クマゼミ
(熊蝉)



カメムシ目  セミ科
体長:40〜48mm
分布:関東地方以南

 さいたま市にお住まいのじゅげむさんから,掲示板にクマゼミについてのコメントをいただいた。
2007.8.15
[名前] :   じゅげむ
  始めまして、さいたま市に住むじゅげむです。観音崎には何回か行った事があります。
 さて最近毎年.夏.になると気になる事があります。セミの声です。私はさいたま市の東の外れに住んでおり、ミンミンゼミ・ヒグラシ・アブラゼミ・ニイニイゼミ・ツクツクホウシ等聞く事が出来ます。
 
 しかしここ数年クマゼミの声も聞こえる様になりました。蕨市の公園等センダンの木に幼虫か卵がついていたらしく、クマゼミで有名な城ヶ島.顔負けの大合唱になっています。観音崎でも聞こえるとの噂も聞いた事もあり、様子を伺いたく書き込ませていただきました。勝手な質問申し訳ありません。
[名前] :   kamosuzu
  じゅげむさん,初のご訪問ありがとうございます。クマゼミのことは私も以前から気にかけていますが,たまにそれらしき鳴き声は聞くものの,証拠写真を撮ることができません。

 クマゼミの鳴き声を聞きに,二度,城ヶ島へ行きましたが,確かに大合唱でした。観音崎は城ヶ島とそれほど離れていないのに,何故か,あまり鳴き声を聞きません。今年はまだ一度もクマゼミらしき鳴き声を聞いていません。さいたま市で大合唱しているのに,不思議ですね!
[名前] :   じゅげむ
  Kamosuzuさん早速のご返信ありがとうございました。
 思えば私が子供の頃たま(稀)にしか聞く事が出来なかったクマゼミの声を毎日の様に聞く事が出来るとは夢にも思いませんでした。

 チョウの仲間でもツマグロヒョウモンは沢山飛んでいますし、ナガサキアゲハも定着したとの記事を新聞で読みました。植物の移動など人為的なものが大きい原因だと思いますが、喜んでばかりはいられない様な気がしました。クマゼミも南から順番に、と言う訳では無いのですね(笑)
[名前] :   kamosuzu
 観音崎ではナガサキアゲハツマグロヒョウモンは珍しくありませんが,何故かクマゼミは少数派のようです。それにしても,じゅげむさんの仰る通り,南の動植物が居ながらにして見られることは嬉しい反面,地球温暖化の影響?を考えると,喜んでばかりもいられませんね!
 それから四日後の8月8日,パソコンに向かって,撮りためた写真の整理をしていると,セミの大きな鳴き声が聞こえてきた。あまり聞き慣れない声だ。「シャーシャーシャー」あるいは「シャオシャオシャオ」とも聞こえる。アブラゼミやミンミンゼミの鳴き声とは明らかに異なり,声も大きい。クマゼミだ!

 鳴き声は我が家近くにある公園辺りから聞こえてくる。周囲にサクラが10数本,ケヤキが6本ほど植えられた小さな公園だが,周辺が山林なので自然は豊かだ。何はともあれ,デジカメ片手に公園へ駆けつけると,ミンミンゼミ・アブラゼミ・ツクツクボウシが大合唱していた。

 その中から,「シャーシャーシャー」アブラゼミやミンミンゼミを圧倒するように大きな鳴き声が聞こえてくる。紛れもないクマゼミの声だが,声の主は一匹のようだ。声は公園の端にある樹齢30〜40年のサクラの茂みから聞こえてくる。鳴き声のする辺りを見上げると,アブラゼミやミンミンゼミは何匹も目につくが,クマゼミらしき姿は見当たらない。

 「シャーシャーシャー」クマゼミは依然と鳴き続けている。半ズボンからはみ出た足をヤブ蚊に刺されながら,必死にその姿を探し求めていると,逆光で薄暗い木の枝に,羽を震わせ鳴いている大きなセミを見つけた。肉眼では姿がはっきりとしないがクマゼミのようだ。兎にも角にもカメラを構えシャッターを押した途端,気配を察したのか,クマゼミは何処かへ飛び去ってしまった。
 帰宅後,パソコンに取り込んだ画像を見ると,セミらしきものが写ってはいるものの,逆光のため,この写真からセミの種別を特定することは難しい。鳴き声は紛れもなくクマゼミそのものであったが,これでは証拠にならない。パソコンで画像の明るさを調整したり,サイズを拡大したりして,ようやくそれらしき姿が浮かび上がってきた。
 8月13日,日本テレビの「ザ・ワイド」を何げなく見ていると,「大阪府大阪市・クマゼミ大量発生」のタイトルで,クマゼミに関するいろいろな話題が取り上げられていた。インタビューされた人々が,「朝,クマゼミの鳴き声がやかましくて,ゆっくり寝てられない」「クマゼミの騒音で,テレビの音が良く聞き取れない」等々,口々に訴えていた。

 クマゼミが集団で鳴いている時の騒音を計測したところ86.6デシベルあり,これは“電車が通過するガード下の騒音”や“カラオケボックス内の音量”などとほぼ同じとか。クマゼミ集団の鳴き声の凄まじさは相当なものらしい。

日本テレビ「ザ・ワイド」の画面から
 クマゼミ集団の鳴き声の凄まじさは,多少ご愛嬌の部分もあるが,引き続き放映された「えっ!?セミ大発生で“通信マヒ”九州から東海まで被害1200件」の話には,あまりにも意外な出来事に,ノーテンキな私もビックリ仰天してしまった。

 クマゼミは習性として,生木には産卵しないで,枯れ木に産卵する。ところが,クマゼミが光ファイバーケーブルを枯れ木と間違えて産卵。ハリのように尖った産卵管でケーブルを刺すと回線が切断される場合もあり,2005年,西日本に集中した被害は1200件確認されているとのこと。 

日本テレビ「ザ・ワイド」の画面から
 現在,大阪で大発生しているクマゼミは,1970年代の大阪では希少な存在だったものが,今では一番多いセミになったと言われている。都市化・乾燥化が進んだことが原因?らしい。

 幸い,観音崎及び周辺地域では,現在,それらしき鳴き声を時たま聞くことはあっても,集団で大合唱するような現象は見られない。大阪でクマゼミ大発生の原因が,都市化・乾燥化にあるとすれば,観音崎及び周辺地域は緑が多く自然が豊かなため,クマゼミにとっては住みにくい環境にあると考えられる。

 私はこれまで,「観音崎の昆虫・セミの仲間」のページにクマゼミがないことを残念に思っていたが,クマゼミ大発生や生息域北上中の原因を知り,その数が少ないことに喜びを感じた。「シャーシャーシャー」という騒々しい鳴き声は,今まで通り,時たま耳にする程度であって欲しい。 

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