オオイタビ
(大崖石榴)



クワ科  つる性常緑低木
花嚢 : 10〜2月

 観音崎周辺の住宅地を散策すると,東京や横浜辺りでは見かけない生け垣が目につく。どこか南国ムード漂う生け垣で,草が枯れ,広葉樹が葉を落とす冬が近づくと,その美しさがひときわ目立つようになる。

 関東南部以西の暖地,それも海にほど近い場所に自生するオオイタビと呼ばれるつる性の低木で,岩や崖地の上を這う性質を利用して,石垣やブロック塀の上を這わせて生け垣風にしている。観音崎周辺に散在するオオイタビの生け垣の中でも,腰越の高橋邸と吉澤邸の生け垣は秀逸で一見に値する。
2006.10.19
 高橋邸や吉澤邸の塀は一見したところ普通の生け垣のように見えるが,塀の下部を見ると石塀であることが判る。建設当時,追浜の鷹取山から切り出された鷹取石?で塀を巡らせ,その表面に観音崎周辺に自生するオオイタビを這わせたものだ。

吉澤家の塀の内側
 オオイタビの生け垣は土地の旧家にとどまらず,新興住宅街でも目にすることが出来る。我が家からほど近い臨海団地には,ブロック塀や擁壁,ガレージ等にオオイタビを這わせたお宅が軒を連ねる一角があり,無機質なブロックむき出しのものに比べて,どこかしっとりとした落ち着いた雰囲気が感じられる。
 
亀先半島・群生地
  
 オオイタビは観音崎公園内にも自生しているが数は少ない。鴨居港と腰越の浜の間に突き出た小さな岬「亀崎半島」に大きな群生地があり,鴨居港に面した廃屋の裏山の崖地を中心に,ほぼ自然のままに繁茂している。 

2013.6.2
 亀崎半島にお住まいの元横須賀市自然・人文博物館長 田辺悟氏宅の塀にもオオイタビが這わせてあり,道の両側に植えられたハマユウや南国の植物,白壁の邸宅と共に,まだ行ったことはないが,小規模ながら南フランス風の雰囲気が辺りに漂っている。
亀崎権現社
 
 亀崎半島の入口,道路を挟んで反対側の山の中腹に亀崎権現社がある。そこへ通じる階段の左手付近には庭木風に刈り込んだオオイタビが植えられている。オオイタビは繁殖力が旺盛で,油断すると伸びすぎてぼうぼうになってしまうが,ご近所のお年寄りの面倒見がよいとみえ,いつも適度に刈り込んであるのが好もしい。

 我が家でも,屋根のない駐車場のブロック部分にオオイタビを這わせてあり,美観を保つ為,年に3〜4回の刈りこみをする。長く伸びすぎたツルを植木バサミで切ると,切断面から乳白色の液体が滲み出てくる。かぶれないかと心配になるが,これまでかぶれたことがないところを見ると,毒性はないようだ。
花  嚢
 
 10月末頃から3月頃にかけて,自生地のオオイタビをよく見ると,イチジクのような実が目につく。花嚢(かのう)と呼ばれる花序で,イチジクやイヌビワと同じように,つぼ形となったものの中に,多くの小さな花が入っている。しかしながら,オオイタビの花嚢は食べられないのが少々残念だ。

2006.3.8
イタビカズラ
  
 オオイタビの仲間にイタビカズラがある。生えている場所等,類似点が多いが,オオイタビに比べ葉が若干長く,先が細長く尖っているのが特徴。観音崎公園内では,うみの子とりでから花の広場入口付近に至る園路沿い,日当たりの良い崖地で見られる。

花嚢  2012.6.8

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