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ミノムシ異常発生?

 
 サクラの開花も間近いある日の夕暮れ時,ポカポカ陽気に誘われて観音崎へ出かけ,ツボミのふくらみ具合をチェックしながら,ふと傍らの木の枝を見ると,ミノムシが数匹ぶら下がっていた。
 夢ではないかと我が目を疑いながら,最近歳のせいかカスム目を凝らしてよく見ると,陽が沈みセピア色に染まった空をバックに,数十匹?数百匹と思われるミノムシがぶら下がっている。 私はまるで昔の恋人にでも出会ったような気分で,ウキウキと数枚の写真を撮り帰宅した。
 ミノムシは枯れ葉などを紡錘形に綴り合わせたミノの中に入り,葉の落ちた樹木の枝からぶら下がって風に揺れる姿がユーモラスな虫で,冬の風物詩とも言える存在だった。そのミノムシを最近まったく見かけなくなった。昨年の暮,葉の落ちた我が家の庭木を眺めていて,何か物足りない気分に襲われ「なんでかなー?」と考えている内に,ミノムシがいないことに初めて気づいた。

 改めて,隣近所の庭木を探してみたが一匹も見当たらない。翌日,自然が豊富に残されている観音崎公園内をくまなく探してみたが,矢張り見つけることはできなかった。2月の中旬,南房総へ早春の花を求めて家内とドライブした時,花を見るのは上の空,もっぱらミノムシ探しをして家内に呆れられたが,それでも見つけることができなかった。それならば,より自然の豊かな北海道なら居るのではと,札幌在住のかわちさんにメールでお尋ねしたが,翌日「札幌でも見かけません」との回答をいただいた。

 それでも諦めきれず,インターネットで「ミノムシ」を検索してみると,なんとミノムシが絶滅の危機にあることを知らされた。絶滅の危機にあるはずのミノムシが何故?観音崎で大量に発生したのか,不思議に思いパソコンに取りこんだ画像を拡大して見ると,何処か少し変である。改めてよくよく眺めている内に,昨年6月下旬,ビールのホップに似た穂をつけたクマシデを思い出した。なんと私がミノムシと思ったのはクマシデの花穂だっただ。

クマシデ  2002.6.21
ネットで調べたところによると:

 ミノムシは樹木の葉や果実の表面を食べたりして外観を損なわせるため,昔から植木や果樹の害虫として良く知られていた。そのミノムシがいなくなった原因は,害虫であるミノムシを退治するため1990年頃から中国で大量に放飼された天敵のオオミノガヤドリバエが我が国に侵入したためのようだ。

 ミノムシにはいろいろな種類があるが,これまで普通に見られたのはオオミノガの幼虫で,オオミノガヤドリバエが木の葉に産んだ卵を,ミノムシが葉と一緒に食べることで寄生が成立する。寄生したヤドリバエの幼虫はミノムシをエサに成長し,やがてハエとなって飛び立つが,ミノムシは食べ尽くされてガになれずに死滅する。


 このような悲しいメカニズムでミノムシが激減したようであるが,害虫とは言え可哀相な気がする。人間の都合だけで益虫と害虫に分け,害虫は殺虫剤や農薬・天敵等で駆除することが,人間にとって本当に良いことなのか疑問が残る。

 そういえば最近,家の周辺でカ・ハエ・ゴキブリ等の害虫をほとんど見かけなくなった。害虫が減ることは人間にとって快適なことではあるが,自然界の食物連鎖を断ち切ることにも繋がり喜んでばかりもいられない。

(追記)
 このページをご覧になった札幌在住のかわちさんから掲示板に「オオミノガは北海道にはもともと生息していません」との書込があり,調べたところ確かに本州も関東・中部以西に分布していることが判明。北海道ならまだまだ自然が残っているので,ミノムシが居るのではと考えたのは私の早とちりだった。 
ミノムシ発見!
 早朝,イラク戦争から横須賀へ帰港する米空母キティーホークの写真を撮ろうと観音崎へ出かけた。キティホークが観音崎沖に到達するまでに40分ほど余裕があったため,灯台下の敷石道をブラブラ歩いていると,目の前で何かが風に揺れていた。

 よく見るとそれは私の記憶にあるミノムシより若干小振りであったが,まぎれもなくミノムシであった。昨年の暮以来探し求めて,どうしても見つけることの出来なかったミノムシを前に,私は初恋の人にでも巡り会ったような気持ちでシャッターを押した。

 観音崎では動植物の採集は禁止されているが,ミノムシは貴重な存在であっても害虫だから問題なかろうと,私なりに都合の良い理屈をつけポケットに収め帰宅した。 
2003.5.6

細い糸が見えますか?
 持ち帰ったミノムシを眺めながら,子どもの頃,ミノの中のミノムシはどんな姿をしているのだろう?とミノの中から虫を取り出したことや,木の葉の代わりに色紙をきざんで与え,カラフルなミノを作らせ遊んだことを思い出した。ミノムシには気の毒だったが,ミノの口先をハサミで切り虫を取りだしてみると,50数年前と同じ懐かしいミノムシの姿が現れた。
 記念写真?を撮り終えた後,害虫とは言え今では貴重な存在のミノムシを殺してしまっては可哀相なので,観音崎でぶら下がっていた木がアジサイだったのを思い出し,我が家のアジサイの葉の上に置いて観察してみた。葉の上のミノムシは,予想以上に活発にそしてアクロバチックな動きで私を楽しませてくれた。当初私はこのミノムシを飼育観察するつもりであったが,彼女の?けなげなその姿に感動し,これ以上追跡することは止めることにした。
11 匹まとめて 発 見 !
 
 mtskさんから,浦賀の切り通し付近でミノムシを発見したと,メールに写真を添付して連絡があった。写真は若干不鮮明であったが,確かにミノムシのようである。 
2003.9.5
 翌6日今度は同じ場所で,同時に6匹を発見したとの連絡があり,mtskさんにお願いして,場所を教えて貰い,8日早朝そこへ出かけてみた。ところが運悪く,その場所の笹や雑草が土地所有者の手で刈り取られた直後で,なかなかミノムシを確認出来ない。それでも根気よく探して何とか4匹を発見,写真に撮り帰宅した。

 パソコンに画像を取りこんでいると再びmtskさんから,7日の昼過ぎ11匹を確認したとのメールが飛び込んできた。半日違いで周辺の状況が大きく変化してしまったようである。その場所は観音崎の緑地続きで,歩いても15分くらいの自然が豊かな場所であるが,浦賀駅からも10分程度のところにあり,いずれは宅地化される運命にあると思われる。

 いずれにしても観音崎及びその周辺で,これだけのミノムシを発見出来たことは喜ばしいことで,これ以上自然破壊が進まないことを願うこと大である。

2003.9.8
大形ミノムシ発見!
 
観音崎・青少年の村の生け垣で大きなミノムシ発見!これまで見たミノムシの中では最大級で,オオミノガの幼虫かもしれない。
2005.7.1
長寿梅にミノムシ!
  
 我が家の鉢植えの「長寿梅」にミノムシがぶら下がっているのを家内が見つけた。長寿梅は中国原産のバラ科の植物でボケの一種。三年前,房総半島へ出かけミノムシ探しのドライブをした時,1,000円足らずで買い求めた安物の盆栽だが,ほとんど手入れしなくても樹形が面白く,毎年真っ赤な可愛い花を咲かせてくれる。

 鉢を青空に掲げてみるとなかなか様になる。ミノムシと開き始めた一輪の長寿梅。枯れたような枝からは早くも可愛らしい新芽がふくらみ始めている。何故こんなところにミノムシが?と考えたが分かる筈もなく,一足早いクリスマスプレゼントと解釈,久し振りに見る冬の風物詩を眺め一人悦に入っていた。

 長寿梅はその名の通り縁起の良い植物だが,ミノムシも縁起の良い虫のようだ。一週間前の11月25日読売新聞朝刊の「彩事記」というエッセイに,ミノムシで財布を作っている人の話が紹介されていた。「ミノで堅く身をくるんだミノムシは縁起がよく,幸せが逃げないと言われます。財布にすると金がたまるという言い伝えがあるんですよ。」

 これが本当なら早速ミノムシの財布作りに挑戦したいところだが,財布一つ作るのに70〜80個のミノが必要だと言う。観音崎や我が家周辺を探し回っても,恐らく4〜5個見つけるのが関の山の現状を考えると,財布作りは気の遠くなるような話である。
2005.12.2
ハイカラなミノムシ!
 
 ベランダから“ケラケラ”家内が笑う声が聞こえてきた。何事が起こったか?と駆けつけ,指さす先を見ると,ベランダのフェンスに妙なものがぶら下がっていた。ミノムシらしい?

 ミノの長さは約4cm,結構大きい。ミノの材料が傑作で,白いものはビニール紐の切れ端,薄い赤紫のものはブーゲンビリアの花びら,その他すべて,ベランダに散らばっていたゴミの廃物利用。なかなか美的センスの良い?ハイカラなミノムシで,家内と二人,顔を見合わせ大笑いしてしまった。
2007.7.27
 
オスは羽化しない!
 掲示板にfelizmundo さんから嬉しいコメントをいただいた。
 “ ミノムシの記事を面白く読ませていただきました。偶然、今年の2月に千葉市内の私の職場の垣根にたったひとつのミノムシをみつけて以来、私も懐かしくて、写真をとっては、自分のブログ(2008年3月)に載せて楽しんでいるところでした。
 
 調べていて、沢山のミノムシを見たという写真で思わず息をのみました。でも、違っていたんですね。残念!!!!! でも、ミノムシが減ってきた話など、とても勉強になりました。有難うございました。”


 早速,ブログを拝見したところ意外な記事が目に入った。
 “越冬中のミノムシは、外からでは判別できませんが雌雄両方いて、オスも越冬します。そして、成虫となってオスは蛾になり、メスはミノムシの形のまま夏に結婚。結婚後、オスはすぐに死に、メスもすぐにたまごを産んで、2〜3週間でたまごが幼虫になると、それを見届けるように地面に落ちて死ぬようです。”

 
「ミノムシのオスは蛾になるが,メスはミノムシのまま産卵後死ぬ!」私には初耳だった。本当だろうか?felizmundoさんには申し訳なかったが,疑心暗鬼,ネットで調べてみたところ,フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のにそれを裏づける詳しい記事が載っていた。

 記事を読みながら,昨年,ハイカラなミノムシとほぼ同時期,鉢植えの梅の木に住み着いたミノムシのことを思い出した。ブーゲンビリアの花びらや枯れ葉を身にまとい,その美的センスはハイカラさんに比べ若干見劣りするが,冬を越し,いまだに梅の枝にしがみついているミノムシ。

 改めて観察してみると,昨年と同じ場所にしがみついたまま。動いた様子もなく,生きている気配が感じられない。枝から取り外し,ハサミで蓑を切り開いてみたところ,茶色い抜け殻のようなものがこぼれ落ちた。抜け殻とすればこのミノムシはオスだったことになるが,写真左端の黒い固まりは,ミノムシのミイラのようにも見える。そうだとすれば,メスだったことになる。はたしてどちらが正解か? “みのもんたさん”にファイナルアンサーを尋ねてみたい気がする。
2008.3.28

蓑の外側

蓑の内側

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