カ ワ ウ
(川鵜)

カツオドリ目 ウ科 留鳥
全長:約82cm

 鴨居港内で越冬中のカモ達に混じって,ウが一羽,岩場の上で羽を休めていた。背と雨覆の色が,黒というよりも茶色ぽい感じなので,カワウと直感!数枚写真を撮った。私は数年前まで,観音崎の海で見かける「ウ」は,全てウミウと単純に考えていたが,カワウも相当数飛来しているらしい。

 たまたま一週間ほど前,観音崎自然博物館のボランティア研修の野鳥観察会で,野鳥に詳しい先輩から,ウミウは身体全体の色が「緑色を帯びた黒色」,カワウは「光沢のある黒色,背と雨覆が茶褐色」,ウミウとカワウの見分け方を教わったばかりだった。
2008.2.20
 帰宅後,パソコンに取り込んだカワウの画像を何げなく拡大してみたところ,左足に黄色い足環がついていて「8K2」と記号が書いてある。なにかの調査目的で,誰かが何処かで足環をつけて放鳥したものと思われる。

 「カワウの足環」をキーワードにウエブ検索,あれこれ調べた結果,環境省/山階鳥類研究所の「渡り鳥と足環」のページにたどり着いた。拾い読みしてみると,「足環のついた鳥を見つけたら」山階鳥類研究所 標識研究室へ報告して欲しいとある。少々面倒だったが,このカワウが何時・何処で放鳥されたのか,その後の来歴は?興味をそそられメールで報告した。

 翌日,カワウ標識調査グループ(JCBG)の福田道雄氏からメールが届いた。
 「この度は、貴重なカワウのカラーリング確認報告を有り難うございます。山階鳥類研究所から連絡をいただきました。(8K2)は、2007.5.12に、木更津市畔戸の小櫃川河口にあるカワウのコロニーで、巣内のヒナ(約20日齢)に装着したものです。今回が巣立ち後の初めての確認です。装着日から284日目となります。まだ、幼鳥のため、黒褐色の羽色となっていません。」
 福田氏からのメールには,メールアドレスと共にホームページのURLが記されていた。早速,アクセスしてみると「カラーリングがついたカワウ」というサイトが表示され,拾い読みしたところ,なかなか興味深い記事が載っていた。

 黄色のリングは関東地域で装着されたもの。橙色リング:静岡県,緑色リング:愛知県&三重県,白色リング:愛知県渥美郡,青色リング:滋賀県&兵庫県,薄茶色リング:島根県。色や記号によって,装着された場所・年月日等が判別できる仕組みになっている。

 私が見つけたカワウは木更津から飛来したもので,驚くに値しないが,黄色リングを着けたカワウが愛知県で確認されたり,橙色・緑色・白色・青色リングを着けたカワウが関東地域で確認されたり,その移動範囲は結構広い。

 観音崎大橋の眼前に広がる磯には,ウが羽を休めていることが多い。夏場は減少するが,冬場は特に数が多くなる。私はこれまでそれらのウを十把一絡(じゅっぱひとからげ)にウミウと思いこんできたが,この中にはカワウも相当数混じっているようだ。これからは,カラーリングに注目して,高倍率の双眼鏡やデジカメで観察してみたい。ヒョッとすると橙色・緑色・白色・青色リングを着けたカワウにお目にかかれるかもしれない。

2007.1.30

2007.1.30
「ウ」の見分け方
 観音崎には3種類の「ウ」が飛来する。その見分け方をネットであれこれ調べた結果,下記のような識別ポイントがあることがわかった。しかしながら,いざ実際に見分けるとなるとそう簡単ではない。これまで撮り貯めた「ウ」の写真は,全てウミウとして一つのフォルダに入れて保管していたので,これを機会にカワウとウミウに分類しようとしたが,ほとんどの写真の判別ができない。 
  カワウ ウミウ ヒメウ
全長 約82cm 約84cm 約73cm
全体の印象 光沢のある黒色 緑色を帯びた黒色 青紫の光沢の黒色
背と雨覆 茶褐色 緑色 黒色
羽縁 黒く鱗状に見える 黒色 黒色
クチバシ 褐色 黒褐色 黒色
クチバシの付け根
黄色い部分の形
丸みを帯びている 後方にとがっている 赤褐色の裸出部
 一例として,下の写真には3種類のウが混在しているが,比較的小柄で全体が青紫の光沢がある黒色のヒメウは一目でわかるものの,それ以外はどれがカワウでウミウなのか正直のところ見分けることが難しい。
  

2003.4.21
 上記写真にはオスとメス,成鳥と幼鳥,繁殖期独特の頭部が白いウも混じっている。その上,光線の具合によっても色彩は変化する。正確に判別するためには,一羽一羽,クローズアップして撮影する必要がありそうだ。

 改めて見分け方についてネットであれこれ調べたところ,顔の部分をクローズアップ,クチバシの付け根の黄色い部分の形を比較してみれば比較的容易に判別できるようだ。
カワウ
ウミウ
 くちばしの基部の黄色い裸出部は
口角で尖らない。
頬の白色部は,目の後方にまっすぐ延びる。
 くちばしの基部の裸出部が小さく
口角で三角形に尖る。
頬の白色部は,目の後方から斜めに上がる。
環境省自然環境局 野生生物課のページから転載

2005.9.9

2013.12.23
 私がこの地へ越してきた40数年前,観音崎周辺の磯でウを見ることは稀であった。ところが近年,その数が急激に増え,観音崎大橋の眼前に広がる磯は「ウの天国」の感がある。数年前まで,これらのウを全てウミウと単純に考えていたが,カワウの飛来数は思いのほか多いようだ。

 カワウは一時,環境の悪化により生息数を大幅に減らし,保護鳥獣とされてきたが,公害規制による河川の水質改善で,エサとなる魚が増えるに連れカワウの数も飛躍的に増加。アユやヤマメなど川魚の食害や大量の糞による木々の枯死が深刻化,有害鳥獣として駆除対象になろうとしているとか。

 観音崎周辺の磯に飛来するウの数が急激に増加した背景には,食害や糞害で集団営巣地を追われたカワウの存在もあると思われる。岩場の上で濡れた羽を広げたり,エサの魚を求めて潜水を繰り返す姿はユーモラスで,憎めないところがあるが,増えすぎるのも良し悪しのようだ。

2002.12.2

2006.2.12
 2008年の元旦,初日の出を参拝に腰越の浜へ行った時。東の空が白み,やがて朝焼けに染まる頃,コロニーからエサ場へ向かう20〜30羽のウの集団が,幾つも北から南の空へ横切って行くのが見られた。カワウだろうか?ウミウだろうか? 

2008.1.1
三浦・小網代湾
カワウ400羽生息確認・県,食害防止策検討へ
 
2021.1.13発行 神奈川新聞から転載


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