フレリトゲアメフラシ


アメフラシ科  体長:15cm内外

 2008年11月7日,鴨居港の冬の使者,カモの一種のホシハジロが2羽飛来した。先遣隊なのだろうか?2羽ともオスだ。写真を撮り終えてから,冬にアメフラシが見られる辺りを何げなく眺めていると,妙な姿のアメフラシが目に入った。

 普通のアメフラシより少し小ぶり,全身にトゲのようなものが生えている。それが,水深10〜60cm位の浅瀬にザッと数えて数百匹はいるようだ。今年6月,鴨居港内の浅瀬で見つけた身体表面のブルーの斑点が美しいフレリトゲアメフラシだ!

 ウミウシの仲間のページの作者ろくびいさんによれば「フレリトゲアメフラシは水深10m前後の砂泥の海底に棲んでいる。」と言う。それが何故,こんな浅瀬に大量に発生したのだろうか?

クローズ・アップ写真
 帰宅後,この事をメールでろくびいさんへ知らせたところ,早速,現地へ行きたいとの電話が入った。翌11月8日は朝から曇り空,小雨が時折ぱらつき,底冷えのする生憎の天気。それにも負けずろくびいさんは逗子からお見えになった。

 雨合羽を着込み,胴長靴をはき,水中カメラで撮影・観察されること約1時間半。相模湾と観音崎を中心にウミウシの研究をされているろくびいさんにとっても,このようなアメフラシの大量発生は記憶がないとのこと。

 
ろくびいさんのコメント:
 一見しただけでも数百の個体がいることがわかり,聞きしにまさる数に驚きました。漁船を陸揚げするためのコンクリート製スロープに行列して這い登っています。漁港内の水深は6〜8m,底は砂地,壁面とスロープは全てコンクリートで囲われているので,フレリトゲアメフラシが集中的に大量発生している理由は分かりません。港外の砂浜や磯では全く見当たらなかったので,産卵環境か餌環境が漁港内で良好だったのかもしれません。

 個体は体長10数センチのものがほとんど,分布状況は場所により密度の差があるものの,波打ち際から2m四方に20〜30個体がなぜか岸に向かって横に整列するように並んでいました。

 スロープの長さは100m以上,水深が深い場所にいる個体数もふくめて考慮すると大変な数になります。個体の色は普通に見られる地色が黒いものと今回初めて見た茶色っぽいものがいました。茶色系の個体は少数で全体の数%と思われます。餌が体色に関係しているのでしょうか。

宮崎駿監督「風の谷のナウシカ」のオームを連想?
 所用で二日間ご無沙汰。11月11日,その後の様子が気になり鴨居港へ。波打ち際に数個の個体が打ち上げられていた。まだ生きているようなので海へ投げ戻し,その辺りを見回すと産卵しているらしき姿が目に入った。あちこちに卵のようなものが見られる。アメフラシの卵塊に比べ,平べったく青みがかって見える。彼らは集団で産卵しているようだ。帰宅後,この事をろくびいさんへメールで伝えた。
 11月13日,久し振りの晴天に恵まれ再び鴨居港へ。ところが驚いたことに先客があった。ろくびいさんだった。8日,曇天の日に撮影した写真に飽きたらず,一時間ほど前から観察中だった由。ろくびいさんの熱意には頭が下がる。この日は快晴で,水も比較的澄んでいたので撮影条件は最高。普通のカメラでもそこそこの写真が撮れた。
 翌11月14日,ろくびいさんから,水中カメラで撮った写真がメール添付で届いた。流石に水面上から撮った私の写真に比べ画像の鮮明度が違う。圧巻は集団産卵の写真,数匹が折り重なるように産卵している様子が見事に捉えられている。

体色が黒色の個体,紡錘形の身体,とげの分布状況など特徴が出ている

体色が茶色の個体

集団産卵

卵は一本のまま何かにくっつけて生んでいる
 ろくびいさんの写真に刺激され,白い洗面器持参で再び鴨居港へ出かけた。洗面器に半分ほど海水を汲み,中に体色が黒と茶色の2匹と幼体を1匹入れ,写真を撮ってみた。自然の状態ではないのでどうかと思ったが,思いの外フレリトゲアメフラシの特徴を写し撮れたと自己満足している。

体色が茶色の個体

体色が黒色の個体

黒色個体のクローズ・アップ
 ろくびいさんから「これは過去に撮影したもので,今回のものではありませんが。」の但し書きつきで,一枚の写真が送られてきた。2005年8月18日に三浦市三崎で採集,ガラス製シャーレに海水を張り撮影したもので,ブルーの斑点が実に色鮮やかに写っている。この斑点の色をコバルトブルー,ターコイズブルー(トルコ石),瑠璃色等と表現される理由がわかるような気がする。
戯れに,写真の背景を一色に塗りつぶしてみた。
美しさがより強調されるような気がする。
初 対 面
 
 大潮の干潮時,鴨居港内の磯をウロチョロしていると,水深20cmほどの浅瀬で,奇妙な生き物を見つけた。体長は15cm位,全身にトゲのようなものが生えている。なんとも気持ちの悪い生き物だ。

 最初はナマコの一種かと思ったが,その動きを見ているとウミウシの仲間のようだ。アメフラシより若干小ぶりだが,他のウミウシと比べだいぶ大きい。初めて目にする生き物で,トゲのようなものが恐くて手に取ることができない。
2008.6.4
 手に取るのが薄気味悪く,近くにあった細い棒の先で,浅瀬の方へ誘導してみた。意外に速いスピードで,素直に移動する。体の一部が水上へ露出した途端,大きな変化が起こった。トゲが体にまとわりつくように消えてしまった。どうやら,トゲと思われたものは柔らかい毛のようなものだった。
 帰宅後,図鑑やネットであれこれ調べてみたが,それらしきウミウシが見つからず埒があかない。「困ったときの神頼み!」ウミウシに詳しいろくびいさんにメールで教えを請うことにした。

 翌日,ろくびいさんから,下記のようなご返事を頂いた。
 
「ウミウシはフレリトゲアメフラシです。身体の表面に鮮やかなブルーの斑点が散らばっているのが特徴です。たたら浜の海中で採集されたのを撮影したり,三浦市三崎で採集したことがあります。浅いところで見つかったのは先日海が荒れたために浅い場所に巻き上げられたのでしょう。幸運でしたね。」

 ろくびいさんのご返事に
「身体表面に鮮やかなブルーの斑点が散らばっているのが特徴です。」とあるが,私はトゲにとらわれて,ブルーの斑点には全く気づかなかった。改めて10数枚撮った写真を見直したところ,それらしき斑点があるのが一枚見つかった。一見,黒く見えた点は,確かに青い色をしている。さすがろくびいさんはそこまでお見通しだったのだ。

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