見直そう!鴨居・観音崎の海
鴨居の海は きれいか? きたないか?」
考えよう 鴨居の海の環境を!

 
 2004年2月18日(水)観音崎自然博物館から一番近い小学校,横須賀市立鴨居小学校で公開研究会が開催された。同校は「平成14・15年度 横須賀市教育委員会 新教育課程研究委託校」「平成14・15・16年度 文部科学省 学力向上フロンティア事業委託校」で公開研究会はその成果を発表する一大イベントである。

 当日は市内は勿論,、北は山形、宮城、南は宮崎から多数の先生達が参加しての研究会であったが,ボランティアとして2年前,同校の生徒さんを「たたら浜横穴・自然観察の森」へご案内したのが縁で,小川義一先生と知り合いになり,今回そのお誘いで5年生の公開授業を参観することになった。

 小川先生とは初対面以来,先生のホームページ「義一のページ」と相互リンクしたり,何かと情報交換する機会も多く,今回のお誘いとなったが,公開授業の最後に一言講評を求められたのには少々面食らった。しかし,これも良い経験と覚悟して,いささか緊張気味に授業を参観することとなった。
 5年生の発表テーマは「見直そう!鴨居・観音崎の海 <考えよう 鴨居の海の環境を>」で,2003年6月に,3組91名の生徒を5〜6人のグループに分け,「鴨居の海について」どのような方法で調査するかをグループ内の話し合いで決めてスタートした。

 スタート時,「鴨居の海」についての子供達の意識調査では,きれい・ややきれいが38%,きたない・ややきたないが46%と,きたないと感じている子供の割合が多いのは少々意外であった。

 子供達が話し合いで決めた調査方法は,全てをご紹介できないのが残念であるが,単に図書館やインターネットで調べるだけでなく,鴨居港や港に流入する和田川・走水港・浦賀湾等での現地調査,観音崎自然博物館や下町浄化センターの見学,町の古老へのインタビュー等々多種多彩で,生きた総合学習そのものであった。
 

鴨居港に流入する和田川で水質や生物を調査

浦賀湾で透明度の調査

海中のゴミの種類や量を調査

汚水が浄化されるまでのルートを調査
 

鴨居名産タイと海の汚染の関係を調査
 調査結果の発表は型にはまったスタイルでなく,小川先生が進行役となりフリートーキング式に展開された。自分たちの調査結果を発表する子,それに疑問をぶつける子,答える子等々,特定の子供だけでなく,多くの子供達が積極的に意見を出し合う姿は,私が5年生の頃の発表風景とは大きく異なる印象を受けた。 

浜辺で拾い集めたゴミを披露

鴨居・浦賀・走水の水の透明度をテープで比較

全国から参集した先生達を前に質問
 約半年間の総合学習を通して子供達が学んだことは,自分たちで考え・現地調査・そして話し合った結果,鴨居の海が他の地域の海に比較して,思ったよりきれいで豊かであることを再認識,その海を誇りにして,これからも大切にしていきたいと感じたことだと思う。

 このことは子供達の意識調査にもはっきりと現れ,鴨居の海に関する評価が,きれい・ややきれいが74%,きたない・ややきたないが5%と,きれいと感じている子供の割合が調査前と調査後では大きく逆転,きれいと感じている子供の割合が増えた。

 発表後の講評で,私は子供達の多種多彩な調査をほめると共に,「百聞は一見にしかず」という,いささか古い諺を引用して,図書やインターネットで調べることも大切だが,実際に見たり・聞いたり・体験することの素晴らしさを話した。子供達も納得したように耳を傾けてくれたのには私もホッとした。
調査前
調査後
 :きれい :ややきれい :ふつう :ややきたない :きたない
補足? 蛇足?
 
 鴨居の海に対する子供達の最終評価は「きれい・ややきれい」が大半を占めたが,これには私も同感である。しかしながら,鴨居港が以前からこのような状態であったわけではなく,土地の古老にお聞きしたところでは,40〜50年前はもっともっときれいで豊かな海であったと言う。

 それが15〜30年前になると宅地開発が進んだ結果,家庭からでる生活排水が激増,それらが和田川を通じて鴨居港に流れ込むため,和田川はドブ川と化し,鴨居港も灰色に薄汚く濁った港になり,桟橋や岸壁そして磯の岩にも土地の人がカラス貝と呼ぶムラサキイガイが大繁殖した。

 ところが平成2年,鴨居ポンプ場が稼働を開始してから環境が大きく改善された。家庭から出るトイレ・台所・風呂等から出る生活排水が下水管を通って鴨居ポンプ場へ集められ,浦賀〜馬堀経由下町浄化センターへ送られ処理されるようになり,鴨居港へは雨水のみが流入するようになったためである。

 その結果,徐々に鴨居港の水がきれいになっていくのを感じていたが,クロダイ・メジナ・ウミタナゴ等の釣りエサやコマセとして重宝していたムラサキイガイが,水がきれいになるのと反比例するように減少,小型化していくのには驚かされた。

 ムラサキイガイはご存知の方も多いと思うが,海の汚染度を測るバロメーターとも言える貝で,その量の多少,形の大小により海の汚染具合を知ることができる。

 改めて,和田川の河口付近の桟橋や岸壁を調べてみると,カキがビッシリついているが,一見したところムラサキイガイは見あたらない。ところがよく見るとカキに混じってムラサキイガイの稚貝が隠れているのが判る。更に,潮通しの悪い漁業組合のある岸壁付近では,数は以前ほど多くはないが,多少大きなムラサキイガイを見かけた。

 海を汚すのも,きれいにするのも人間であることを,無言のムラサキイガイが警告しているように私には思える。 

鴨居ポンプ場
 

和田川河口
 

和田川河口のボラの稚魚
 

鴨居港岸壁に付着するカキ
カキに混じって黒い部分がムラサキイガイ
アメフラシ・アカヒトデ・ワカメの姿も見える
 

鴨居港の海底のワカメと空き缶・鉄クズ
 

潮通しの悪い岸壁のカラスガイ
下町浄化センター
 
 鴨居ポンプ場から下町浄化センターへ送られた生活排水は,浄化して横須賀の海へ排水される。処理された水は飲料水にはならないものの,メダカやトンボのヤゴ等が棲めるようなきれいな水で,喜ばしいことである。

 ところが,鴨居のように生活排水と雨水を分流しているポンプ場は問題ないが,雨水も合流して下町浄化センターへ送ってくるポンプ場があり,大雨が降ると処理能力を超えた分はそのまま海へ放流されてしまうという。

 これらのポンプ場を鴨居ポンプ場のように分流式にするには,相当の費用がかかるものと推測されるが,子供達に美しい海を残すためには一刻も早く分流式に改善して欲しいものである。
 
 


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