豚と軍艦

 毎週金曜日,新聞の折り込みとして無料配布される横須賀の地域情報紙「タウンニュース・横須賀版」は,地域に密着した情報が多く,ここ数年来,毎週楽しみに愛読している。その情報誌の中に「<バー・クラブ・喫茶店物語>ジャズの街・ヨコスカ」と題するコラムがある。「パチンコ誕生 シネマ世紀の大衆娯楽」の著書もある銅版画家・杉山一夫氏のコラムで,興味深いタイトルの時等,時折拝読している。

 2013年9月6発行のコラム連載74のタイトル「豚と軍艦」ロケ地探訪@には,観音灯台や走水港の地名もある地図が掲載されていた。地図に惹かれて読み進むと「観音灯台のふもとで養豚場を始める。」とあった。戦後,観音崎に養豚場があったと聞いたことはあるが,具体的には何も知らなかったので,急に「豚と軍艦」の映画を見たくなった。
 (注)コラムでは観音灯台とあるが,観音灯台が正。
2014.10.27
 

2013.9.6 タウンニュース横須賀版コラム
 

2013.9.20 タウンニュース横須賀版コラム
 映画「豚と軍艦」は戦後日本の荒廃した現実を描いた有名な作品だが,恥ずかしながら私はこれまで,タイトルと今村昌平監督の名前を知っているだけで,その詳しい内容やロケ地が横須賀であることすら知らなかった。

 そこで旧作のCD・DVDをレンタルしているTHUTAYAへ行って探してみたが,残念ながら在庫無し。ネットオークションで購入することも考えたが,横須賀市立図書館でも旧作のCD・DVDを貸し出していることを思い出し行ってみたところ,流石に横須賀を舞台とした作品と言うこともあって貸出可能なDVDがあった。

 映画の粗筋等については杉山一夫氏のコラムをご覧頂くとして,観音崎がどのような形で登場したのか,映画から抜粋した写真でご紹介したい。ロケ場所(オープンセット)は2013年3月末まで海上自衛隊・観音埼警備所として使用されていた所。

 そこは江戸時代に「鳶巣台場」,明治時代には第四砲台があった場所であるが,現在は防衛省の管理地で立入禁止になっている。その周囲には高い柵が設置され,その上に有刺鉄線が張り巡らされているため簡単には立ち入ることはできない。そのため映画に登場したシーンと全く同じ場所からの撮影は不可能なので,そこに近いと思われる場所から撮影した写真を映画のシーンと共に掲載させて頂いた。

 ところで,養豚場は観音崎に実在したのだろうか?答えは「Yes!」。養豚場は,ロケ場所とは異なるが県立観音崎公園内にあったことは事実。しかしながら,現在その場所には,一般人が土地の所有者の国へ借地料を払って住まわれているので,場所を特定したり,写真を本ページに掲載することはプライバシーの侵害になりかねないので,見送らせて頂くことのした。
 
観音崎のロケ場所
    
 
 
 
 
  

ロケ場所(オープンセット)のあった旧鳶の巣台場
(2018.6.13観音埼灯台から撮影)

余  談
 
 私は1940年生まれ。終戦の1945年はまだ5才。従って戦闘体験はしていないが,疎開前,東京品川の大森に住んでいたので,B29の爆音や空襲警報のサイレンの音,疎開先の茨城で聞いた玉音放送はいまだに耳の奥に残っている。

 戦後,茨城から静岡へ転居。1950年に東京品川へ戻ったが,大森の生家は空襲で焼失したため,運転免許試験場のある鮫洲にあった二階建ての建物の六畳一間に親子5人で間借りした。建物の一階は町工場,二階には六畳の部屋が4室,4家族が生活していた。

 その一室に米兵を相手に売春をなりわいとするパンパンと呼ばれる女性が住んでいた。米兵は来ると必ず私の妹二人にチョコレートをくれたが,私は貰った記憶がない。いつも妹たちからおこぼれを頂戴していた。「豚と軍艦」は,丁度その頃の横須賀を舞台にした映画で,当時の荒廃した日本の姿を,改めて思い起こされた。

 映画の舞台は全て横須賀。監督・今村昌平,助監督・浦山桐郎,音楽・黛敏郎といったそうそうたる名前が並ぶ。その上,出演者の顔ぶれが凄い。長門裕之・南田洋子夫妻の他に,後に名優とうたわれる俳優達の名前がキラ星のごとく並ぶ。一見に値する,そして後世に残したい映画と言える。
 
 
続・「豚と軍艦」ロケ地探訪
  
 2014年11月14日(金)新聞の折り込みとして配布された「タウンニュース・横須賀版」のコラム連載126の「豚と軍艦」ロケ地探訪53を見て驚いた。私が撮影した写真が掲載されていたのだ。私には何も連絡なかったのに,本サイトからコピーして転載したのだろうか?「無断で転載するとは失礼な!」「俺もコラムを無断で転載したのだから文句も言えないか?」

 ところが,よく見ると写真は私のものとほぼ同じ場所から撮影されているが,杉山一夫氏らしき人物が写っている。撮影日は2013年1月で私のものより古い。私は映画のシーンから推測してロケ場所(オープンセット)を特定したが,間違っていなかったようだ。もう一つ嬉しかったのは,観音灯台の「」の字を,ロケ地探訪@では観音灯台と間違っていたのが訂正されていたことだった。
2014.11.14
 

2014.11.14 タウンニュース横須賀版コラム
 前回に続いて,観音崎の「水中聴音所」の話が登場!
 
2014.11.21 タウンニュース横須賀版コラム

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