観音崎の桜

 かつて,観音崎公園及びその周辺地域は,「桜の名所」と言っても過言ではないほど,3月末から4月上旬にかけて桜の花が見事に咲き誇り,花見の場所には不自由しなかった。ところがその桜の多くがソメイヨシノだったこともあって,10数年ほど前からてんぐ巣病にかかり枯れてしまうものが続出,今ではまともなソメイヨシノを見られるのは走水水源地だけになってしまった。

 それに代わって登場したのがカワヅザクラ。カワヅザクラはオオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種の桜で,原木が1995年に静岡県の河津町で発見されてことから「カワヅザクラ」と命名された。花期が1月下旬から3月上旬で,ソメイヨシノより約1ヶ月花見が楽しめるようになった。

 発見された原木から接ぎ木で増殖されたカワヅザクラは,花期が早く長いことから徐々に人気が高まり,全国に広まった。三浦半島では三浦海岸駅から小松ヶ池公園までの京浜急行の線路沿いに,約1kmにわたって約1000本植えられているのが有名。

 観音崎では地元「鴨居地区連合町内会」の事業活動の一環として,カワヅザクラ(河津桜),ジンダイアケボノ(神代曙),ヨウコウザクラ(陽光桜)各10本,合計30本が花の広場に植樹されたのを手始めに,その後徐々に数を増やし,今では約  本の早咲きの桜たちが代わる代わる公園を訪れる人を癒やし楽しませてくれるようになった。

 現在,公園内には自生のオオシマザクラ・ヤマザクラの他に,植栽されたオオシマザクラやてんぐ巣病に感染していないソメイヨシノが点在するが,衣笠公園や塚山公園のようなサクラの名所と比較すると,数はそれ程多くない。しかしながら,喧噪を避け,ピクニックがてら花見を楽しみたい向きに観音崎は最適で,周辺の走水神社も含め,見所を幾つかご紹介したい。尚,「花見は賑やかな方が!」とお考えの向きには走水水源地公園がお勧めです。
花の広場
横須賀美術館
観音崎あちこち
走水水源地公園
桜の種類
花の広場
  
 近年,観音崎公園内でまとまった桜を見られる場所はほとんど失われてしまったが,唯一例外は花の広場。2月上旬頃にカワヅザクラ,2月中旬頃ジンダイアケボノ,3月中旬頃オオシマザクラと数は少ないがソメイヨシノ,3月下旬頃からヤマザクラが次々と見頃を迎える。見頃は天候等の原因で年により1~2週間程度は前後するが,1月下旬頃から4月中旬頃までの約3ヶ月間,桜を楽しむことができる。
  

カワヅザクラ   2023.1.17
さくらまつり・かかしコンテスト
 

カワヅザクラ   2023.2.17
 

ジンダイアケボノ   2023.2.27
 

オオシマザクラ   2020.3.19
 

ソメイヨシノ   2023.3.27
 

ヤマザクラ   2022.3.28
 

ヨウコウザクラ   2018.3.24
横須賀美術館
  
 横須賀美術館が建設される前,そこには「走水園地」という桜の名所があった。桜を愛し,自然を愛する多くの人々が反対の声を上げたが,「ごまめの歯軋り」で,結果的には全ての桜の木は切り倒されて4しまった。2007年(H19)4月美術館は完成オープン。

 完成から16年経過した2023年(R5)4月4日桜のシーズン。美術館の周辺を歩いて見ると,旧走水園地並みとは言えないまでも,桜の名所がそれなりに復活しつつあるように感じられた。「海の広場」と名づけられた建物前面に広がる芝生広場の右側,「山の広場」と名づけられた屋上広場や周辺の道路沿いに植えられた?数本のソメイヨシノの苗木も大木とは言えないまでも成木となり,10~15年後には大木となり,
  
    
   
    
ひこばえ
  
観音崎あちこち
   
 走水園地の閉鎖により,観音崎にはサクラの名所としてご紹介するほどの場所が少なくなってしまったが,広い園内には分散しているものの真っ白なオオシマザクラやピンク色のヤマザクラが相当数自生しているので,散策しながら花見をするのも結構楽しい。
   

2019.3.24
 
 
 
 
桜の種類
  
オオシマザクラ
カワヅザクラ
ジンダイアケボノ
ソメイヨシノ
ハルメキザクラ
ヤマザクラ
ヨウコウザクラ

オオシマザクラ


オオシマザクラ
(大島桜)

名前由来  :  日本の固有種で,日本に自生する10または11種あるサクラ属の基本野生種の一つ。成長が早く再生力が強く,古来雑木林に植えられて燃料として多用されたことからタキギザクラ(薪桜),葉が桜餅の葉に使われるためモチザクラ(餅桜)の別名がある。園内各所に自生&植栽されている。

科名 バラ科
種類 落葉高木
樹高 10~15m

2018.3.31
    

2020.3.19
 

2011.4.4
 

このような変種もある
2006.3.30
 





カワヅザクラ
(河津桜)

名前由来  オオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種,原木が1955年静岡県河津町で発見された。早咲きの桜で見頃は1月末~2月末頃。花の広場に植栽されている。

科名 バラ科
種類 落葉高木 
樹高 5~7m

2023.2.25
    

2023.2.11
 

2021.1.22
 





ジンダイアケボノ
(神代曙)

名前由来  :  アメリカで雑交配して生まれたAkebonoの変種。都立神代植物公園内に原木がある。てんぐ巣病に弱いソメイヨシノの代替品種として期待されている。花期はカワヅザクラより遅くソメイヨシノより若干早く咲く。花の広場からふれあいの森方面へ通じる道の両側に植栽されている

科名 バラ科
種類 落葉高木
樹高 13m前後


2021.2.27
    

2022.3.18
 





ソメイヨシノ
(染井吉野)

名前由来  江戸末期~明治初期にかけて,染井村(現在の豊島区駒込・巣鴨)の植木職人が,江戸彼岸桜と大島桜を交配して作り,桜で有名な吉野山と染井村の名前を取り,染井吉野と名付けた。

 かっては園内各所に植栽されていたが,てんぐ巣病により枯死・激減。現在では走水水源地公園がお薦め・

科名 バラ科
種類 落葉高木 
樹高 10~15m

花の見頃 : 3~4月
    
 
 





ハルメキザクラ
(春めき桜)

名前由来  : 南足柄市内の農家などで,彼岸の頃に咲いていた桜の枝から育成し,2000年3月に品種登録された。
カンヒザクラとシナミザクラの交雑種とされており。「足柄桜」と呼ばれたこともある。花期は2月下旬~3月中旬。パークセンターの前庭に植栽されている。

科名 バラ科
種類 落葉高木
樹高 3~8m
    

2021.303
 
 





ヤマザクラ
(山桜)

名前由来  : 10種ほどある桜の野生種の一つ,主に山地に自生。平安時代以降,和歌に詠まれている「花」や「桜」は,多くはこのヤマザクラをさしている。

科名 バラ科
種類 落葉高木
樹高 10~25m

花の見頃 : 3 ~4月
    
 
 





ヨウコウザクラ
(陽光桜)

名前由来  : 日本原産の交雑種のサクラ。愛媛県在住の高岡正明が,第2次世界大戦中,学徒動員で戦死した生徒達の冥福を祈って,各地に桜を送ることを思い立ち,アマギヨシノとカンヒザクラを交雑させて,環境適応能力が強い桜を作出した。

科名 バラ科
種類 落葉高木
樹高 5m~8m

花の見頃 : 3 ~4月
    
 
 

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