茎の数は13本,長さは25cm前後,一番大きなものは27cmもある。ススキの数も少なく,小さな鉢にもかかわらず,ナンバンギセルにとっては自然の状態より条件が良いのか,背丈も高くノビノビとしている。 
 
 
種子は微粉末
 
 昨年11月,札幌のかわちさんのアドバイスで,ナンバンギセルの種子を採集した。時期的に少し遅かったこともあり,探すのに若干苦労したが,それらしきものを見つけ手に取ると,殻の中から黄色い煙が飛び出した。その煙の正体こそナンバンギセルの種子だったが,まるで黄粉のような色をした微粉末だった。

ゴミのような黒い点々がナンバンギセルの種子
2004.11.8
 8月末に開花したナンバンギセルは,9月中旬過ぎまで順次咲いていたが,しばらくその存在を忘れ,ベランダの片隅に置いた鉢を久し振りに覗いたところ,実りの秋?を迎えていた。

 観音崎自然博物館から採種を頼まれていたので,枯れた茎の根元から折ろうとすると,殻の中から,煙のように黄色い微粉末が飛び出した。後で,写真に撮った殻を拡大して見ると,タネはまるで粟粒のように見えるが,実物は黄粉のようなミクロン単位のものである。
2006.10.11
  
 
 

観音崎で復元に成功!
  
 我が家の鉢植えのススキの根元からナンバンギセルが発芽した。2005年以来,これで5年連続して発芽したことになる。昨秋,公園内のススキの根元に種子を撒布したが,そちらはどうなっているだろう?

 観音崎自然博物館の主幹研究委員のお話によれば,かって,ナンバンギセルは公園内にも生えていたが,いつの頃からか姿を消してしまったと聞く。管理業者のお許しを得て,復元を夢見て2007年秋以来,3回種子を撒布してみたが,過去2回は失敗に終わっていた。

 今年はどうだろう?生い茂った雑草をかき分けかき分け,種子を撒布したススキの根元を5ヶ所確認したところ,2ヶ所で合計20本ほどが発芽しているのを見つけた。ナンバンギセルの花は,私にとって今や見慣れた存在になっていたが,これまでとは違った一種の感激があった。

 今年はまだ数も少なく,周辺があまり整備されていないので,今年はまだ一般に公開できないが,来年はより数を増やし,多くの人に見て頂けるようにしたいと考えている。
2010.8.26
  
再 発 芽
   
 復元に成功!と喜んだのもつかの間,10日後,開花した写真を撮りに出かけたところ,1本を残しあとは全て枯死していた。8月下旬から9月上旬にかけて雨が降らず,その上,最高気温が35度前後の猛暑が続いたのが原因のようだ。

 それから2ヶ月が過ぎ,ナンバンギセルのことをすっかり忘れていたところ,観音崎の植物を守る会の仲間が「ナンバンギセルが咲いていましたよ!」と教えてくれた。11月も残り少なくなり,寒さが身にしみるようになったこの時期に何故?

 疑心暗鬼で現地へ行ってみると,確かにナンバンギセルが咲いていた。地面からやっと顔を出したような状態で咲いている。茎はそれ以上伸びないように思われる。咲くべき時に咲くことのできなかった無念を晴らしているような,けなげなその姿に胸を打たれた。
2010.11.22
  
 
観音崎で大量発生!
  
 観音崎公園内でナンバンギセルの復元に成功してから今年で4年目。花は通常8月中旬〜9月下旬にかけて咲くが,今年は猛暑の影響か4本しか発生せず来年に期待することにしていた。ところが先日,観音崎の植物を守る会の仲間から「ナンバンギセルが例の場所で大量に発生していますよ!」との情報を貰い,早速現地へ行ってみた。

 そこには,これまでに見たこともない数のナンバンギセルが発生していた。現在開花中のもの,既に咲き終わり種子に近い状態のもの,これから花開くもの,ざっと数えて50〜60本はあると思われる。2010.11.22の時に比べて数も多く状態も良い。猛暑を地中で耐え忍び,ここえ来て一気に花開いたと思われる。
2013.11.14

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