ムクドリ
(椋鳥)


スズメ目  ムクドリ科  留鳥
全長:約24cm

 我が家近くの公園のケヤキの虚(うろ)でムクドリのヒナが誕生した。ヒナは一羽のようだ。地上4〜5mの高さにある虚の中から,ヒナが時々顔を出し辺りを窺っている。親鳥がエサをくわえて帰ってきた気配を察すると,ヒナは大きな口を開けてギャーギャー騒ぐが,親鳥は巣へは直行しない。天敵のカラスに巣の存在を知られないための防衛本能なのだろう。

 ムクドリは普通,数個のタマゴを産むはずなので,現在ヒナが一羽と言うことは,その他のヒナは既に巣立ったか,カラスの餌食となったかのどちらかと思われる。巣のあるケヤキの傍の電線に留まった親鳥は,辺りをキョロキョロ用心深く見回して,カラスがいないのを確認してから,巣に近づきヒナにエサを与えている。

 ムクドリのヒナの食欲はどん欲で,親鳥のオスとメスとが代わる代わるエサを運んでくるが,その度に大きな口を開けてエサを呑み込んでいる。この食欲であれば,巣立ちの日も近いと思われる。
2006.5.30
親 心 ?
 「海棠の枝に,ムクドリらしいヒナがいるわよ!」妻が大発見でもしたように報告した。庭へ出て海棠を見ると,2m位の高さの枝にヒナが留まっていた。その頭上を走っている電線の上には,親鳥らしきムクドリが留まっている。

 私がデジカメを持ち出し,ヒナの写真を撮ろうとすると,ヒナは身動きもせずジッとしているが,親鳥が私を威嚇するようにギャーギャー騒ぐ。その顔は鳥とは思えぬほど恐ろしい形相をしている。

 公園のケヤキの虚で,巣立ちも近いと思われるヒナを見たのが一週間ほど前,我が家から公園までは直線距離で約1000m,目の前のヒナはあの時のヒナかもしれない。巣立ちの挨拶にでも来たのだろうか?

 私が写真を撮っている間中,親鳥はギャーギャー騒いでいたが,私が部屋へ戻ると静かになった。ヒナが巣立っても親鳥は心配で,ヒナの後を見守るようについて回っているのだろうか?
2006.6.7
ネコと集団闘争
 我が家の斜め向かいのお宅の戸袋で,ムクドリのヒナが数羽誕生した。親鳥がエサを運んでくるたびにギャーギャーと賑やかな鳴き声が聞こえてくる。そのお宅は二階建ての大きな家だが,現在は男一人住まいで,ほとんど一階で生活しているのか,最近は二階の雨戸を開け閉めしているのを見たことがない。そこへ目をつけたムクドリが,雨戸の戸袋に巣を作り,しばらく前にヒナが誕生した。

 ところがこの日,ムクドリの親の鳴き声があまりにも凄まじいので,ベランダへ出てみると,戸袋の真下の屋根瓦の上にネコが一匹,戸袋の手の差し込み口付近を,獲物を狙うような目つきで睨み身構えていた。やがてネコは背伸びをして戸袋につかまり,手の差し込み口付近に飛び移った。その間,親鳥二羽は狂ったように上空を飛び回り,非常事態を仲間に告げている。

 するとまもなく,あちこちからムクドリが集まり,近くの電線に留まったり,戸袋の真上の屋根瓦に留り心配そうに覗き込んだり,ネコを威嚇するように集団で騒ぎ始めた。ネコはその鳴き声にも動じる様子はなく,必死に巣の中のヒナを捕まえようとしていたが,手の差し込み口が小さいのと,巣が戸袋の奥にあり手が届かないためか,やがて諦めてすごすごと姿を消した。ムクドリが群れで行動する姿は良く見かけるが,このような事態にスクラムを組んで行動するとは,鳥ながら見上げたものである。

 それから一週間後,気がついてみるとムクドリのヒナの鳴き声が聞こえなくなった。恐らく元気に巣立ちしたのだろう。
2004.6.10
ムクドリ写真集
    
   観音崎公園で見かける野鳥の中で,ムクドリはスズメ・カラス・ヒヨドリに負けず劣らず数が多い。群れで行動することが多く,数十羽,時には数百羽の群れを見かけたこともある。鳴き声は(株)永岡書店発行の「野鳥ガイドブック」によれば「リャーリャー,キュルキュル」とあるが,私には「ギャーギャー」としか聞こえない。羽の色もカラスのように黒っぽい感じで,顔つきも鋭く,正直のところあまり可愛い鳥ではない。

 そんな,一見可愛げのないムクドリも,子育ての時期の愛情の細やかさや,カラスやネコに対抗する時の集団行動,時にはユーモラスな姿を見ると憎めないところもある。これまで撮り貯めたムクドリの写真から,お気に入りのものを幾つかご紹介したい。

2004.9.9

2003.12.10

2003.1.5

2005.2.21

2005.4.17

2007.7.4
余   談
 
 ムクドリの名前の由来は,ムクノキ(椋の木)の実を好んで食べることから来ているようだが,観音崎公園内には私の知る限りムクノキは一本しか生えていない。その上,実が成ったのを見たこともない。ムクドリは雑食性のため,ムクノキの実がなくても食べ物に不自由しないようだ。

 花の広場ではムクドリが群れで地面をクチバシで突きながら,昆虫類を捕食している光景を良く見かけるが,観音崎の磯で,岩についた青ノリ,カニや昆虫類を捕食している姿を時々目にすることもある。秋になり柿の実が赤く熟す頃になると我が家にも飛来して,食べ頃になった柿を先取りされてしまうことも度々ある。ヒヨドリと共に油断のならない鳥だ。

 そんな油断のならないムクドリの隠語が「おのぼりさん」や相場の世界では「素人」とあるから面白い。ムクドリの姿や性質からはとても「おのぼりさん」や「素人」は当てはまらないので,どうやら「無垢(ムク)」という仏教語との語呂合わせのようだ。因みに無垢とは「汚れのないこと」「純粋なこと」を意味するが,ムクドリのことを略して「ムク」と呼ぶこともあるので,「君はムクだね!」と言われてもうっかり喜ぶわけにはいかない。

2003.1.16

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