観音崎今昔写真館
噴水広場は夢の跡

2015年頃までの噴水広場
 今は昔,観音崎自然博物館近くに「噴水広場」と名付けられた谷戸があった。谷戸には三つの平地があり,道路に面した一番下の広場には花壇,一段高い広場には25mプール位の大きな噴水池,更に一段高い最奥部にはコンクリート製の東屋風休憩場が設けられていた。

2006.4.4

2007.9.28

2004.7.6
再生計画(案)
 噴水広場は造園から約40年が経過,各種施設が老朽化したこともあり再生計画(案)では,「谷戸の自然再生ゾーン」として下図の通り再生されることになった。谷戸最奥部の一番高い場所に,人工の水源である「上池」を造成。流れ出た清流は噴水池跡に造られたホタル池へ注ぎ。池から溢れ出た水は小川となり,花壇のあった広場に造成された「水田」と「下池」へと流れ下る。

 ホタル池にはヘイケボタルの幼虫とエサとなるカワニナを放流。「水田」と「下池」には噴水池を繁殖産卵地としていたアカガエルやヤンマ類が戻ってくることが期待される。草原にはスミレ,オミナエシ,キキョウ等の里山の野草が点在。水田と下池の周辺にはアヤメ,カワラナデシコ,ミソハギ等の湿生植物が生育。園地周辺のソメイヨシノやオオシマザクラの古木はそのまま残される。今では都市部では見られなくなった日本の原風景であった里山が目に浮かぶ夢のような計画だった。 
「工事中」
 2012年(H24)に再生計画(案)が発表されてから3年後の2015年(H27)。待ちに待った噴水広場の再生工事が始まった。作業開始から約10ヶ月後,工事現場が静かになったのを見計らい,重機の出入り口付近から広場を覗いてみた。噴水池や花壇,東屋風休憩場そしてコンクリート製階段等,全ての施設が撤去されていた。現場の様子では2015年度の作業はこれで終了。「谷戸の自然再生ゾーン」造成は2016年度に実施されるようだ。

2016.2.21
名無しの野原
 2016年度になり工事が再開されるものと思っていたが,1ヶ月,3ヶ月,半年たっても工事は再開されない。しばらくして,県の財政難のため再生計画(案)は廃案となったようだとの噂を耳にした。それから1~2年?が経過。工事が再開されたが単に広場を更地に戻し,1本の道と階段を造り,道路に面した野原と最奥部の平地にそれぞれ2基ずつのベンチを設置しただけの簡単なものだった。誰が言ったかこの谷戸は「自然観察の里」になったという。

2023.4.1
 

2023.4.1

現在,旧噴水広場入り口にある案内板には園地名の記載がない
 その後,アカガエルやトンボ類の動物愛好家からの申し入れもあって,花壇のあった広場の片隅に産卵用として申し訳程度の池が造られた。池は大きな水溜まりほどのもので,底には防水シートが施工されているものの,水源が無いため日照りが続くと池は干上がり,オタマジャクシやヤゴ達が干物になる憂き目を見る。何とも罪な話だ。諸般の事情を勘案すると,再生計画(案)をそのまま実施することまでは望まないが,せめて水源を確保して欲しいと願うのは私だけだろうか?そしていつの日か再生計画(案)「谷戸の自然再生ゾーン」が実現することを祈りたい。
2023.4.15

2023.4.8

「名無しの野原」 → 「つながりの谷」
 「名無しの野原」が「つながりの谷」に変身。その一環として,水源が無いため日照りが続くと干上がってしまう池も,適切な維持管理を行いながら,新たに天候による水面変化の少ない池をもう一ヶ所造成して,貴重な水生昆虫類が継続して観察できるようにするとの由。趣旨は大変素晴らしい話だが,その財源は神奈川県が支出するのではなくて,クラウドファンディングによる寄付に頼るようだ。

 池整備の方法は,掘削・蛇籠設置・防水シート設置他とあるので,現在の池より改善されると思われるが,水源の新設は明記されていない。新設される池ではヘイケボタルが生息し飛び交う環境を創り出し,気軽にホタルが観察できる場を提供していきたいとあるが,水源なしでそのような環境が維持できるのか正直心許ない。先に記したように,神奈川県には再生計画(案)をそのまま実施することまでは望まないが,せめて水源を確保して欲しいと願うのは私だけだろうか?そしていつの日か再生計画(案)「谷戸の自然再生ゾーン」が実現することを祈りたい。
 

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