ホトトギス
(杜鵑・不如帰・時鳥・子規)



カッコウ目 カッコウ科 夏鳥
全長約27.5cm

※音量をアップすると鳴き声が聞こえます!
 深夜「トッキョキョカキョク トッキョキョカキョク」けたたましい鳥の鳴き声に夢を破られ時計を見ると,23時43分を指していた。ホトトギスが渡って来たようだ。

 佐々木信綱作詞による小学唱歌「夏は来ぬ」に♪忍音(しのびね)もらす♪のフレーズがある。これは初夏,南の国から渡ってきたホトトギスの初音のことで,なかなか情緒のある言葉だが,私が聞いたこの夜の忍音は,情緒とはほど遠い鳴き声だった。

 ホトトギスはツバメやオオルリと同じ夏鳥で「目に青葉山ホトトギス初鰹」と正岡子規「目には青葉山ほととぎす初鰹」と江戸時代前期の俳人山口素堂の句にあるように,毎年新緑の頃,観音崎へも数羽飛来。早朝や日没後の薄暗い時間帯には住宅地へもやってきて,下手なウグイスのような鳴き声を披露してくれるが,なかなか姿を拝むことができない。

 夜遊びが好きな鳥のようで,2年前,久しぶりに旧友と痛飲,真夜中の午前1時頃,浦賀駅から30分ほどの道のりをフラフラ歩いて帰宅途中,「トッキョキョカキョク トッキョキョカキョク」の鳴き声を聞いたことがある。

 その上,ホトトギスは無責任な鳥で,卵はウグイスの巣に産み,子育てはウグイスに任せ繁殖する托卵性がある。観音崎にはウグイスが多いので,育て親を捜すのに苦労しないのか,卵を産むと夜昼の見境なく遊び回っている。最近は人間にもこのような手合いが増えているようで,そのような親たちに”ホトトギス族”の名称を贈呈したいと思うがいかがなものだろう?
2005.5.21
  
忍音記録
2020.5.27
2019.5.22
2018.5.21
2017.5.29
2016.6.03
2015.6.26
2014.6.11
2013.5.21
2012.6.04
2011.5.13
2010.5.27
2009.5.29
2008.5.24
2007.5.26
2006.5.12
2005.5.21
訂 正 !
 
 2008.6.8掲示板に“ぶせふ”さんから下記のようなコメントを頂いた。

 ホトトギスの声を気持ちよく聞かせていただきました。実は、今日木曽川周辺で実際に聞いてきたところで、改めて、自然のすばらしさを味わったところです。

 さて、目には青葉山ホトトギス初鰹の句は、正岡子規の句ではなくて、山口素堂の句です。もう、ご承知になられているかもしれませんが、つい指摘させていただきたくなりました。ごめんなさい。


 私が俳句の作者を正岡子規としたのは,ある新聞のコラムでそのように書かれていたのを見て,そうだったのか!と思いこんだのが原因。調べ直してみると,紛れもなくご指摘の通り。このページをご覧になって,そのように思いこんでいる方が居るとすれば,本当に申し訳ない気持ちです。「ごめんなさい」は,私が言うべき言葉ですね!“ぶせふ”さん,ご指摘ありがとうございました。

 今回,句の作者を確認する過程で,幾つか興味深い事実を知った。

 ☆正岡子規は結核で喀血後,「鳴いて血を吐くホトトギス」になぞらえて「子規」と号した。
   「子規」とはホトトギスの漢語的表現の一つ。
 
 ☆「鳴いて血を吐くホトトギス」を子規の俳句という説もあるが疑問?
   俳句ならば上の句がある筈なのに存在しない?諸説入り乱れて混沌としている。
 
 ☆俳誌「ホトトギス」は正岡子規,高濱虚子等によって創刊された。

 このように,正岡子規とホトトギスは非常に密接な関係にある。新聞のコラム担当者は,これらの関係を知りすぎていて,「目には青葉山ほととぎす初鰹」の作者を子規と勘違いされたのだろう。

 忍音を聞いて以来,ここ2週間。ほぼ毎日,昼夜を問わずホトトギスの鳴き声を聞く。真夜中に聞く甲高い鳴き声は「鳴いて血を吐くホトトギス」を連想させ,あまり気持ちの良いものではない。そのくせ,たまに鳴き声を聞かないと,どうしたのだろうか?と心配になる。本当に奇妙で不思議な魅力のある鳥だ。
卯の花の 匂う垣根に
 
 小学唱歌「夏は来ぬ」の出だしに♪卯の花の,匂う垣根に♪のフレーズがある。卯の花はウツギの別名で空木と書き,茎が中空なことに由来する。白い花の咲く時期が5月中旬から6中旬。ホトトギスが南方から渡来して,忍び音をもらす時期とほぼ重なるため,作詞の佐々木信綱はそう表現したようだ。それにしても,いささか高級な文学的表現?で,私は子どもの頃,言葉の意味など全く理解せずに,夏が来たのがただ嬉しくて,口ずさんでいたように思う。
   

2011.5.24
 

2011.5.23
初対面
    
 観音崎公園の「うみの子とりで」外縁部を歩いていると,突然足元から一羽の鳥が飛び立った。一瞬キジバトかと思ったが,30mほど先の木の枝に止まった鳥を見ると,キジバトとは雰囲気が異なる。

 取りあえず,10倍ズームで数枚の写真を撮り,更に鮮明な画像を撮ろうと15mほどに近づいた途端,私の気配を察したかその鳥は何処かへ飛び去ってしまった。

 パソコンに取り込んだ画像を拡大してみると,顔はヒヨドリに若干似ているが体色が黒い。ヒヨドリは南へ行くほど体色が黒くなると図鑑にあったので,地球温暖化の影響で南方型が北上してきたかと思ったが少々心もとない。

 そこで,野鳥に詳しい観音崎自然博物館の学芸員へメールで写真を送り鑑定をお願いしたところ,「胸の模様がはっきりしないので,どちらかの判別はつかないが,ホトトギスかツツドリと思われます。」とのご返事をいただいた。

 改めて,私の撮った画像と野鳥図鑑やネットのホームページにあるホトトギス・ツツドリの写真と見比べてみたところ,どうやらホトトギスの雌で赤色型と判明?した。

 ホトトギスはツバメやオオルリと同じ夏鳥で,南の国へ渡去する途中,観音崎に立ち寄ったと思われるが,花のホトトギスの由来になった胸の部分の写真を撮ることができなかったのは返す返すも残念である。
2004.10.29
 
 
鳴きながら飛ぶ
   
 ホトトギスが鳴きながら空を飛ぶのに気づいたのは四年前。それから毎年数回,計10数回目撃しているが,写真は一度も撮ることができなかった。突然現れて,空を一直線に横切り,あっと言う間に消えてしまうので,カメラを構える間もなかった。

 2009.6.12「うみの子とりで」の高い木の上で鳴くメジロにピントを合わせていると,突然,ホトトギスが鳴きながら現れた。慌ててカメラを向け,闇雲にシャッターを押して,やっと一枚の写真を撮ることができた。

 帰宅後,パソコンに取り込んだ画像を見ると,鳥らしき姿は写っているものの,これが「鳴きながら飛ぶホトトギス」の写真ですと,公開するほどの代物ではない。とはいうものの,このままお蔵入りさせるのも残念なので,掲載させていただくことにした。
  
  
浮世絵のホトトギス
 
 因みに,「鳴きながら飛ぶホトトギス」をキーワードにウエブ検索したところ,37,000件ものページが存在。拾い読みして見るとなかなか興味深い話が多い。万葉集の歌人から,江戸時代の浮世絵師,そして現代に至る数多くの文人画人が,ホトトギスにまつわる作品を残していることを知った。

 その中でも一番興味深かったのは「東海道五十三次」で知られる江戸時代の浮世絵師・歌川広重(安藤広重)の名所江戸百景「駒形堂吾妻橋」だった。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に掲載されたその浮世絵は,実に大胆な構図で,小雨降る空をホトトギスが鳴きながら?飛んでいく姿が描かれている。

 私がカメラですらはっきりと捉えることのできない「ホトトギスが鳴きながら飛ぶ姿」を,デホルメしながらも細部まで描いている。広重の浮世絵を眺めた後,自分の写真を見て,改めてその格差に愕然とした。それにしても,広重はどうしてこの瞬間を,克明に写し取ることができたのだろうか?
 
 「駒形堂吾妻橋」は現代の彫り師・摺師によって,復刻・販売されている。ところが,版元によって,同じ作品でありながら,絵の出来映え雰囲気が大きく異なることに驚いた。職人の腕にもよるのだろうが,この違いは何なのだろうか?広重はどの色合いを頭に描いていたのだろうか?
   
  
 
若   鳥
   
 観音崎公園「ふれあいの森」の中を歩いていると,突然,高い木の枝から一羽の鳥がフワリと飛び立つのが見えた。ヒヨドリより若干大きな鳥で,観音崎では普段見かけない鳥だ。ゆっくりと数回羽ばたいた後,滑空して20mほど離れた木の枝に止まった。

 木の葉や枝が邪魔をして,なかなか姿をはっきりと捉えることができなかったが,静かに近づきながら10枚ほどの写真を撮った。更に鮮明な写真を撮ろうと欲張り,10mほどまで近づいたところで,私の気配を察した鳥は,遠くへ飛び去ってしまった。

 帰宅後,鮮明とはいえないまでも特徴がわかる写真2枚を,鳥に詳しいボランティアの先輩にメールで同定をお願いしたところ,ホトトギスの若鳥らしいと判明した。
2012.8.24

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