ムラサキツバメ
(紫 燕)



チョウ目  シジミチョウ科
前ばね長さ:18〜22mm



 走水からふれあいの森に通じる山道を歩いていると,鮮やかな紫色をしたチョウを見つけ,その付近に生息すると聞いたムラサキシジミ?かと,数枚の写真を撮り帰宅した。

 パソコンに取りこんだ画像を,図鑑のムラサキシジミと比較してみると,後ろバネの模様と尾状突起の有無の二点が相異していて,むしろ図鑑でその隣りに掲載されているムラサキツバメの方が,何処か似ているように思われた。

 そこで,ムラサキツバメをキーワードに検索,幾つかのホームページを拾い読みしてみると,私の写真はムラサキツバメのメスで,図鑑のはオスであることがわかり,さらに興味深いことに,ムラサキツバメはもともと紀伊半島以西の暖地に分布する,亜熱帯性のチョウであったのが,1998年頃から関東地方でも続々発見されるようになった。とある。

 原因としては,地球温暖化と人為的なものの二つが考えられるようであるが,どちらとも判定できないままに,その生息分布圏を拡大,北上しているようである。ムラサキツバメはマテバシイを食樹としているので,冬も暖かく,マテバシイの多い観音崎では,今後ますます繁殖することが考えられる。
2003.6.29
集団越冬
 
 「ムラサキツバメが集団で越冬している。」との耳寄りな情報を観音崎自然博物館の研究員からいただいた。早速,教えていただいた越冬地へ出かけてみたが,そう簡単には見つからない。

 四方を小高い丘に囲まれ,マテバシイ・シロダモ・タブ・アオキ等の照葉樹の茂る,日当たりの良い越冬地と思われる付近を行きつ戻りつするうちに,一見,,ガのように黒っぽい小さなチョウに気づいた。

 目を凝らし辺りを見回してみると,アオキやマテバシイの葉の上に同じようなチョウが,日光浴でもするように,羽を広げ休んでいる。中に一頭,二年前の6月に出会ったムラサキツバメのメスと同じ美しいチョウを見つけた。どうやら黒っぽいチョウはムラサキツバメのオスのようだ。
2005.12.9

ムラサキツバメ♂ 

ムラサキツバメ♀

オス? メス?
 マテバシイやアオキの葉に止まり,日光浴をしているムラサキツバメ達の写真を撮りながら,傍に生えているマテバシイに何げなく目をやると,葉の間にたまった枯れ葉のようなものが動く気配を感じた。二枚の葉が覆い被さり,日光を遮っているため中が良く見えないが,数頭のムラサキツバメがいるようだ。

 先ずは脅かさないように自然光で写真を撮り,モニターで確認したところ,暗くて中の様子がほとんど分からない。やむを得ずフラッシュ撮影したが,幸い驚く気配もなく1頭も飛び立たなかった。モニターで確認してみると,紛れもなくムラサキツバメのようだ。7頭ほどが身体を寄せ合い暖め合っているようにも見える。
  

自然光撮影

フラッシュ撮影
 二年前出会ったムラサキツバメはメスだったが,今回見かけた20頭ほどのムラサキツバメの内,羽を広げていたもの10頭ほどはオスで,メスと確認できたのは一頭だけだった。但し,羽を広げていないものについては,私にはオスかメスかの判別はできないので,この中に,相当数のメスがいると思われる。

 それにしても,北上を続ける南方系のチョウはオスよりもメスが何故か美しい。ナガサキアゲハツマグロヒョウモンそしてこのムラサキツバメ。いずれもメスの方が色鮮やかで目立つ。普通,昆虫や野鳥の世界では種族保護のため「メスはオスよりも地味」というのが,私のこれまでの常識だったが,どうやらこの常識は通じないようだ。

ムラサキツバメ♂

ムラサキツバメ♀
 年末から年始にかけて厳しい寒波が襲来。14日は夕方から深夜にかけ低気圧が通過,台風並みの豪雨と強風が吹き荒れた。翌15日は一転して青空が顔を出し,低気圧がもたらした暖かい空気で小春日和となった。

 好天に誘われ久し振りに観音崎をノンビリと散歩でもしようと家を出たが,途中でムラサキツバメのことを思い出した。寒波・豪雨・強風,どれも南方系の小さなチョウにとっては大敵の筈である。はたして元気で越冬しているだろうか?

 不安に駆られ,12月に20頭ほどのムラサキツバメを見かけた越冬地へ直行。不幸にも私の不安は的中して,ムラサキツバメは5頭に減っていた。残りは死んでしまったのだろうか?
2006.1.15
 あきらめきれず辺りを行きつ戻りつしていると,日溜まりとなっている場所で,黒っぽい小さなチョウが飛んでいた。ムラサキツバメだ!立ち止まり眺めていると,20頭近いムラサキツバメが,つかの間の春を謳歌するように飛び回っている。

 飛び回って疲れると,日当たりの良いマテバシイ・ヤツデ・アオキ等の葉に止まり,止まると直ぐに羽を広げ,暖かい陽射しを少しでも多く吸収しようとしている。ヤツデの花を吸密している姿も見られる。羽を広げ休んでいるいるチョウのほとんどが美しいメスで,黒いオスは2頭しか見当たらない。
 私の存在など意に介さず飛び回り,羽を広げて休むムラサキツバメを飽きず眺めていると,厳しい環境の越冬生活で,羽が傷つきボロボロになりかけている姿もある。一日も早い春の訪れが待たれる。
 地球温暖化とか暖冬と言われているが,ここ数日,朝晩の冷え込みは厳しいものがある。毎年,集団越冬している南国のチョウ「ムラサキツバメ」はどうしているだろうか?久し振りに越冬地を訪れてみると,ほぼいつもの場所のマテバシイの羽の上で折り重なるように眠っていた。

 越冬地は四方を山に囲まれ北風の影響をほとんど受けない。その上,日当たりも良く,ムラサキツバメにとって,越冬に最適な場所のようだ。それにしても,一枚の葉の上だけに集中しているのは何故だろうか?私がカメラを近づけても,微動だにしない。念のため,ざっと数えてみたところ,30頭位が折り重なっている。身を寄せ合い折り重なることで,互いに暖めあっているように見える。一頭も欠けることなく,暖かい春を迎えることを祈りたい。
2007.12.17
ウコンの葉で集団越冬
 
 偶然,そして久しぶりにムラサキツバメが集団越冬する姿に出会った。木漏れ日の差し込むウコンの葉の上で,羽を精一杯に広げて暖をとっていた。日射しを浴びて,紫色にきらきら輝くメスの羽はいかにも南国のチョウを感じさせる。日が陰ってくると少しずつ姿を消して何処かへ行ってしまった。
2014.12.9
  
 しばらくしてボランティア仲間の一人が,「ここにムラサキツバメが隠れているよ!」と声を上げた。普通,ムラサキツバメは食樹のマテバシイの葉の上で越冬することが多いが,この群れは何故かウコンの葉と葉の間に身体を寄せ合うように潜んでいた。

 ウコンは高温多湿を好む南方の植物。暖地とは言いながら,観音崎の冬の寒さはそれなりに厳しい。ムラサキツバメが越冬しようとしているウコンの葉は程なくして枯れてしまうに違いない。他人ごとではあるが,いささか彼らのこれからが気にかかる。
  
我が家の庭に飛来!
 
 正月に備え庭木の剪定をしていると,みかんの木の周りを小さな2頭のチョウが忙しなく飛び回っている。以前,その木にルリタテハが産卵した事があったが,ルリタテハでは無さそうだ。やがて1頭が疲れたのか葉の上に止まった。ムラサキツバメのようだ!私は慌てて室内へカメラを取りに行き,あたふたと戻るとムラサキツバメはその美しい羽を広げ,冬の陽射しを浴びてノンビリ日光浴をしていた。ムラサキツバメは本来暖かい南の国のチョウ。温暖化に伴い北上を続け,幼虫の植樹となるマテバシイの多い観音崎では20年くらい前から越冬するようになったが,我が家の庭で見るのは初めてのこと。私の住む団地内にはおそらくマテバシイは植わっていない。それなのに何故?
2020.12..1

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